需給動向 海外

◆米 国◆

干ばつの影響により牛群再構築に遅れ


◇絵でみる需給動向◇


フィードロットの飼養頭数が増加、最近20年間で2番目に多い頭数

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が10月21日に公表した「Cattle on Feed」によると、2011年10月1日現在のフィードロット(収容能力1,000頭以上規模)の飼養頭数は前年同期比4.9%増の1131万頭となり、最近20年間では2番目に高い数値を記録した。米国においては、夏に離乳する子牛を牧草地で放牧することが一般的であるが、今年については、テキサスなど米国南部における深刻な干ばつにより牧草が被害を受けており、放牧が十分にできない状況にある。このため、通常の育成期間が短縮された肥育素牛がフィードロットへ導入される傾向にあり、好調な牛肉価格と相まって、例年と比べてフィードロットの飼養頭数が増加する主な要因となっている。

 なお、業界関係者は、これまでの干ばつの影響により肥育素牛が前倒し導入されてきたことから、9月の導入頭数は前年と比べ落ち込むものと見込んでいたが、実際の導入頭数は予想を裏切り前年同月比0.2%増となった。9月の導入増から干ばつの状況が深刻であることが示唆される。

表1 フィードロット飼養頭数
(単位:千頭)
資料:USDA/NASS 「Cattle on Feed」

体重の軽い素牛の割合が増加

 導入された肥育素牛の9月の平均体重をみると、709ポンド(322kg)となっている。この数値は過去5年平均とほぼ同じ水準であるが、前年と比べれば下回っている。また、9月導入肥育素牛における600ポンド以下(272kg以下)の頭数シェアについては、過去2年間は20%程度であったが、今年については27.7%となっている。これらのことからも、育成期間が短縮された体重の軽い肥育素牛が例年より多数導入されていることが推測される。

図1 フィードロット導入体重の推移
資料:USDA/NASS「Cattle on Feed」 
注:導入体重は、ALICにて体重別導入頭数を加重平均して算出。

後継雌牛のフォードロットへの出荷、肉用牛繁殖雌牛のと畜頭数が増加

 干ばつは牛群の再構築にも悪影響を与えている。肉用牛繁殖農家が冬の間、雌牛を保留するためには十分な牧草が必要であるが、干ばつにより牧草の十分な確保が困難となっていることから、同農家が後継雌牛及び繁殖雌牛を出荷する傾向が強まっている。9月にフィードロットに出荷された後継雌牛(後継雌牛候補の子牛も含む)の頭数は前年同期を約19万頭上回る431.8万頭を記録した。また、USDA/NASSが10月21日に公表した「Livestock Slaughter」によると、9月にと畜された肉用牛繁殖雌牛(注)は前年同期を約6万頭上回る36.3万頭を記録した。これらの増加は、干ばつの影響により肉用牛繁殖農家が雌牛を自家保留することが難しい状況によるものと考えられる。

 繁殖農家が牛群再構築に動き出したかどうかを判断するに当たっては、去勢肥育牛と畜頭数に対する雌牛および後継雌牛と畜頭数の比率が90%を下回るかどうかが、指標の一つとして考えられている。今年1月〜9月までの同割合は102%を示しており、牛群再構築の兆候は認められない。

 牛飼養頭数は2006年をピークに年々減少しているが、最近の子牛価格の上昇により、牛群再構築に向けた取組が始まるのではないかと期待されていた。しかし、今回の干ばつの影響により繁殖雌牛および後継雌牛が例年より多く出荷されていることから、牛群再構築にはしばらく時間がかることが見込まれる。

注:繁殖雌牛と畜頭数については、雌牛と畜頭数から乳用牛雌牛と畜頭数を控除して算出。


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