需給解説

畜産物の需給予測について

畜産需給部

1 はじめに

 畜産需給部は、指定乳製品、指定食肉の需給調整、価格安定に係る業務を担当する部門として本年4月1日に発足しました。

 このうち、指定乳製品にあっては、国際約束に基づくカレントアクセスについて、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づき、需給動向等を踏まえながら、毎年一定量のバター、脱脂粉乳等を輸入し国内の需要者へ売渡しを行っています。

 また、指定食肉にあっては、畜産物の価格安定に関する法律に基づき、豚・牛について、卸売価格が国が定めた安定基準価格を下回った場合には生産者団体が行う保管に要する経費を補助したり、中央卸売市場等において機構が直接買入れを行うことにより、価格の回復・安定を図ることとしています。

 こうした需給調整、価格安定業務を適切、効率的に行うためには、指定乳製品、指定食肉の需給動向、価格動向等を総合的に把握するとともに関係者へ提供していくことが必要であると考えられることから、その取組の一つとして毎月定期的に生産量や出回り量等について予測を行い、機構ホームページにおいて公表することといたしました。

 ここでは、畜産需給部が行っている需給予測のうち、牛肉、豚肉の供給予測手法を中心にその概要をご紹介いたします。

2.畜産物の需給予測の内容

<牛肉>

○期間:当月(公表月)及びその翌月(直近2カ月)

○予測する項目:

①出荷頭数(和牛、交雑種、乳用種):(独)家畜改良センターの牛個体識別情報から、「月齢別・牛の種類・性別のと畜頭数」のデータを用いて、牛の種類の出荷月齢パターンを把握し、「牛の出生年月」をもとに予測

② 生産量(部分肉ベース、以下同):牛の出荷予測頭数に過去の月別枝肉重量の実績をもとに算出した平均枝肉重量を乗じて、部分肉換算率を70%として算出

国産牛肉における供給予測手法の基本的な考え方

1 使用するデータ

 出生頭数:家畜改良センターの牛個体識別情報

 と畜頭数:農林水産省の食肉流通統計

2 予測手法

(1) と畜頭数を予測する(求めたい予測値は図のD)。

(2) 出生からと畜までには、畜種ごとに飼養期間がある(詳細は後述)。

 →飼養期間だけ遡って出生頭数を集計すれば、と畜頭数を予測できる。

(3) しかし、実際は事故等により、肥育途中で死亡しているため、頭数にズレがある。

 →出生したうち、どのくらい平均飼養期間経過後にと畜されたかの割合が重要。

(4) 上記の割合を過去5年の同月(図は前年同月)の実績から求める(B/A)。

 →本年同月における割合(D/C)も同じだと仮定する。つまり【B/A=D/C】

(5) 上記の等式をDを求める式に変形すると、【D=(B/A)×C】

3 飼養期間及びと畜月齢について

(1) 飼養期間は「家畜改良センターの牛個体識別情報」における、「と畜月齢別のと畜頭数」より、分布の山を形成する月齢期間をもって設定。具体的には黒毛和種29ヵ月、交雑種26ヵ月、ホルスタイン種(雄)20ヵ月、ホルスタイン種(雌)62ヵ月。

(2) 飼養期間だけ遡って出生頭数を把握する際は、バラツキを考慮して分布の山の頂点だけでなく、前後数ヵ月分、幅を取って遡及。

4 出生頭数及びと畜頭数の捉え方について

(1) 出生頭数及びと畜頭数は月単位のデータしかない。

 →実際は月によってカレンダー日数・と畜場稼働日数は異なる

 →1日単位で捉える必要→1日当たり出生頭数=月当たり出生頭数÷月の日数

  1日当たりと畜頭数=月当たりと畜頭数÷月のと畜場稼働日数

(2) しかしながら、と畜場は稼働していなくても、牛の仕上がりは進む

 →と畜頭数はと畜場稼働日数のみに規定されない→カレンダー日数も考慮する必要

(3) 両日数を考慮して検証した結果、最も当てはまりのよい日数を算出

 →補正後と畜場稼働日数=(カレンダー日数×0.3)+(と畜場稼働日数×0.7)

(4) 補正後1日当たりと畜頭数=と畜頭数÷補正後と畜場稼働日数

(5) 以上のとおり、出生頭数及びと畜頭数を1日当たりに換算

 →「2」の計算方法により「1日当たりの予測値」を算出

(6) 最終的には月当たりの日数を乗じて、「月当たりの予測値」とした。

③ 輸入量(冷蔵、冷凍別):機構が実施している輸入動向検討委員会における輸入数量見込み

④ 出回り量:過去の月別需要量の実績をもとに予測

⑤ 月末在庫量:機構が実施している食肉等保管状況調査の実績をもとに、生産量、輸入量を加え、出回り量を控除して算出

<豚肉>

○ 期間:当月(公表月)及びその翌月(直近2カ月)

○ 予測する項目:

①出荷頭数:最近の出荷頭数の傾向をもとに過去の月別出荷頭数の実績を考慮して予測

②生産量(部分肉ベース、以下同):出荷予測頭数に過去の月別枝肉重量の実績をもとに算出した平均枝肉重量を乗じて部分肉換算率を70%として算出

③輸入量(冷蔵、冷凍別):機構が実施している輸入動向検討委員会における輸入数量見込み

④出回り量:過去の月別需要量の実績をもとに予測

⑤月末在庫量:機構が実施している食肉等保管状況調査の実績をもとに、生産量、輸入量を加え、出回り量を控除して算出

国産豚肉における供給予測手法の基本的考え方

1 基本的な考え方

  豚は牛のトレサビリティのデータのようなものがない。また、飼養期間が短く、直近の子取り用雌豚の統計値は21年2月現在である。したがって、過去の月別と畜頭数の傾向から予測をする手法を用いた。

2 予測手法

(1) 過去10年の食肉流通統計の月別と畜頭数を集計

(2) 「日数補正後月別と畜頭数」を算出

  月当たりでと畜頭数を捉えると、カレンダー日数(5月なら31日、6月なら30日)や、と畜場稼働日数に起因する差異を加味できない。

  単純にカレンダー日数で補正すると、と畜場稼働日数という制約要因を考慮しておらず、一方でと畜場稼働日で補正すると、稼働していない日でも豚の仕上がりは進み、本来と畜されたであろう頭数を考慮できない。従って、カレンダー日数とと畜稼働日数の両日数を加味した、月当たりの日数を算出する必要がある。そのため、カレンダー日数とと畜場稼働日数の割合を変えながら、検証すると、

  (カレンダー日数×0.3)+(と畜場稼働日数×0.7)の割合に月別日数を補正すると最も当てはまりが良好。よってこの比率をもって補正後の各月の日数とした。

  この日数当たりに換算することで、「日数補正後月別と畜頭数」を算出

(3) と畜指数の算出

  「当該月の日数補正後と畜頭数」の「当該年の日数補正後と畜頭数の単純平均」に対する比率を算定した上で、10年分を対象に「月別」に平均化し、「と畜指数」とする。したがって、予測月のと畜指数も所与となる。

(4) 「と畜頭数」と「と畜指数」の比較により、予測値を算出

  「と畜頭数」と「と畜指数」の比は直近の月も予測したい月も同じと仮定する。すなわち、

  予測したい月のと畜頭数:予測月のと畜指数

  =直近6ヵ月のと畜頭数:直近6ヵ月のと畜指数

 よって、

  予測頭数=直近6ヵ月と畜頭数×(予測月と畜指数/直近6ヵ月と畜指数)

 となる。

(参考)

 このほか,乳製品の需給予測について、以下の項目について公表しています。

<乳製品>

○ 期間:前月、当月(公表月)及びその翌月(直近3カ月)

○ 品目:バター及び脱脂粉乳

○ 予測する項目

① 生産量:(社)日本酪農乳業協会(J−ミルク)の需給見通しを参照し、製造係数(特定乳製品向け処理量から生産されたバター等の割合)を乗じて算出

② 輸入量:機構の売買実績及び輸入業務委託者から聞き取りした見通し

③ 出回り量:直近3カ月の間の伸び率を基本に業界関係者からの聞き取りした情報等を加味

④ 月末在庫(民間在庫及び機構在庫):生産量、輸入量、出回り量から算出

3.掲載場所等

○掲載場所

 機構ホームページ>トップ>畜産物の需給予測

 http://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000009.html

○掲載日

 毎月20日目途

 機構ホームページの新着情報に公表した旨を併せて掲載

4.おわりに

 畜産需給部における需給予測の取組は、これまで各種調査結果等が個別に公表されていたものについて、これらをとりまとめ一体的に公表することにより外部からの問い合わせ等への総合的な対応が可能となるワンストップサービスを目指したものでもあります。

 今後、予測と実績とのかい離を分析する等の取組を積み重ねていくことにより、予測の精度を高めて参りたいと考えています。

 お気づきの点等があれば、畜産需給部まで遠慮なくお問い合わせください。


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