需給動向 海外

◆飼 料◆

引き締まる穀物の国際需給、その一方、中国のトウモロコシ、小麦在庫は高水準


◇絵でみる需給動向◇


中国、2010/11年度のトウモロコシ生産量は過去最高

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2010/11年度(10月〜翌年9月)における中国のトウモロコシ生産は過去最高の豊作とされ、前年度を6.3%上回る1億6,800万トンが見込まれている(図14)。作付面積も過去最高であり、前年度を10.0%上回る3,120万ヘクタールとなり、単収は、昨年は干ばつの影響を受け低下したことで前年度から5.3%上回るが、直近5年度の平均でも上回る5.33トン/ヘクタールが見込まれている。USDA/FASによると、この生産増は、トウモロコシが大豆よりも高い利益を見込めたこと、また、政府による支援などを要因としている。

図14 中国のトウモロコシ生産量、作付面積
資料:USDA/FAS(21010年11月)

 一方、小麦生産量は、1億1,450万トンとされ、前年度を0.5%下回るが、こちらも直近5年度の平均生産量を5.5%上回り、豊作が見込まれている。

 なお、2010/11年度における中国のトウモロコシ、小麦生産量は、それぞれ世界全体の21%、18%を占めている。

中国、トウモロコシ在庫は国内消費量の約4割、小麦在庫は同約6割を保有

 世界全体における主要穀物の在庫水準が低下している中で、中国はトウモロコシ、小麦の在庫を高水準で維持している。中国のトウモロコシ、小麦在庫は2005/06年度から増加し続けており、2010/11年度の在庫は、ともに5年前の2005/06年度時の1.7倍である。また、在庫率(消費量に対する期末在庫の割合)を見ると、それぞれ37.1%、55.7%であり、大幅な上昇を示している(図15、図16)。

図15 トウモロコシの期末在庫、在庫率
資料:USDA/FAS(2010年11月)
図16 小麦の期末在庫、在庫率
資料 USDA/FAS(2010年11月)

 2010/11年度における主要輸出国、地域の在庫率を見ると、米国のトウモロコシが7.2%、EU27カ国の小麦が8.6%であること、また、国連食糧農業機関(FAO)による安全在庫水準は、飼料作物が15%、小麦が26〜26%であることから、このことからも中国の在庫水準の高さがうかがえる。

 2010/11年度における世界全体の在庫率は、トウモロコシは15.5%、小麦は26.0%が見込まれている。数値上、世界全体の在庫率はFAOの安全在庫水準見合いであるが、米国農務省(USDA/FAS)が指摘するように、中国については、政府の意向が働き、国内在庫が積み増されても国際市場には結びつきにくいことから、来年度に向けた世界全体の需給バランスは引き締まった状況にある。

需給改善に向け、穀物増産の必要を指摘するFAO

 FAOによると、現在の在庫水準が低下した穀物需給バランスを改善するためには、生産量の著しい増加こそが急務であるとしており、小麦については、来年度の消費量は、本年度に引き続き直近10年間の伸び率を上回るものと見込まれることから、需給バランスの緩和には、前年度比3.5%以上の生産量が、トウモロコシについては、同6%以上の生産量が求められるとの見方を示している。

 また、現在の農産物価格の上昇は、生産者の作付面積拡大の動機づけにはなるものの、トウモロコシ、大麦、小麦に加え、大豆、砂糖、綿花などの価格も上昇していることから、必ずしも主要穀物の作付面積だけが拡大することにはつながらないとの考えも示している。

 このため、消費者は食品価格の値上がりに直面する一方、2011年はさらなる供給不安、価格上昇を警戒し、対応することになるかもしれないと指摘している。


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