干ばつの影響により南部地域の肉用繁殖雌牛の淘汰数が増加
米国の牛飼養頭数は2011年1月1日現在で1959年以降最低となる9258万2千頭となっており、米国の肉牛業界にとって、牛群の再構築が重要な課題として挙げられている。繁殖雌牛を保留し子牛を生産することが牛群の再構築につながるが、繁殖雌牛を飼養するためには十分な牧草の存在が必要条件となっている。このため、繁殖農家にとっては、その年の牧草の状態が、雌牛を保留するかどうかを決定する上での重要な要素となる。
昨年後半より、テキサス州など南部地域において深刻な干ばつが続いており、牧草の生育状態に悪影響を与えている。今年1月第2週〜5月第3週の肉用繁殖雌牛と畜頭数をみると、南部地域およびその他地域において、それぞれ前年同期比11.7%増、9.5%減となっており、南部地域の干ばつの影響が伺える。全体としては、肉用繁殖雌牛のと畜頭数は前年と比べ減少し牛群再構築の動きが認められるが、今回の干ばつによりそのスピードの鈍化が懸念されている。
表1 1月第2週〜5月第3週までの肉用繁殖雌牛と畜頭数 |
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資料:USDA/AMS
注:南部地域には、テキサス、オクラホマ、アーカンソー、ルイジアナ、ニューメキシコが含まれる。 |
図1 5月31日現在の全米における干ばつの状況 |
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資料:U.S. Drought Monitor |
干ばつの影響によりフィードロットへの導入頭数が増加
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が5月20日に公表した「Cattle on Feed」によると、2011年5月1日現在のフィードロット(収容能力1,000頭以上規模)の飼養頭数は前年同期比7.4%増の1120万頭となった。これは、干ばつの影響により放牧が困難となった育成牛がフィードロットへ仕向けられたことから、4月のフィードロット導入頭数が前年同期比9.9%増の179.5万頭となったことが主な要因である。
また、米国の北部は降雨により通年より寒い気候となっており、さらに、ミシシッピー川やミズーリ川などでは洪水が発生するなど、全米各地で不安的な天候が続いている。これらの天候不順に加えてガソリン価格の高騰などがバーベキューをはじめとする牛肉需要を減退させてきており、5月に入ってからの牛肉価格は弱含みで推移してきている。5月1日現在のフィードロット飼養頭数は前年をかなりの程度上回っていることから、夏に向けて出荷頭数の増加が見込まれるが、牛肉需要にこれまでの力強さがないことから、今後の供給増により牛肉価格が弱含みで推移する可能性が指摘されている。
表2 フィードロット飼養頭数 |
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資料:USDA/NASS 「Cattle on Feed」 |
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