減少局面にある中、12月の飼養頭数は前年水準に近づく

　米国農務省全国農業統計局（USDA／NASS）が12月27日に公表した豚飼養動向調査「Quarterly Hogs and Pigs」によると、2010年12月1日現在の豚総飼養頭数は、前年を0.9%下回る6432万5千頭となった。

　このうち、繁殖母豚頭数は前年比1.2％減の577万8千頭となっており、10四半期連続で前年を下回った。この減少は、2009年の需給緩和に伴う価格低迷を踏まえ、生産者が自主的にとう汰を行ってきた結果であるが、減少幅は、肥育豚価格が堅調に推移し収益性が改善するにつれて縮小しており、2010年3月1日の同3.9%減から1.2％減に縮小した。

　肥育豚飼養頭数も前年比0.8％減の5854万7千頭と、2年間一貫して前年を下回っているものの、繁殖母豚頭数と同様にその減少幅は、同年3月1日の同3.4%減から12月は0.8％減に縮小しており、飼養頭数は減少局面にあるものの、前年並み水準に近づきつつあることが分かる。

図5　母豚分娩頭数（四半期別）と前年同期比の推移

資料：USDA/NASS 「Quartery Hogs and Pigs」 　 注：2011年第1四半期および第2四半期は見込み値

一方、2011年の飼養頭数は再度減少傾向が強まる見込み

　体重別の飼養頭数を見ると、出荷直前となる最も重い180 ポンド（約81.6kg）以上は、わずか4千頭ながらも5四半期ぶりに前年を上回ったものの、120〜179ポンド（約54.3〜81.6kg）、50〜119ポンド（約22.7〜54.3kg）、50ポンド（約22.7以下）といった体重の軽いグループでは、それぞれ 0.7%、1.6%、0.8%減と前年を下回った。

　2010年9〜11月の母豚分娩頭数は、前年同期を2.3％下回る2847千頭となった。2010年12月〜2011年2月の母豚分娩見込頭数は同0.6%減の2856千頭、2011年3〜5月では同2.3%減の2863千頭となり、減少幅は再び拡大するとみられる。また、1腹当たりの産子数は、衛生環境の改善などから前年を上回って推移しているが、2010年12月以降の子豚生産頭数は横ばいないし減少基調で推移すると見込まれる。

　このような状況から、2011年の飼養頭数は、再度減少に向かうとみられる。

　同省経済調査局（USDA／ERS）が12月20日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2011年の豚肉生産量は、前年比1.1％増の1023万8千トンと、9月に公表した1026万9千トンから下方修正している。

減産と輸出増により価格が上昇

　USDA／ERSによると、2010年1〜10月の豚肉輸出量（枝肉重量ベース）は、前年同期比2.0%増の155万1千トンとなった。一方、10月は、前年同月比9.5％減の15万4千トンと、4カ月連続で前年同月を下回った。これは、ドル安という好輸出環境にあるものの、国内の豚肉価格の高騰により輸出が抑制されたといえる。しかし、輸出需要は強く、USDA／ERSは2011年の輸出量は、前年を9.9％上回るものと予測している。

　減産と輸出増により需給がタイトになったことから、豚肉価格は前年を大幅に上回って推移している。2010年11月の豚肉卸売価格（カットアウトバリュー）は前年同月を31.9%上回る100ポンド当たり77.4ドル（キログラム当たり140円：1ドル=82円）となり、肥育豚価格（赤身率51〜52%）は同17.1%上回る100ポンド当たり47.0ドル（同85円）となった。また、小売価格も同様に高騰しており、ロインは1ポンド当たり382.5セント（314円）と同6.9％上回っている。

　豚肉価格が堅調な一方、トウモロコシ価格は上昇しており生産コストが増加している。シカゴ相場の先物、期近価格は2010年前半は1ブッシェル当たり350〜400セント（287〜328円）の範囲で推移していた。しかし、8月に400セントを超え、10月に500セント（410円）、12月には600セント（492円）を超え、1月上旬においても600セント台前半で推移している。このようなトウモロコシ価格の上昇により生産が抑制される動きが見られているため、豚肉価格のさらなる上昇が予想される。

　なお、USDA／ERSは2011年の平均肥育豚価格を前年比3.4％安〜3.8％高の53〜57ドル（4,346〜4,674円）になるものと予測しており、今後の動向が注目される。

図6　豚肉卸売価格と前年同月比の推移

資料：USDA/ERS 「Livestock, Dairy and Poultry Outlook」 　 注：カットアウトバリュー