需給動向 海外

◆米 国◆

生乳生産が増加する中、生産者団体は輸出補助金の対象にバターを追加


◇絵でみる需給動向◇


生乳生産量は4カ月連続で増加、後継牛飼養頭数も前年を上回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2010年6月の生乳生産量は、前年同月比2.4%増の740万4千トンとなり、4カ月連続で前年を上回った。これは、搾乳牛飼養頭数が前年同月比1.2%減となったものの、1頭当たり乳量が同3.7%増と伸びたことなどが理由として考えられる。このような傾向を踏まえ、USDA経済調査局(USDA/ERS)が7月21日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」では、2010年生乳生産量について、前回推測値を0.5%上回る8672万7千トンに上方修正している。

 また、USDA/ERSは同レポートで、2011年の生乳生産量を前年比1.2%増の8777万トンと見込んでいる。しかし、7月23日に公表されたUSDA/NASSの「Cattle」において、2010年7月1日現在における乳用後継牛頭数が、前年比2.5%増の4050万頭となっていることから、1頭当たり乳量の伸びを加味すれば、2010年の生乳生産はさらに増加する可能性が考えられる。

図6 乳用後継牛頭数と1頭当たり乳量の推移
資料:USDA / NASS
注1:乳用後継牛頭数は各年7月1日現在。
  2:2010年の1頭当たり乳量は、2010年の上半期の伸びが
下半期も継続すると仮定して推測。

上半期の酪農家の収益性は改善傾向にあるが採算ラインを下回る

 生乳生産は本年3月から増加に転じているものの、国内外の乳製品需要が堅調であったことなどから乳価は前年度を上回って推移し、さらに、飼料費も前年と比べ安価であることから、酪農家の収益性は改善の傾向を示している。しかし、生乳生産コストの指標である生乳/飼料比(生乳1ポンド当たりの販売収入/酪農向け飼料1ポンド当たりの価格)は7月の段階で2.31となっており、採算ラインとされている2.50水準を下回っていることから、酪農経営は依然として苦しい状況にあるものと推測される。  

生産者団体の輸出補助金の対象にバターを追加

 米国の乳製品輸出は昨年後半から回復傾向を示している。これは、アジア地域などの景気が回復傾向を示す一方、オセアニア地域の生乳供給がやや減少気味であったことから、国際乳製品市場の需給がひっ迫した結果、乳製品の国際価格が上昇し米国乳製品の国際競争力が高まったことなどが理由として考えられる。米国の乳製品貿易収支を見ると、今年の1月より黒字に転じ、その後は、輸出超過の状況が続いており、5月の輸出額は前年の2倍となる3億6400万ドル(約317億円:1ドル=87円)を記録した。

図7 酪農家の収益性(乳価−飼料費)の推移
資料:USDA / NASS「Agricultural Prices」
  注:飼料費は、トウモロコシ、大豆、アルファルファの価格を用い、16%タンパク飼料に換算。
表3 米国の乳製品の貿易収支
資料 USDA/ERS

 このように、2010年上半期の米国乳製品の輸出は好調であったが、オセアニア地域の2010/11年度(豪州:7〜6月、NZ:6〜5月)の生産増加などを見越して、乳製品の国際価格は弱含む気配を見せており、下半期の輸出については先行き不透明な状況にある。特にバターについては、生産の減少が続き5月末時点の在庫が昨年同期を19.2%下回るなど需給がひっ迫していることから、価格が上昇傾向にあり、国内産バターの国際競争力の低下が懸念されている。このため、国内産バターの国際競争力を維持するため、米国の生乳生産者団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)は7月26日、本年3月より開始している生産者拠出金による酪農協共同基金(CWT)を活用した輸出補助金の対象にバターおよび無水乳脂肪を新たに追加したところである。なお、7月30日時点で、チーズは18,616トン、バターおよび無水乳脂肪については10,593トンを対象に輸出補助金が承認されている。

図8 米国とオセアニア地域のバター価格の推移
資料:USDA/AMS
  注:米国のバター価格はシカゴ・マーカンタイルのスポット
取引価格

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