需給動向 海外 |
2010年の牛肉輸出量はBSE発生後初の100万トン超に回復の見込み |
2010年9月は前年同月比14.2%増米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2010年9月の牛肉輸出量(枝肉重量ベース)は前年同月比14.2%増の8万4千トンと、12カ月連続で前年を上回った。2010年1〜9月累計では、前年同期比16.8%増の75万トンとなり、BSE発生前の2003年から14.8%減の水準、発生後の2004年以降では最も多い。この要因として、世界経済が回復基調にある中、米国産牛肉に対するアジアや中東の需要が増加したこと、および仕向け先通貨に対して米ドルが弱含みであることなどが挙げられる。 また、USDAの予測によると、2010年第4四半期は、前年同期比27.1%増の約30万トンとされ、引き続き前年を大幅に上回り、2010年通年では、前年比19.5%増の104万9千トンとされている。これは、2004年以降初めて100万トン超となり、過去最大となった2003年の約9割に相当する。
アジア・中東市場の上位国で全体の約5割成長市場であるアジアおよび中東向けは、輸出先上位10カ国のうち半数を占め、さらに輸出量でも全体の約5割を占める。国別に見ると、2010年1〜9月の輸出量の仕向け先1位はメキシコで前年同期比25.7%減の16万6千トン、2位はカナダ同2.7%増の12万8千トン、3位は日本同23.7%増の11万7千トン、4位は韓国同132.5%増の9万2千トンとなった。5位の台湾は同46.3%増の4万トンと大幅に伸び、さらに2003年の約2.5倍、6位のベトナムは前年を下回ったが2003年から1000倍増、7位の香港は前年から約50%増、2003年から約3倍増となった。台湾や香港など5カ国でBSE発生前の2003年と比べて輸出量が拡大している。 また、上位10カ国のうち、増加幅が大きいのはロシア、エジプトおよび韓国で、エジプトは牛肉消費量の増加が要因とみられる。一方、減少幅が大きい国は、メキシコとベトナムで、メキシコについては、景気の低迷に伴い輸入の需要が牛肉から豚肉に移り、米国産牛肉の輸出は大きく減少した。しかし、今年8月の米国産牛肉に対するアンチダンピング税廃止により、今後の回復が期待される。 なお、2011年は、引き続きアジア向けの拡大、カナダについても国内の生産減により増加が見込まれる。また、エジプトは需要増により今後さらなる増加が見込まれ、ロシアは、個人所得の増加とともに、2011年以降も牛肉需要は堅調に推移するものとみられる。
躍進する韓国向け輸出量2008年6月に輸出が再開された韓国向けは、同年9月に2万トンを記録したが、その後は1万トンを下回る水準で推移した。しかし、ウォンに対し米ドルが弱含んだことなどから2010年3月以降は前年同月を大きく上回り、5〜8月は4カ月連続で1万トンを超えた。2010年1〜9月累計では前年の2倍となったものの、BSEが発生する前で月平均2万2千トンを輸出していた2003年と比べると、半分の水準にすぎない。 米国と韓国は12月3日、米韓自由貿易協定(FTA)の批准手続きに向けた交渉において合意に達した。FTAについては前政権下で2007年6月に合意していたが、議会の承認が得られず棚上げにされていた。今回、懸案事項であった米国産牛肉の月齢制限の緩和については合意に盛り込まれなかったもようである。 今後、この合意内容で実現すれば韓国向けの輸出は大幅な増加が期待され、米国食肉輸出連合(USMEF)のセング会長は今回の合意を歓迎すると表明し、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)のダウドチーフエコノミストは、議会は早急に批准すべきであり、現行の関税40%が撤廃されれば、金額にして年間3億2500万ドル(約276億円:1ドル=85円)分の値下がりになると言及した。今後の韓国向けの動向が注目される。
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