1．2011年の生乳と乳製品需給の見通し

　中国における生乳生産量は、メラミン混入事件で落ち込んだ2009年以降徐々に回復し、2011年は3160万トンと、前年比2.5％増加する見込みである。乳牛飼養頭数は、メラミン混入事件が発端となって、国内の生乳需要が落ち込んだ影響により、2009年は705万頭（前年比154万頭減）まで落ち込んだものの、その影響は和らぎ、2011年は805万頭まで回復する見通しである。

表10　中国の生乳需給状況

（単位：千頭、千トン）

資料：機構調べ 　 注：輸入量、輸出量のHSコード　0401

表11　中国の乳製品需給状況

（単位：千トン）

資料：機構調べ 　 注：乳製品は、粉乳類、ホエイ、バター、チーズの4種

　2011年の乳製品生産量は、国内消費量の回復（392万トン、前年比6.8％増）に伴なって、313万トンと同6.2％増と見込まれる。しかしながら、育児用粉ミルクについては、国内原料を用いたものが敬遠され、輸入原料を用いたものの需要が強いことから、粉乳類の輸入は増加している。

2． 酪農乳業をめぐる最近の情勢

　メラミン事件を踏まえ、中国政府は育児用粉ミルク、乳製品などを製造するメーカーに対し、2011年3月までに製造許可の更新を求めた。製造許可更新の条件としては、メラミンの混入検査等の施設整備等が必要とされている。これにより、新たな施設投資が必要になること、維持管理費が増加することなどから、1176社中、432社（全てが加工能力50トン以下）の中小乳業メーカーが、許可更新できず製造を中止に追い込まれた。同様に乳製品の流通業者に対しても新規の販売許可が求められるようになった。しかし、今年度の月別牛乳生産量は、前年度を上回って推移していることから、制度が生産量へ与える影響は小さかったものと考えられる。その他一部の飲用乳に対する付加価値税の引き下げ（17％→13％）も行われた。

図19　牛乳と乳製品の月別生産量の推移

資料：機構調べ

3．生乳価格の推移

　生産コストが上昇している2009年9月から一貫して上昇を続けてきた生乳価格は、2011年5月以降ほぼ同水準で推移し、8月にはキログラム当たり3.18元（約41円、1元＝12.68円　10月末TTSレート）とやや値を下げた。これまでトウモロコシや大豆の飼料価格上昇に伴なって生乳価格は上昇してきたが、今年は、ほぼ横ばいで推移している。これは、国内市場において、牛乳・乳製品の過当競争を背景にこれ以上生乳価格が上昇すると、製品価格に反映せざるを得ない状況となっているためである。中国国内でとうもろこしの需給はひっ迫しているものと考えられることから、今後も、飼料価格が上昇すると見込まれ、生乳価格が現状のまま推移すると、生産農家の経営をさらに圧迫するものと考えられる。

図20　生乳の生産者販売価格の推移

資料：機構調べ

4． 乳製品の貿易

　2011年1〜9月の粉乳の輸入量は、脱脂粉乳は前年同期比36％増の8.9万トン、全脂粉乳は同13％増の27万トンと増加している。特に、全脂粉乳の輸入は、メラミン混入事件を契機に育児用粉ミルク原料として輸入粉乳の需要が強まったことから、大きく増加している。ただ、輸入全脂粉乳の9割を占めるニュージーランド産は、2011年初めに輸入量11万トンを超え、ニュージーランドとのFTAに基づくセーフガードが適用されたため、2011年第2四半期以降、輸入が激減している。

　バターは、中国の食生活でまだ定着していないものの、高所得者層では消費が増えていることから、バターの輸入量は、同23％増の1.3万トンと年々増加している。主な輸入国は、8割近いシェアを占めるニュージーランドであった。

表12　脱脂粉乳の輸入

（単位：トン、％）

資料：GTI社 Global Trade Atlas 　 注：HSコード040210

　ホエイの輸入量は、同21％増で22.6万トンと増加した。2011年1〜8月における米国のFOB価格は前年同期比8％高であるものの、EUよりも価格優位な米国からの輸入量は全体の5割を超える。

表13　全脂粉乳の輸入

（単位：トン、％）

資料：GTI社 Global Trade Atlas 　 注：HSコード040221,29

表14　バターの輸入

（単位：トン、％）

資料：GTI社 Global Trade Atlas 　 注：HSコード040510

表15　ホエイの輸入

（単位：トン、％）

資料：GTI社 Global Trade Atlas 　 注：HSコード040410

図21　乳製品の月別輸入量と粉乳類輸入単価の推移

資料：GTI社 ”World Trade Atlas” 　 注：粉乳類とはHSコード0402をさす