アルゼンチン穀物取引所は1950万トンと予測アルゼンチン穀物取引所(BDC)は3月10日、2010/2011年度(3月〜2月)トウモロコシに関し、は種面積は前年度に比べ約16%増の315万ヘクタール、生産量は同約13%減の1950万トンになる見込みであると予測した。 一方、アルゼンチントウモロコシ協会(MAIZAR)は同日、生産見込みを2100万トンと予測した。しかし、同協会フラギオ専務によれば、「今期の生産予測は、過去、例にないほど難しい。この理由としては、2010年8月から発生しているラ・ニーニャの影響をどのようとらえるかによって異なるためだ。協会のメンバーも1700〜2300万トンの間で意見が分かれている。」とのことである。
過去のラ・ニーニャと比べても少ない降水量アルゼンチンのトウモロコシのは種時期は一般に、早播種(全生産量の70%)は10〜11月、遅播種(同25%)は11〜12月、小麦などの裏作(同5%)は12〜1月となっている。11〜12月は、早播種の開花〜結実期となるため、この時期の降水量不足がその年の生産量に大きく影響する。 アルゼンチン国立農牧技術院気候・水局(INTA/CYA)は、今回のラ・ニーニャによる農産物への影響を調査するため、10〜12月の総降水量に関し、過去13回発生したラ・ニーニャと比較した。その結果、今回はこれまでのラ・ニーニャの平均降水量と比べ非常に少ないことが分かった。
地域によっては30%超減産の可能性も2011年1月以降は、ラ・ニーニャの影響は弱まり、逆に北東部を中心に例年以上の降水量が確認されている。 しかし、降雨は局地的な豪雨型であったことから、地域によって土壌の乾燥状況が大きく異なるのが特徴だ。
米国農務省(USDA)による土壌水分量の調査では、主要生産地となるコルドバ州中〜南部(図3黒丸部分)、ブエノスアイレス州北〜北西部(同白丸部分)は1月31日時点でも強度な土壌乾燥地帯となっていることが分かる。
ALICでは1月中旬に土壌乾燥の強度なブエノスアイレス州ブラガード市(図3の白丸内)にて生育状況を調査した。この地域では例年、10‐12月は1月当たり約120ミリメートルの雨が降るが、今年は例年より30%以上も少ない降水量であった。特に12月後半の降雨不足からトウモロコシの粒は不揃いで小さいものが多い。1月になって100ミリメートルを超える降雨があったが、早播種にとっては穀実の生産量をリカバーできる時期は過ぎていたため、単収の回復は望めない。農場主では生産量は前年比30〜35%減とみる。
USDAは2200万トンと予測BDCによれば、今年は小麦の単収が過去最高の1ヘクタール当たり3.4トンであったことから土壌への負荷は大きく、小麦収穫後には種した裏作トウモロコシが栄養の少ない土壌で生育していくためには豊富な水は欠かせない。このため、2、3月の降水量は裏作トウモロコシにとって重要となるが、INTA/CYAでは3月末までにラ・ニーニャ現象は弱まる傾向にあるとみる。パンパ地域には3月中旬に早霜が到来し生産量が減少することもあるが、今年はその心配もなさそうだ。 USDAは3月10日、アルゼンチンの2010/2011年度のは種面積は前年度より約19%増の320万ヘクタール、生産量は同約4%減の2200万トンとなる見込みと予測する。ラ・ニーニャによるトウモロコシ生産の影響は小さいと分析しているようだ。
輸出量は政府の関与がカギMAIZARフラギオ専務は「国内のトウモロコシ需要の80%以上は飼料用である。今期は、①トウモロコシ価格の高騰、②小麦、大麦などの代替原料の収穫が好調であることから、国内需要は減少するだろう。このため、輸出向けに1500万トン以上を確保することは可能。」と分析する。一方で、「輸出に関し、現政権は牛肉など食肉の国内価格の高騰を抑制するため、飼料穀物の輸出にブレーキをかけてきた。今期に関しても、ラ・ニーニャの影響による生産動向より、政府の輸出許可発行にかかっていると言ってよいだろう。」と本音を漏らす。 現在、主食となる牛肉価格の高騰が継続する中、政府与党は2月28日、緊急大統領令により、輸出許可の発行による実質的な輸出管理を行ってきた国立農牧取引管理事業団(ONCCA)を廃止し、輸出管理を決定する新たな委員会(メンバー:経済大臣、農業大臣、国内商業大臣、工業大臣)を急きょ設立するなど、農産物輸出への関与を強めている。 今年は大統領選挙を控えており、国内価格のインフレと農産物の輸出が政治案件となる可能性は十分考えられるため、今後の政府の動きに注視したい。 |
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