需給動向 海外

◆アルゼンチン◆

2010年の主要乳製品の輸出金額は軒並み増加


全粉乳では、世界第3位の輸出国

 米国農務省(USDA)によると、アルゼンチンは、生乳生産の増加に加え、近年輸出に有利な為替環境が続いてきたことなどから、現在では以下の通り国際乳製品市場における主要輸出国の1つとなっている。

 アルゼンチン国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2010年は脱脂粉乳とホエイ類を除き主要品目で輸出量が前年を下回ったものの、金額では軒並み増加した。

表8 世界の主要乳製品輸出(2010年)におけるアルゼンチンの位置付け
資料:米国農務省(USDA)「Dairy:World Markets and Trade」
  注:暫定値

1 全粉乳

 主要輸出相手先であるアルジェリアやブラジル向けなどが減少したことから、数量では前年比12.1%減の約12万6000トンとなった。しかし、金額では2009年下半期以降の乳製品の国際需給回復に伴う輸出価格の上昇により、同28.9%増の約4億3000万ドル(約356億9000万円、1ドル≒83円)となった。

図11 全粉乳の輸出数量および金額
資料:国家動植物衛生機構(SENASA)
表9 全粉乳の相手先別輸出(2010年)
資料:SENASA

2 チーズ

 主要輸出相手先であるメキシコや米国向けなどが減少したことから、数量では前年比5.4%減の約4万9000トンとなったものの、金額では輸出価格の上昇により金額では同29.1%増の約2億ドル(約166億円)となった。

図12 チーズの輸出数量および金額
資料:SENASA
表10 チーズの相手先別輸出(2010年)
資料:SENASA

3 バター

 主要輸出相手先であるロシア向けが回復したものの、ブラジルやアルジェリア向けなどが減少したことから、数量では前年比21.8%減の約1万1000トンとなった。しかし、金額では輸出価格の上昇により額では同65.0%増の約4000万ドル(約33億2000万円)となった。

図13 バターの輸出数量および金額
資料:SENASA
表11 バターの相手先別輸出(2010年)
資料:SENASA

4 脱脂粉乳

 主要輸出相手先であるブラジルや、ロシア向けなどが増加したことから、数量で前年比44.7%増の約2万1000トン、金額で同倍以上の約6600万ドル(約54億8000万円)となった。

図14 脱脂粉乳の輸出数量および金額
資料:SENASA
表12 脱脂粉乳の相手先別輸出(2010年)
資料:SENASA

チーズでは、日本は5番目の輸出国

 近年、日本はチーズの主要輸出相手先の1つとなっており、2010年は金額べースで5番目の輸出相手先であった。

図15 対日向けチーズ輸出数量および金額
資料:SENASA

 この背景としては、中国、ロシアなどの需要増加やオセアニア地域での干ばつなどにより、2005年〜2008年上半期までチーズなどの国際需給のひっ迫傾向が続いたことや、日本の主要輸入相手先の1つである豪州の豪ドル高などによりアルゼンチンから日本へ輸出できる為替環境になったことなどがある。

 種類別では、イタリアンレストランなどの外食産業向けとしてゴーダチーズやモッツァレラチーズなどが主に輸出されている。

ホエイ類の輸出は引き続き増加

 ホエイ類についても、近年、同国からはブラジルやインドネシア、中国向けの輸出が増加している。アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)によると、2010年は数量で前年比16.5%増の約4万5000トン、金額で同30.3%増の約7500万ドル(約62億3000万円)となった。業界関係者は、今後輸出に力を入れる品目としてホエイ類を挙げている。なお、日本にも2010年において、数量で約1400トン、金額で約270万ドル(約2億2000万円)が輸出された。

図16 ホエイ類の輸出数量および金額
資料:アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)
図17 対日向けホエイ類輸出数量および金額
資料:MINAGRI

2011年第1四半期は数量も増加

 SENASAによると、2011年第1四半期(1〜3月)の全粉乳輸出は、数量で前年同
期比28.7%増の約3万9000トン、金額で同46.4%増の約1億4000万ドル(約116億2000万円)となった。チーズ、バター、脱脂粉乳についても、数量および金額ともに増加した。有利な為替環境により乳製品輸出が伸びた恩恵により、アルゼンチンの生乳生産が拡大傾向で、乳製品の国際需給が依然としてひっ迫傾向で推移する中、今後、アルゼンチンの乳製品輸出がどこまで伸びるか注目される。


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