海外トピックス


アジア:2009年韓国の酪農・乳業の現状について


 韓国の酪農・乳業の現状について、同国の統計資料や米国農務省(USDA)の報告等をもとに概況を報告する。

1. 酪農

 酪農家戸数は近年大幅に減少し、2005年と比較すると24%減少している。経産牛頭数は8%減少しているが、近年やや下げ止まりの傾向がみられる。

 一方、1戸当たりの頭数は着実に増加している。

 生乳生産量も減少傾向である。

 酪農の中心地域はソウル近辺の京畿道および忠清南道であるが、いずれも飲用向け主体の生産であり、北海道のような加工原料乳地域は存在しない。

表1 酪農関連指標
資料:韓国酪農委員会「韓国乳業統計年報」
表2 地域別生乳生産量(2009年)
単位:千トン、%
資料:韓国酪農委員会「韓国乳業統計年報」

図 韓国の行政区分別地図

2. 乳業

 生乳を処理する乳業は全国で20社あるといわれているが、ソウル牛乳(Seoul)、南陽乳業(Mamyang)、毎日乳業(Maeil)の大手3社で、金額ベースでおよそ6割の市場シェアを占めている。このうちソウル牛乳は酪農家戸数2,064戸(全国の30.5%)、牛乳販売量586千トン(同36.7%)を占め、最大手の乳業メーカーである。なお、経営形態は、ソウル牛乳が協同組合、南陽乳業および毎日乳業は株式会社である。

 乳処理工場は全国で48か所ある。飲用乳工場が多いものの、一定の乳製品製造能力も持っている。

3. 国内生乳需給

 生乳の需要量はおよそ300万トンで、ほぼ安定的に推移している。国内生乳生産量も210〜220万トンで推移している。自給率は2009年で68%である。ただし2010年は日本と同じく猛暑の影響により、2011年は口蹄疫の影響により、2009年並みの生乳生産維持は難しいと見込まれている。

 国内生産量の3/4が飲用向けであり、残りが加工仕向けとなる。加工向けの4〜6割程度が生クリーム等へ、残りが粉乳の原料になる。

 生乳の取引形態は、2009年の実績で酪農家と乳業メーカーとの直接取引が2/3近くを占めている。残りが韓国酪農委員会(Korea Dairy Committee)や地域の酪農農業協同組合経由の取引である。

表3 生乳需給
単位:千トン
資料:韓国酪農委員会「韓国乳業統計年報」

4. 乳製品

 乳製品は飲用に仕向けられなかった余剰乳を原料とする位置づけとなっているため、国内生産は比較的少ない。

 国内の生乳生産量が減少する一方、飲用乳向けは一定の需要があることから、余剰乳は減少傾向にある。このため、2009年の脱脂粉乳およびナチュラルチーズの生産量は減少している。

5. 関税

 ホエイ、脱脂粉乳、全脂粉乳およびバターについては、ガット・ウルグアイラウンド合意に基づき、譲許税率を49.5%〜176%とする国境措置を講じたが、粉乳類については調製粉乳(乳成分の上限規制なし。脱脂粉乳とホエイの混合も可能)や、バターについては凍結クリーム、デイリースプレッドと同等の低関税が適用されているため、実質的に主要な乳製品はすべて36%となっている。

 この結果、国内の生乳需要は飲用向けに特化する傾向が強まった。

表4 各乳製品の生産量と輸入量
単位:トン(製品ベース)
資料:韓国酪農委員会「韓国乳業統計年報」、USDA GAIN Report
  注:飲用乳のうち、18%程度がフレーバー牛乳である。
   :バターの輸入量にはスプレッド類を含む。
表5 関税
資料:USDA GAIN Report“Korea, Dairy and Products Annual”2010年10月12日付

 


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