2011年第1四半期の豚肉輸出量は前年同期比31.1%増
英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)によると、EUの2011年第1四半期(1〜3月)における域外への豚肉輸出量(冷凍・冷蔵)は35万6800トンとなり、前年同期と比べ31.1%増加した。輸出増加の要因として、ユーロの為替レート低下により国際市場におけるEU産豚肉の相対的な競争力が向上したことが挙げられている。
EUの最大輸出国であるロシア向けは同25.0%増の7万6900トンとなった。同国はいわゆるリーマンショックによる景気後退からの回復に伴い豚肉の消費量が増加し、国内供給の不足を補うため、輸入需要が高まっている。また、ロシアは2011年6月15日以降、同国の主要な豚肉輸入先であるブラジルの3つの州(マットグロッソ州、パラナ州、リオグランデドスル州)からの食肉輸入について、衛生基準を満たしていないことを理由に禁止している。このことは、EUのロシア向け輸出の増加を後押しすると関係者の間で期待が高まっている。なお、2010年におけるロシアのブラジルからの豚肉輸入量は23万トンであった。
一方、主要輸出先の韓国向けは、同国の大規模な口蹄疫の発生による供給不足を受け、前年同期の約2.3倍の5万8300トンとなった。そのほかの輸出先へも全体的に増加傾向となっており、日本向けは5万5800トンと前年同期と比べ9.4%増加した。ベラルーシ、中国向けは大幅に増加し、それぞれ1万7900トン(前年同期比152.1%増)、1万4100トン(同107.4%増)となった。
表7 EUにおける豚肉の域外輸出量(第1四半期) |
(千トン) |
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資料:AHDB |
6月の豚枝肉卸売価格、5カ月ぶりに前月を下回る
一方、EUにおける6月の豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり155.57ユーロ(約18,357円、1ユーロ=118円)と、前年同月を上回っているものの、前月と比べやや値下がりした。昨年末に発生したダイオキシン汚染飼料混入問題を受け、2月に民間在庫補助により市場から隔離された豚肉の一部が市場に出回り始めたことが下落の要因とみられる。2月以降、豚枝肉卸売価格は、ダイオキシン問題に伴う民間在庫補助の発動のほかにも、冷蔵・冷凍豚肉ともに域外輸出が好調であったこと、例年、豚肉価格は春先から夏季の需要期に向けて上昇する傾向にあり、さらに、2011年春は好天に恵まれ、バーベキューなどの需要が喚起されたことから上昇を続けていた。
図4 EUにおける豚枝肉卸売価格の推移 |
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資料:欧州委員会 |
飼料価格の高騰が養豚経営を圧迫
EUでは飼料価格が高騰し、生産コストに占める飼料費の割合が高い養豚経営が圧迫されている。欧州委員会によると、2011年4月の豚用配合飼料価格は1トン当たり301ユーロ(約35,518円)と、前年同月と比較して45%も上昇した。世界的な穀物価格の高騰に加え、2011年春にEUの主要な穀物生産国であるフランスおよびドイツで乾燥した天候が続き、生産に悪影響を与えると懸念されたことが高騰の主な要因とされる。EUにおける豚枝肉卸売価格は、2月以降、前年を上回って推移しているものの、飼料価格の大幅な上昇に追い付いておらず、さらに、燃料費の上昇も重なり、養豚経営は生産コストの増大による収益性の低下で厳しい状況にある。先般意見交換を行ったAHDBや欧州家畜食肉取引業者連合(UECBV)は、飼料価格高騰への対応策として、反すう動物用以外の豚、家きん用飼料への加工動物たんぱく質の利用の再開や、GMO作物の栽培に対する規制緩和を要望しており、今後、欧州委員会に対し、ロビー活動を展開する考えを明らかにした。
図5 EUにおける豚飼料価格の推移 |
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資料:欧州委員会 |
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