提案は「共存」に関する新勧告とGMOに係る法令の改正案の二本立て欧州委員会は2010年7月13日、各加盟国の全域または一部地域において遺伝子組換作物(以下「GMO」という。)の栽培を許可、制限または禁止する権限を各加盟国に付与する提案を行った旨発表した(注)。今般の提案は、非組換作物(以下「non-GM」という。)の栽培とGMOとの「共存」に関する新勧告およびGMOに係る法令の改正案の二本立てとなっている。 このうち「共存」に関する新勧告は、2003年に定められた旧勧告に置き換わるものである。旧勧告においては、non-GMの生産者がGMOの意図しない混入により、食料、飼料などにおいてGMOに係る表示義務が課せられる0.9%の含有率を超過してしまうことを回避するため、GMOの栽培地とnon-GMの栽培地との緩衝帯を設置することなどを規定していた。しかしながら、non-GMの生産者が被る可能性のある被害は、当該表示義務に関するものにとどまらず、non-GMを使用した商品を流通させようとする事業者にも及ぶ恐れがあることから、新勧告は加盟国が自国の一部または全部においてGMOが一切栽培されない「GMOフリー地域」を設定することなどGMOとnon-GMの共存のためのさらなる措置を規定するものとなっている。 また、GMOに係る法令の改正案は、GMOに係る現行指令である2001/18/ECを改正するもので、加盟国が自国内の一部または全部においてGMOの栽培を制限または禁止することを可能とするものである。この加盟国の判断は他の加盟国や欧州委員会の承認を得る必要はないものの、措置導入の1カ月前までに他の加盟国および欧州委員会に通知しなければならないこととされている。今後この改正案は、欧州議会および欧州理事会で議論に付されることになる。 今般の提案が加盟国側に受け入れられるかが焦点GMOの域内における栽培については、慎重な加盟国と積極的な加盟国があり、EU全体として新たな一歩を踏む出すことが難しい情勢であったが、今回の欧州委員会からの提案はこのこう着状態を打破するものになるかどうか注目されている。今回の提案は、現時点においては農業専門誌における報道が中心となっているが、今後欧州議会および欧州理事会での議論が進むにつれ、公衆の関心が高まることが予想される。今後ともGMOという極めてセンシティブな問題に欧州委員会がどのように対処していくのか注目してまいりたい。 注:GMOs: Member States to be given full responsibility on cultivation in their territories |
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