需給動向 海外 |
急増する乳製品需要と不足する生乳生産 |
生産費の上昇により乳価は上昇インドにおける生乳生産量は日本の15倍弱に当たる世界第一位の約1億1千万トンであり、全世界の生乳生産量の15%を占めている。その生産量を支えているのが、大多数のごく零細な農家であり、1戸当たり平均飼養頭数は2〜3頭程度である。 また、乳牛・水牛の飼養頭数も世界第一位であるが、生産性は著しく低く1頭当たりの年間産乳量は1,000〜1,500キログラムと、先進国の6分の1ほどである。さらに、暑季(4〜6月)は乳牛・水牛の泌乳量がさらに低下し、十分な生乳生産が期待できないため、ほとんどの乳製品工場は操業を停止し、設備のメンテナンスを行っている。ちなみに、操業停止中に必要とされる乳製品は前倒しで製造している。
2010年は干ばつの影響で飼料が不作となり、およそ1500万トン不足し飼料価格が高騰した。その結果、飼料コストの上昇が経営を圧迫し、農家は低品質な飼料を給与せざるを得ず、生産性の低下を引き起こしている。 インド気象庁は6〜10月の順調なモンスーン(季節風)により2011年の降雨量は平年並みと予測している。そのため、十分に飼料が生産され、飼料価格は落ち着くとの見通しもある。 生乳生産費の上昇を受け、大手乳業メーカーを中心に乳価を引き上げる動きがある。インド酪農開発委員会(NDDB)傘下の乳業メーカーMother Dairyが5月に乳価を1キログラム当たり2ルピー(約3円、1ルピー=1.8円)上げ、グジャラート州酪農業協同組合連合会(GCMMF)なども昨年11月から今年2月にかけて4〜6ルピー(約7〜10円)値上げした。そのため、全体の生乳価格は中期的に上昇基調にある。
需要面では、近年の経済成長に伴い国民一人当たりの所得が増加し、より動物性タンパク質を摂取するよう食生活が変化してきた。消費者の健康志向とも相まって牛乳乳製品の市場も拡大し、低温殺菌牛乳やLL牛乳なども消費されるようになっている。 粉乳の輸出は2011年も行われない見込み政府は今年2月24日に粉乳(脱脂粉乳、全脂粉乳、育児用粉乳など)とカゼイン類の輸出を禁止した。これは、暑季の生産性低下に伴い予想される脱脂粉乳不足を回避するためである。このような輸出停止措置は過去に何度かとられており、輸出再開は政府が状況を勘案して判断されてきた。 一方で、政府は暑季の牛乳の消費拡大と価格調整を行うために、NDDBに対して粉乳3万トン、バター1万5千トンの無税輸入を許可している。
2022年までに乳製品大輸入国へ今年2月に財務省が公表した経済調査レポートによると、この10年間で牛乳乳製品に対する需要は年間約600万トンずつ伸びているのに対して、生乳生産量の増加は年間約350万トンにとどまっている。このペースでいくと、2021〜22年の需要は1億8000万トンに上るのに対し、供給は1億1200万トンと見込まれ、この需給ギャップを埋めるためには、生産性を向上させ年間産乳量をさらに5.5%増やす必要があるとしている。 現在もこのような需給のミスマッチにより、乳価が上昇し続けていることに加え、インフレの影響で牛乳の小売価格もここ数年で20%上昇している。 そのため、レポートでは今後ますます増大する需要を国内生産だけでは賄えきれず、乳製品大輸入国になると予想している。そうなった場合、乳製品の国際市場に与える影響も大きいことから、今後ともその動向に注視していきたい。 |
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