需給動向 海外 |
2010年の平均生乳価格は前年比14.9%高の30.53ユーロ |
生乳価格、記録的低水準であった2009年からかなり大きく上昇オランダの生産者団体であるLTOが公表した2010年におけるEU域内大手16社の平均生乳価格は、前年比14.9%高となる100キログラム当たり30.53ユーロ(約3,480円:1ユーロ=114円)となった。 EUの生乳価格は、乳製品の国際価格の上昇などを受け2007年下期から急騰し、2008年上半期には記録な高水準となった。その後、2008年後半のリーマンショックなどによる景気後退の影響に連動する形で急落し、2009年には26.57ユーロ(約3,029円)と、「酪農危機」と呼ばれた記録的な低水準に陥った。これは、EUの酪農家の収支均衡ラインは同28ユーロ(約3,192円)と言われていることからも分かるとおり、EUの酪農家にとっては非常に危機的な状況であった。 2010年については、EU当局が介入買入を行うなど域内市場の安定化を図ったこと、また、域内外の乳製品市場ひっ迫も追い風となり、生乳価格は4月以降上昇を続け、前年を大きく上回る好調な結果につながったと考えられる。(図9)
2月の乳製品卸売価格、域内外の需給ひっ迫を受け急騰2月の乳製品卸売価格は、ニージーランドの干ばつによる生産量の減少など世界的に需給がひっ迫していることに加え、域内の旺盛な需要などを受け急騰し、脱脂粉乳は前月比14.4%高となる100キログラム当たり270ユーロ(約30,780円)、バターは同9.1%高となる同406ユーロ(約46,284円)へと急騰した。これは、脱脂粉乳が介入買入価格の約7割高、バターが同約8割高という極めて高い水準である。(図10、11)
脱脂粉乳の介入買入在庫、約5万トンの取扱いに注目が集まる以上のように域内価格が高騰を続ける中、EU当局が抱える脱脂粉乳の介入買入在庫への需要が高まっている。既報(「畜産の情報3月号」)のとおり、脱脂粉乳の介入買入在庫は、1〜2月にかけて約46,000トンの放出が決定され、9万トン強から5万トンへと急減したところであり、域内価格の高騰が続けば同在庫はすぐにでも解消されるのではとの声も聞こえていた。 しかし、3月3日に開催された乳業管理委員会においては、応札数量は落札数量の約7倍となる約2,000トンであったにも関わらず、約300トンの落札が決定されたにとどまった。 また、最低落札価格は100キログラム当たり252ユーロ(約28,728円)で、2月の域内卸売価格の6.7%安と域内市場を刺激しない水準に設定された。同落札価格は入札の度に上昇している状況にあり、さらに多くの放出を希望する一部の委員からは最低落札価格の引き下げが提案されたが、欧州委員会側から却下されたもようだ。 今回の入札の結果については、欧州委員会としては一定水準の介入在庫を保有することで、2007年のような乳製品価格の記録的な高騰を抑制したいのではないかと考えることもできる。 今後、EUの生乳生産量は春先のピークに向けて増加する時期に差し掛かる中、域内外の需要は旺盛に推移するとみられ。乳製品価格の高騰が続けば、代替製品へ需要がシフトする恐れもあり、業界関係者からは早急な市場の安定化を望む声も聞こえてくる。今後とも、EUの乳製品価格の動向について注視して参りたい。 |
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