需給動向 海外

◆ブラジル◆

2010年の鶏肉生産量、輸出量ともに過去最高を記録

◇絵でみる需給動向◇


鶏肉生産量は前年比7.2%増

 ブラジルブロイラー用ひな生産者協会(APINCO)によると、2010年のひなふ化羽数は、2008年の国際金融危機からの回復、国内消費の増加などから、前年比8.0%増の約60億1千万羽と3年連続で前年を上回った。また、月平均ふ化羽数は、同8.0%増の5億羽となった。

 生産量(骨付きベース)は、肉牛不足に起因した牛肉価格の高騰による代替需要や、経済成長に伴う所得の増加から、国内の鶏肉需要が高まり、2009年(1102万1千トン)に比べ7.2%増の約1181万6千トンと過去最高となった。このうち、70.7%の835万6千トン(前年比8.8%増)が国内市場に仕向けられた。この結果、2010年の1人当たり鶏肉消費量は44キログラム(同7.8%増)になるとみられる。

図7 ひなふ化羽数の推移
資料:APINCO

鶏肉輸出量は2008年の記録を更新

 鶏肉輸出が減少した2009年から引き続き為替相場がドル安レアル高傾向で推移し、輸出には不利な状況であると思われた。しかし、主要輸出国の在庫量減少や金融危機からの回復に伴う需要の増加、新規輸出先の開拓により、2010年は輸出量・輸出額ともに増加した。

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2010年の鶏肉輸出量(骨付きベース)は、前年比6.0%増の約346万1千トンと、過去最高であった2008年(326万8千トン)の記録を更新した。形態別では、パーツが全体の61.0%、丸どりが39.0%の割合であった。

 輸出先別数量では、サウジアラビア(丸どり主体)が前年比11.0%増の約54万7千トンで最も多かった。次いで、日本(同25.5%増の38万5千トン。パーツ主体)が鶏肉在庫量の減少やより安価な食肉である鶏肉の需要の高まり、夏の猛暑などにより品薄の状態にあったため、第2位となった。2009年の第2の輸出先であった香港(同22.4%減の33万1千トン。パーツ主体)は第3位に順位を落とした。これは2010年6月に、中国がブラジルの鶏肉処理施設に対し輸出を許可、中国の直接輸出が可能となったことによる。さらに、アラブ首長国連邦(同2.3%増の20万7千トン。丸どり主体)、ベネズエラ(0.2%減の16万4千トン。丸どり主体)、クウェート(同15.1%減16万9千トン。丸どり主体)と続く。このほか、2010年の同国に対する鶏肉の関税割当枠が前年よりも増加したロシア(14万2千トン。パーツ主体)、鳥インフルエンザが発生したエジプト(12万4千トン。丸どり主体)および中国(12万2千トン。パーツ主体)の増加が目立った。

 一方、輸出額については、2009年から引き続き為替相場が全体的にドル安レアル高傾向で推移する中、平均輸出価格が前年比13.8%高の1トン当たり1673ドル(約13万8000円:1ドル≒82.7円)に上昇したことから、前年比32.9%増の約57億9000万ドル(約4788億3300万円)と大幅に増加した。

図8 国別輸出量の推移
資料:SECEX

業界団体は、2011年の輸出量を前年比3〜5%増と期待

 2011年1月の輸出は、中東諸国や中国を中心に増加したことから、数量で前年同月比28.8%増の約26万8千トン、金額で同51.1%増の5億480万ドル(約417億4700万円)となった。現在、ドル安レアル高に加え、飼料価格高騰や最低賃金の上昇、国内消費の増加などにより鶏肉価格は上昇傾向にある。肉牛不足の改善には時間がかかるため、国内の鶏肉需要は引き続き旺盛であり、輸出価格についても、こうした国内需要を反映して当面堅調に推移するとみられる。

 ブラジル養鶏連合(UBABFF)関係者は、2011年の鶏肉輸出量について、世界的に鶏肉在庫量が低水準にあること、国内養鶏部門への政府の補助が中止されたサウジアラビアなど中東諸国で鶏肉消費量が増加傾向にあること、中国向け鶏肉処理施設を現在の24から41に増やす計画があることなどから、前年比3〜5%増となるのではと期待している。

 一方、鶏肉の自給率の向上と、輸入量の削減を目指すロシアでは、2011年1月より冷凍鶏肉輸入の規制を強化した。ロシアにとっては、ブラジルは主要鶏肉輸入国であるものの、ブラジルにとってロシア向け輸出量は全体の4.1%にすぎないため、同国向け輸出量の減少は中国や国内市場の伸長により相殺されると同関係者はみている。


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