需給動向 海外 |
小麦:干ばつ、冠水など気候変動による生産減を軽減する在庫水準 |
小麦生産量、2010/11年度は前年度を2.8%下回る見込み米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2010/11年度における世界全体の小麦生産量は、主要な生産国であるロシア、ウクライナおよびカザフスタンでは干ばつが、また、カナダでは過度の降雨により小麦の作付面積が大きく減少したことで、前年度を5.1%下回る6億4,574万トンが見込まれている。作付面積、単収はともに前年度を下回ることが見通されており、それぞれ1.7%減少の2億2,178万ヘクタール、3.6%減の2.91トン/ヘクタールである(図13)。
生産減による影響を軽減する在庫水準ロシア、カナダ、ウクライナおよびカザフスタンなどでの小麦生産量は大きく減少し、前年度比で2ケタ下回る(図14)。特に、ロシア、カナダの小麦輸出量は、両国で世界全体の小麦輸出量の2割を上回ることから、世界全体における穀物需給への影響が懸念されている。
その一方で、小麦の主要生産国であり輸出国であるEU-27カ国、米国および豪州では、前年度並みの生産量が見込まれていること、また、2010/11年度における世界全体の期首在庫は8年ぶりに積み上がっていることから、期末在庫は、前年度を9.9%下回るものの、在庫率は、小麦の適正在庫水準(FAO)とされる25〜26%を上回る27.1%を示すように(図15)、気候変動による生産量の減少が小麦需給に与える影響については、大きくないとする見方も指摘されており、特に、世界全体の小麦輸出量の2割前後を占める米国では、期末在庫が積み上がっており(図16)、輸出量の増加が見込まれている。
なお、小麦は、EU-27カ国、中国、インド、ロシア、米国、カナダおよび豪州の7カ国・地域で世界全体の7割以上が生産されている。 ロシア、ウクライナおよびカザフスタンでは記録的な干ばつ被害FSU-12カ国(旧ソビエト連邦12カ国)にまたがる春小麦ベルトで4月から発生した干ばつは、6月から一層厳しさを増している。 ロシアでは、冬期における霜や土壌凍結などから冬小麦が影響を受け、また、4月〜7月にかけて春小麦生産の大半を占める沿ヴォルガ連邦管区、ウラル連邦管区およびシベリア連邦管区で(図17)例年に見られない記録的な干ばつが発生し、これらの連邦管区を中心とした地域では、非常事態宣言が出されている。なお、ロシアでは、冬小麦の作付面積は、小麦全体の作付面積の半分を下回るが、単収が春小麦よりも高いことから、生産量全体の約3分の2は冬小麦とされる。 カザフスタンでは、春小麦の約75%を生産する北部と中央部地域を中心に干ばつは発生し、降雨量はこの10年間での最低水準が示されている。また、中西部地域での干ばつは、1991年の大干ばつに次ぐ規模とされる。なお、同国では、穀物生産地域の約8割で春小麦が生産されている。
カナダでは冠水被害2010/11年度におけるカナダの小麦生産量は、前年度を22.6%下回る大幅な減少が見込まれている。これは作付面積が、1970年以来となる低水準であり、前年度を18.9%下回る770万ヘクタールが見込まれるためである。 この理由としては、カナダの小麦生産量の半分を生産するサスカチュワン州、また、15%を生産するマニトバ州で、5月中旬以降記録的となる過度の降雨に見舞われたことで農地が冠水し、両州ともに春小麦の作付面積の約3割が未作付けに終わったことによる(図18)。 連邦政府および州政府は、このことで影響を受けた農家に対して、再度の作付けを勧めるということではなく、農業保険金が受け取れるプログラムを選択肢として提供している。また、サスカチュワン州、アルバータ州およびマニトバ州(平原三州)の農家に対して、農業復興災害プログラムから1エーカー当たり30カナダドル(約2,550円:1カナダドル=85円)の受給資格も与えている。
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