調査情報部 小林奈穂美
【要約】2010年のEUの牛乳乳製品の価格は、中国やロシア向けなどの域外輸出の増加により、好調に推移した。これにより生乳価格も回復し、2009年の酪農危機から完全に脱却した。2011年も輸出は好調で、乳製品価格も高値で推移しており、引き続きEUの酪農市場は好調と見込まれる。 2015年の生乳クオータ制度廃止に向けて生乳クオータが毎年拡大される中で、域内余剰分を域外の市場拡大により解消する必要があり、大手乳業メーカーは合併などを推し進め、規模拡大で生産性の向上や国際競争力の強化を図っている。この成果として、将来的にEUの国際市場におけるシェアが伸びることが期待される。 はじめにEUでは、2009年の生乳価格の下落による酪農危機から、2010年は域外輸出にけん引され、酪農・乳業の業績が回復し、酪農危機から完全に脱却した。2011年に入っても引き続き域外の輸出は堅調に推移している。酪農危機など、EUの酪農・乳業が大きく変動する中で、大手乳業メーカーは合併などにより、国際競争力を強化する動きが見られる。本稿では、2010年および2011年のEUの牛乳乳製品の需給動向と国際競争力を強化を目的とした大手乳業メーカー合併について報告し、世界の牛乳乳製品市場におけるEUの動向を報告したい。 1.2010年の牛乳乳製品の需給概要(1)2010年の生乳生産動向 2010年のEUの乳用牛の飼養頭数(12月現在)は、前年比1.7%減の2330万頭と減少したものの、1頭当たりの乳量は、6,373キログラムと前年を2.9%上回ったため、2010年の生乳生産量は同1.2%増の1億4900万トンとなった(図1)。
EUは、生乳クオータを採用しているが、2015年にこの制度を廃止することが決定している。この廃止に向けて、酪農および乳業への影響を緩和するため、いわゆるソフトランディング(軟着陸)の方法として、2009/10年度より5年間、毎年、クオータを1%増加(イタリアは09/10年に一挙に5%増加)することとしている。このクオータの拡大に加えて、域外輸出が好調であったことから、2010/11年度のクオータ実績は前年度を2.3%上回る1億4000万トンとなった。 国別の実績(表1)を見ると、アイルランド、ラトビア、フランス、ベルギー、英国は前年度を上回る一方、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリーなどは前年度を下回った。下図の地図は、青色は生乳出荷数量(生乳生産量から自家消費を除いたもの、以下同じ)が増加、黄色あるいは赤色は生乳出荷数量が減少したことを表すが、青色は当初加盟国であるEU15に多く、黄色あるいは赤色は2004年5月以降加盟したEU12に多くみられる。EU12の多くは、もともと小規模農家が多く、生産基盤がぜい弱であるため、生産性が低い。さらに、EU加盟以降の生乳価格の変動に対応できず、小規模農家の離農が進んだことにより、生乳生産量は大幅に減少することとなった。
EU12において離農が進み、今後も生乳生産が落ち込めば、ドイツなどの主要生産国からの移出が加速化するものと考えられる。 (2)生乳価格の動向 2007年から2010年の4年間の生乳価格の変動を見ると、変動の幅が大きかったことがわかる。オランダの生産者団体であるLTOによると、2007年の年平均生乳価格は、乳製品の世界的需要増を背景に、前年をかなりの程度上回る100キログラム当たり32.52ユーロ(約3,600円、1ユーロ=111円)となり、2008年もその傾向は続き、同34.96ユーロ(約3,880円)と2年連続で上昇した。しかし、2008年末の世界的な景気の低迷の影響により、2009年は同27.38ユーロ(約3,000円、前年比21.7%安)と大幅に低下した。これにより、生産者の不満はピークに達し、生産者団体による生乳価格の引き上げを求めるデモや、主要酪農国であるフランス、ベルギー、ドイツ、オランダにおける大規模な生乳出荷拒否といった抗議活動がさかんとなり、いわゆる「酪農危機」となった。 欧州委員会は、この「酪農危機」の対策として、通常の乳業管理委員会とは別に、ハイレベルグループを設置し、「酪農危機」により浮き彫りとなった酪農市場における問題点について検討をした。その結果を2010年6月に公表し、生産者の乳価交渉力の強化の必要性など、いくつかの改善点を挙げた。欧州委員会では、この結果を受けて具体的な対応の検討をした。2010年に入り、世界的な景気の回復を背景に、域外輸出が好調に転じたことから、生乳価格は、2007年、2008年の水準には達しなかったものの、100キログラム当たり31.46ユーロ(約3,490円、同14.9%高)と前年を上回り、生産者の損益分岐点とされている同30ユーロ(約3,330円)を越えた結果、生産者の経営は回復していった(図2)。
(3)乳製品の輸出動向 EUでは近年、生乳生産量は約1億4000万トン程度と安定して推移しているものの、域内の牛乳、乳製品の消費量は伸び悩みを見せ、自給率は109%と過剰となっている。この余剰を解消するため、域外輸出はEUの酪農・乳業にとって必要不可欠なものとなっている。主な輸出品は収益性が高いとされているチーズを主体に、原料となるバター、脱脂粉乳、全粉乳となっている。一般的にEU産乳製品は、品質に定評があるものの、高価格であることから国際競争力が弱く、輸出補助金に依存して輸出が行われてきた。 2007年の乳製品価格を見ると、世界的に需要が高まったことから、EUの域外輸出も増加し、これに伴い国際価格が高騰した。さらに、域内在庫の急減による供給力の低下から品薄感が強まり、EUの域内価格も急騰し、同年6月に輸出補助金がゼロとなった。しかし、この高騰により、例えば乳脂肪から植物性油脂などの代替原料に切り替えるなど、需要者が製品材料を変更したことにより乳製品の需要が落ち込み、輸出量は減少に転じ、2008年は価格も徐々に下落し始め、後半には急落した。2009年1月の乳製品価格を見ると、バター(オランダブランドバター価格)は前年同月比27%安の100キログラム当たり207ユーロ(約23,000円)、脱脂肪粉乳(ドイツスプレー式工場出荷価格)は同33%安の同141ユーロ(約15,650円)と大幅に下落している。 これを受けて、欧州委員会は2009年1月に、1年半ぶりに輸出補助金を再開したが、価格の下落が乳製品離れをしていた需要者の需要を取り戻すこととなり、この結果、2009年の輸出量は前年を上回った。この需要増に伴い価格も上昇したことから、再開された輸出補助金は同年11月に再びゼロとなった。 2010年も域内価格は依然高水準で推移していたが、米ドル・豪ドルに対しユーロが下落した影響により、国際市場におけるEU産乳製品とオセアニア産、米国産との価格差が小さくなり、EU産の価格優位性につながった。米ドル換算で比較すると、2010年末のEU産脱脂粉乳はオセアニア産、米国産よりトン当たり600米ドル(約47,400円、1米ドル=79円)安価になり、EU産チーズはオセアニア産より安値となり、米国産よりは高値ではあるが、その差は同80米ドル(6,320円)まで縮小し、また、バターは、高値ではあるものの、2010年当初は同600〜800米ドル(47,400円〜63,200円)あった差が、同100〜300米ドル(7,900円〜23,700円)まで縮まった。このように、EU産乳製品が価格優位性を有したことにより、オセアニア産および米国産よりも引き合いが強くなった(図3、4、5)。
また、主要輸出先である中国やロシアを見ると、中国は高度経済成長を背景に、乳製品の消費が大きく伸びる一方、中国国内において、トウモロコシ需給のひっ迫により飼料価格が高騰による国内生乳生産が限定的なことや、2008年のメラミン事件の影響により、育児用粉乳の原料として輸入粉乳の需要が著しく高まり、中国向けの輸出が拡大している。ロシアは2010年夏に発生した山火事の影響により、国内生産が停滞したことから、チーズを中心に輸出が伸びた。 輸出急増を受けた主要サプライヤーは、収益性の高いチーズ生産を最優先したことから、バターや脱脂粉乳の生産量が減少し、在庫調整が進んだことから、品薄感が強まり、価格を押し上げていった(図6、7)。以上のように、輸出に対する好条件が重なり、輸出量が増加したことから乳製品価格が高値安定となり、生乳価格に反映された。生乳価格の上昇により生産者の経営は安定を取り戻し、「酪農危機」から完全に脱却した(表2)。
2.2011年の動向(1)2011年8月までの生乳生産および乳製品の需給動向 2011年の生乳生産量は、年初より好調に推移し、4月、5月に発生した干ばつにより、フランスおよびドイツなどで減産が懸念されたものの、その後の好天により概ね順調に推移し、EU全体では1月から8月までの前年同期比約2%増で推移した(図8)。
当地関係者によると、2011年の生乳生産量は、当初、クオータの拡大および好調な輸出の継続により増加するものと予測していたが、夏に入り西ヨーロッパを中心に多雨となり、牧草の成長が芳しくなかったことから、前年を上回っているものの、当初の見込みほどの増加とはならなかったとしている(図9)。
輸出は依然好調であるものの、前年のような大幅な増加は見込まれず、ほぼ前年並みで推移している(図10)。国際市場において、乳製品価格は、チーズは高値安定、バターは引き続き品薄感が強く上昇傾向、脱脂粉乳は介入在庫の放出もあり、現在は下降傾向となっている。
乳製品の卸売価格を見ると、2011年8月は、脱脂粉乳はキログラム当たり196.30ユーロ(約21,000円)と前年同月を下回ったが、バター、チーズは前年同月を上回り、それぞれ同402.00ユーロ(約44,600円)、同301.30ユーロ(約33,400円)となった。 バター価格の高止まりの理由として、オランダの乳業メーカーによると、牧草の成長不良の影響で、生乳の乳脂率が期待されたほど伸びなかったことや、生乳をチーズ生産に最優先的に仕向けたことで、バターやクリームなどの乳脂製品の品薄感が強まったことを挙げていた(図11)。
2011年のEUの酪農市場の見通しは、ドイツの乳業市場情報センター(ZMB)によると、 ・生乳生産量は前年を上回って推移 ・域内の消費量は頭打ちの状況で、輸出拡大は不可欠 ・2011年の乳製品輸出は、2010年とほぼ同レベルで推移することから堅調 ・2010年の輸出の大幅拡大もあり、一部加盟国では2011/12年の割当数量を上回る可能性がある
3.乳業メーカーの合併〜クオータ廃止などを見据えて〜2008年のCAPヘルスチェックにより決定した2015年の生乳クオータ廃止により、EUの酪農にとって大きな転換期を迎えることとなる。生乳クオータが廃止されれば、乳業メーカーにとって一層の経営改善が必要となる。大手乳業メーカーは国境を越えた合併や買収などにより、規模拡大を図りスケールメリットを発揮すること、生産コストの削減を通じて乳価安定を図り、生産者の経営安定につなげたいとしている。ここでは、主要酪農国であるドイツおよびオランダの農協系乳業メーカーの合併の事例を紹介したい。 (1)DMK(ドイツ) ドイツの大手乳業のノルドミルヒとフマナは、2009年に両社の販売部門の統合という形で業務提携した。2011年2月には製品部門を含めて正式に合併し、新会社DMKが誕生した。DMKは、売上高40億ユーロ(4280億円)、集乳量は670万トン、組合員11000戸のドイツ最大手の乳業となり、2010年の世界の主要乳業メーカー売上高ランキングでは、上位20位以下から13位に浮上した。 新組織では、ノルドミルヒとフマナから6名ずつ選出した役員によって構成されたパートナー会議によって、経営方針などの意思決定することとなっている。これまで複雑な仕組みとなっていた意思決定機関を次ページの図のようにスリム化することにより、組合員の意見を反映しやすくなったとしている。
DMKの合併の背景としては、ノルドミルヒが、生産者の経営安定のための10年計画(2009年完了)を作成し、工場などの整理合理化を進めて、コスト改善や国際市場における競争力の強化を図ったことを前提に、主に以下の3点が考えられる。 1点目は、ドイツ国内における市場シェアおよび製品価格競争力の確保である。ドイツはEU最大の消費市場であり、DMKは合併によりまず国内における業界内の地位を確保する方策を取った。同時に、再編による規模拡大を通じたスケールメリットを発揮することにより、小売業者との製品価格交渉が優位に立つことも念頭においている。乳業メーカーの企業規模が小さければ、小売業者からの値下げ圧力が大きくなるからである。ドイツの小売市場は、大手小売業者の上位5社で国内シェア9割を誇る寡占状態となっているが、乳業メーカーは大小合わせて約120社が乱立しており、製品価格は小売主導により決定されている。今回の合併の結果、DMKはドイツ国内の生乳生産シェアの3割弱に達することとなり、その結果、価格交渉においてDMKの優位性が向上するものと考えられる。
2点目はブランドの獲得である。欧州域内の乳製品市場は、成長市場というよりは成熟市場であるため、各乳業メーカーとも新製品開発への投資には慎重にならざるを得ない。成熟市場において、企業が成長するためには、高付加価値製品を開発し、市場において差別化を図らなければ、低価格路線で成長を図るメーカーとの競合により大きな利益は期待できない。また、企業の合併および買収は、相手企業の製品ブランドを製品開発なしに獲得できるメリットがある。相手企業の販売網や多種多様な製品も手に入り、販路拡大なども期待できる。
ドイツ北部を拠点に事業展開するノルドミルヒは伝統的にチーズおよびバターなどの乳製品が主力である一方、ドイツ中央部を拠点に事業展開するフマナはLL牛乳、同国内でポピュラーなクワルクなど乳飲料が主力であった。合併によってDMKは、ドイツ北部・中央部一帯に販売網を持つことになるとともに、両企業の主力製品を一気に手掛けることになる(図12)。また、合併後の商品展開においては、消費者に定着している「MILRAM」、「Humana」といった伝統的な商品ブランド名を残しつつ、市場で差別化を図ることにより低価格競争を回避することが可能となる。従来からの製品特徴を活かしたこの合併は、製品投入において補完関係となっており、両企業において「Win−Win」の関係構築を目指したものと考えられる。 3点目は2015年の生乳クオータ制度撤廃を見越した経営戦略である。前述のとおり、ドイツはEU最大の牛乳・乳製品消費市場である。生乳クオータ制度撤廃は、生乳生産供給体制のボーダレス化を招く懸念がある。オランダ、北欧諸国など近隣の主要生乳生産国においては、ドイツ市場は魅力的である。特に、近隣国の乳業メーカーは、企業戦略としてドイツ市場を絶好のターゲットと捉えている。DMKは、合併を起点としてドイツ国内での販売を強固なものとすることにより他国の乳業メーカーのドイツ市場参入を阻止する狙いもある。DMKは、販売網の強化、多種多様な製品・ブランドの獲得などを積極的に推し進め、ドイツ市場において販売シェアを伸ばすことにより、他のメーカーの参入抑制を図る考えである(図13)。
なお、DMKは系統乳業同士の合併であるため、商系乳業のように乳価の引き上げを通じて生産者の囲い込みを行う必要性はない。しかしながら、生乳クオータ制度撤廃を考慮し、上記のようなスケールメリットを活かした経営基盤の強化を通じ、生乳価格の安定や生産者利益の確保を図り、ドイツ国内の持続的かつ安定的な酪農経営の構築を目指している。 このように、DMKは、国内での経営基盤の強化に軸をおいている。しかし、EUの牛乳・乳製品市場は成熟しており、今後、大きな伸びは期待できないことから、EUの乳業メーカーにとって、輸出戦略は必要不可欠なものであり、DMKとしても同様であろう。 DMK担当者によると、この合併は生乳クオータ制度撤廃の決定が契機ではないものの、国内における経営基盤強化、販路確保だけでなく、中長期的には、安定した増加が見込める海外の需要への対応を見据えているとのことであった。 DMKの中長期的な戦略としては、ノルドミルヒの海外ネットワークを活用し、輸出先としてロシア、アジアなどに重点を置いていくとのことであった。現在のDMKの売上高のうち7割はドイツ国内向けのものであることから、今後の成長戦略として海外輸出を位置づけたことにより、国際市場でのDMKの動向が注目される。 (2)ロイヤル・フリーズランドカンピナ(オランダ) オランダの農協系乳業メーカーであるフリーズランドフーズ(Friesland Foods)とカンピナ(Campina)は、それぞれ51億ユーロ、40億ユーロの売上高(2007年)の大企業であった。この2大乳業は、①国際市場における競争力の強化、市場における強力な地位の獲得、②規模拡大により、生産者、消費者にとって大きな利益に繋がることを目的として2008年から合併に向けた協議を開始した。 両社にとって、酪農市場の変化に柔軟に対応することが緊急の課題であり、ブランドの確立や付加価値製品の強化、大規模化による生産コストの削減は域内市場での生き残りをかけて取り組まなければならなかった。 欧州委員会による寡占にあたるか否かについての審査は、2008年末に終了し、2009年1月に新会社ロイヤル・フリーズランドカンピナが設立された。EUで生産規模(売上)で4番目の巨大乳業となり、世界でも上位5に入る企業となった。
新組織では、ヨーロッパ内の小売部門、海外小売部門、チーズ、バター、粉乳部門、原料部門の4つの部門により構成され、その構成割合(2010年)は、35%、23%、26%、14%となっている。2010年の売上高は89億7千万ユーロ(9597億9000万円)、集乳量は869万トンで、酪農家戸数は1万4829戸となっている(表5)。担当者によると、合併後の目立ったリストラは行っていないが、工場の統廃合により自主退社が促され、合併当初2万774人いた従業員も2010年は1万9484人と約1200人の減少となり、結果的に人員整理につながったとしている。
合併以降の地域別売上高(図14)をみると、オランダ、ドイツを中心にヨーロッパ諸国の割合が6割以上を占める。最近は、「アジア、オーストラリア」は2010年/2009年比で25%増、「アフリカ、中近東」は同13%増と、拡大しており、当該地域に注目していることがわかる。
合併の効果としては、「ブランドと高付加価値製品の強化」が挙げられる。この一例として、バター部門においては、通常の原料バターのほか、需要者の使用用途に応じた製品(融点の異なる製品を開発)の提供により、一般的な商品と差別化を図り市場を確保している。特に、中近東向けはバター、バターオイルなどの輸出が多く、需要者のニーズに対応した製品の提供の効果により、中近東の市場拡大を図っている。日本向けも、原料乳製品の供給はもちろんであるが、需要者とともに商品開発をし、その用途にあった製品を提供することで、強い信頼関係を築いており、今後もその方向で進めていきたいと、担当者は話していた。 付加価値製品分野の拡大として、乳を原料とした飲料の市場拡大、乳幼児向け製品の国際市場における地位向上、ブランド力の強化によるチーズ市場の拡大を目指し、2011年は、乳幼児向け製品の施設整備などに取り組むこととしている。長期的に国際市場における飛躍を主眼にしており、将来的にどの程度の成果が出るのか注目される。 終わりに2010年の「酪農危機」からの脱却は、為替の影響やロシア向け輸出の急増といった好条件がそろったことによるもので、コスト改善による国際競争力の強化によるものではなかった。2011年も2010年と同様に、安定した輸出により好調となっているが、昨今の経済状況を考えると、また2009年のような「危機」に面する危険性は払しょくされていない。 欧州の乳業メーカーは、保守的な体質から一変し、域内外での生き残りをかけて、積極的なM&Aをしかけている。合併による規模拡大で、生産性の向上、輸出拡大を推し進めることで生産者の経営安定につながるとしていることから、今後も、欧州乳業メーカーにおいて再編の動きは加速化するであろう。 乳業メーカーの規模拡大の成果として、約3割とされているEUの国際酪農市場におけるシェア(図15)が将来的に伸びることが期待されることから、日本の主要輸入国であるEU今後の動向を引き続き注視してまいりたい。
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