需給動向 海外 |
需給は逆転、不足する2010/11年度の穀物生産
|
拡大する消費量米国農務省海外農業局(USDA/FAS、2011年1月)によると、2010/11年度における粗粒穀物(注1)、トウモロコシ、小麦の消費量は生産量を上回り、生産量から消費量を減じた需給差は、粗粒穀物で3,900万トン(図14)、トウモロコシで1,800万トン(図15)、小麦で1,700万トン(図16)の不足が見込まれている。
小麦の需給差は、干ばつなどの影響を受けて生産量が減少したことによるが、トウモロコシの生産量は、主要生産国である米国の収穫予測が下方修正されてはいるが(USDA/ERS、2010年9月)、過去3番目の豊作が示されているように、生産量が増加した中での消費量の増加による需給差となっている。 なお、トウモロコシ消費量が増加した要因としては、飼料用小麦の代替需要もあると考えられる。 生産量と消費量の関係がますます緊密に結びつく傾向の中、消費量が拡大していることで、生産量の減少、鈍化による需給への影響は大きさを増している。 (注1)トウモロコシ、大麦、ソルガム、えん麦、ライ麦などの計。 安全在庫水準は大きく割り込まず2010/11年度の粗粒穀物、トウモロコシ、小麦の在庫率は、生産量の減少から在庫を取り崩したため、それぞれ14.1%、15.2%、26.9%となり前年度を下回るが、国連食糧農業機関(FAO)の安全在庫水準(飼料作物15%、小麦25〜26%)は大きく割り込むには至っていない(図17)。
気候変動の影響を強く受ける2010/11年度の生育環境2010/11年度の穀物需給は、昨年の夏ごろまで、在庫水準の高さと豊作が見通されたことでひっ迫懸念は払しょくされていたが、2008年の穀物需給が気候変動による生産量の減少をきっかけに価格が高騰したように、2010/11年度の穀物需給の生育環境は、気候変動の影響を強く受けている。 USDA/FAS、国際穀物理事会(IGC)によると、カナダでは大雨(5月〜)、ウクライナでは洪水(5月〜)、ロシア、ウクライナでは記録的な干ばつ(7月〜)が、小麦、大麦などの生産量に影響を与えている(図18)。
また、豪州では西部で干ばつ(6月〜)、東部で大雨(9月〜)、洪水(12月)、が発生し、南米では降雨量の減少(11月)が指摘されている。なお、パキスタンでは洪水被害で綿花生産が減少(7月)している。 FAOが昨年12月に公表した「穀物見通しと食料事情に関する報告(Corp Prospects and Food Situation)」によると、気候変動の要因の一つとして、2010年6月ごろから発生したラニーニャ現象(太平洋東部熱帯海域(南米ペルー沖)の海面水温の低下)を指摘している。また、ラニーニャ現象は、今後、徐々に弱まりつつあるが、本年3月まで継続するとの見方を示している。 ロシアの輸出禁止措置が価格上昇のきっかけ穀物、大豆などの国際価格は、小麦、大麦などの輸出国であるロシア、ウクライナが、干ばつによる生産量の減少で輸出禁止、輸出割当を実施し市場関係者にインパクトを与えたことをきっかけに(注2)、その後、米国がトウモロコシの収穫見通しを下方修正したことで上昇に弾みを見せた。現在、主要な飼料原料の国際価格は、2008年の史上最高値を更新する勢いである(図19)。
FAOによると、米ドルの下落も価格の上昇に影響を与えていると指摘している。なお、価格の上昇は穀物、大豆に限らず、綿花は140年ぶり、砂糖は30年ぶりの高値を打った。 (注2)ロシアの輸出禁止は2010年8月15日〜2011年6月末まで、また、ウクライナの輸出割当は2010年8月4日〜2011年3月末まで、数量は420万2千トン。 食料価格指数は過去最高農産物国際価格の値上がりで食料価格は上昇傾向を示している。 FAOによると、食料価格指数(注3)は、特に砂糖価格の値上がりによる影響もあり、昨年12月に過去最高となる214.7ポイントを示し、穀物などの国際価格が高騰し、近年のピークである2008年6月の213.5ポイントを上回った(図20)。
FAOによると、食料価格が上昇することで、特に開発途上国などでの食料供給やインフレへの影響が懸念されている。 (注3)FAOの食料価格指数(Food Price Index)は、小麦、トウモロコシ、コメ、油糧種子、乳製品、砂糖および食肉の国際価格について、2002〜2004年を100とし、食品全体の平均価格を指数化したもの。 今後は、各国の作付け、生産動向に注目FAO(Food Outlook、11月17日付)によると、現在の穀物需給の改善には、生産量の大幅な拡大こそが急務であるとの見方を示している。また、現在の農産物価格の上昇は、生産者の増産意欲の動機づけになるとしつつも、2011年はさらなる供給不安、価格上昇への警戒が必要であると指摘している。 このことから、今後は、各国の作付け、生産の動きを注視する必要がある。 |
元のページに戻る