需給動向 海外

◆カナダ◆

カナダの豚飼養頭数、減少局面の終焉か


繁殖豚頭数が6年1四半期ぶりに前年同期を上回る

 カナダ統計局によると、2011年10月1日現在のカナダの豚飼養頭数は前年同月比0.9%増の1199万頭となった。2006年7月以降、前年同期を下回って推移する中、2011年1月に、4年2四半期ぶりに前年同期を上回って以降、4四半期連続でわずかながらプラスとなっている。また、繁殖めす豚頭数(交配済未経産豚も含む)は2005年7月以降、一貫して前年同期を下回って推移していたが、6年1四半期ぶりに前年同期を0.2%上回った。

図8 カナダの豚飼養頭数および前年同期比の推移
資料:Statistics Canada「Hog Statistics」

 子豚生産頭数は2007年第3四半期以降、4年連続で前年同期を下回っている。

大幅に減少する生体豚輸出頭数

 カナダの豚飼養頭数の増加は、生体豚の輸出が減少しているためである。米国とカナダの養豚は国境を越えた分業が行われており、カナダで生まれた豚の多くが米国に渡って肥育・と畜されている。過去、最高であった2007年は1000万4千頭が米国に輸出された。2007年1月1日時点のカナダの豚飼養頭数が1490万7千頭であったことから、カナダの飼養頭数の3分の2の生体豚が米国向けに輸出されたことがわかるであろう。また、カナダの生体豚輸出は、99%以上が米国向けである。

 カナダから米国への生体豚の輸出は、為替と米国の肥育豚価格により変動してきたが、
2008年9月末から義務付けられた米国の食肉の原産地表示(COOL)を機にカナダからの米国への生体豚の輸入は激減した。2008年の生体豚の輸出頭数は前年に比べて67万5千頭(6.7%減)、2009年は298万1千頭(31.9%減)、2010年は61万6千頭(9.7%減)毎年それぞれ減少している。

図9  米国への生体豚輸出頭数および前年同月比の推移
資料:USDA/ERS「Livestock and Meat Trade Data」

 一方で、カナダ国内では肉豚価格の低迷などから、経営が悪化していた養豚生産者は繁殖豚のとう汰を進めており、2009年1月1日時点の繁殖豚頭数は前年より11万7千頭(7.8%減)、2010年には前年より6万3千頭(4.5%減)減少しているが、減少幅は年々縮小しており、2011年は前年より1万9千頭(1.4%減)の減少に留まっている。その結果、2011年1月以降の豚飼養頭数はわずかに前年を上回って推移することになったものと考えられる。

 なお、米国の原産地表示についてカナダ政府はWTOに提訴しており、まだ解決していない。

微妙なかじ取りを迫られるカナダ養豚生産者

 現状のカナダの飼養頭数の停滞は、米国向けの輸出の減少によるところが大きいものの、カナダ国内にも増頭に踏み切れない要因がある。依然として高い飼料コストと安定しない肥育豚価格に生産者は増頭には踏み切れないでいる。また、西部における最大飼養州であるマニトバ州(ケベック州、オンタリオ州に次ぐカナダ3番目の養豚州)では、厳しい環境規制が設けられており容易に増産することを難しくしている。

 総飼養頭数では4四半期連続でプラスになり、繁殖めす豚頭数は6年1四半期ぶりにわずかにプラスに転じたが、カナダの生産者の本格的な増頭の傾向はまだ見られない。増頭のカギを握る生体豚の輸出は、2011年はほぼ2010年と同レベルと見込まれており、2011年は8月までの8カ月間の累計では前年同期を0.3%下回っている。カナダドル高という減産要因と、米国の肥育豚の高値という増産要因がある中で、カナダの豚肉業界は微妙なかじ取りが求められており、今後の北米における豚肉生産の動向が注目されるところである。


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