需給動向 海外

◆飼 料◆

ぜい弱さが浮き彫りになるトウモロコシの国際需給
−市場関係者の注目は、米国の作付けの動き−


◇絵でみる需給動向◇


拡大する消費量

 飼料穀物の主原料であるトウモロコシの消費量が拡大しており(図13)、需給差がますます縮小する傾向にあることから、生産量の伸びが減少、鈍化することによる需給への影響は大きさを増している。このことに関して国連食糧農業機関(FAO)は、現在の穀物需給の改善には、生産の大幅な拡大こそが急務であるとの見方を示している。

図13 世界のトウモロコシ、単年度での生産量の過不足
資料:USDA/FAS(2011年2月)

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、トウモロコシをめぐる主要生産国などの状況については、以下が示されている。

著しい気候変動、ロシアの輸出禁止

 ロシア:記録的な干ばつ被害が発生し、小麦、大麦の生産量が減少したことで、その代替品として前年度の20倍となる100万トンのトウモロコシの輸入が見込まれ(図14)、世界全体のトウモロコシ需給にさらなる圧力を加えている。また、穀物輸出国であるロシア、ウクライナが、生産量の減少からそれぞれ輸出禁止、輸出割当を実施したことが市場関係者に価格上昇のきっかけを与えたとしている。

図14 EU‐27カ国、ロシアのトウモロコシ輸入量
資料:USDA/FAS(2011年2月)

 米国:トウモロコシの生産量は、過去3番目の豊作となるが、単収が予想を大きく下回ったことで著しい増加には至らず、収穫見通しは下方修正されている。この間、内外の力強い需要増を背景に期末在庫は減少、1995/96年度以来、15年ぶりの低水準を示している(図15)。

図15 米国、トウモロコシの期末在庫、在庫
資料:USDA/FAS(2011年2月)
  注:在庫率は、消費量+輸出量÷期末在庫

 中国:トウモロコシ輸入量は、2009/10年度、2010/11年度と2年度続きで増加し、1995/96年度以来、14年ぶりに100万トン規模の輸入が見込まれている(図16)。このことで、輸入量は一時的ではなく将来的にも増加するのではないかとの憶測が、市場の動きをさらに不確実なものにしている。

図16 中国のトウモロコシ輸入量
資料:USDA/FAS(2011年2月)

 また、中国北部平原の冬小麦生産地帯での干ばつ被害は深刻とされ、山東省では過去50年間で最悪の規模が示され、中国全体では、冬小麦作付面積の約2割が影響を受けたとされる。この小麦生産量の減少懸念も、トウモロコシ需給に影響を及ぼす要因として指摘されている。

 EU(27カ国):気候変動による穀物生産量の減少からトウモロコシ輸入量は増加している(図14)。2010/11年度の輸入量は、前年度を54%上回る450万トンが見込まれており、世界全体の需給へ著しく影響を与えている。

 アルゼンチン:トウモロコシはこれから生産期を迎え豊作が予想されていたが、降雨不足から生産量の減少が見込まれ市場に影響を与えている。また、北アフリカ、中東地域などの国では、輸入価格はさらに上昇するのではないかと買い急ぎする傾向が見られ、このことも需給に少なからず影響を与えている。なお、韓国、イスラエルなどの国では、豪州、カナダで品質的に食用規格から格落ちした小麦をトウモロコシの代替飼料として利用しており、トウモロコシの需給緩和要因になっている。

市場関係者の注目は、米国の作付けの動き

 USDAによると、世界全体のトウモロコシ生産の約4割を占める米国での今後の生産動向を見る上で、市場関係者の注目は、3月末に発表される作付意向調査(USDA、Prospective Plantings report)での穀物と油糧種子の作付面積に集まっているとしている。

(参考)

過去最高となる食料価格指数、価格上昇は今後数カ月継続するとの見通し

 国連食糧農業機関(FAO)によると、米ドルの下落が、ドル建て商品の価格の上昇に影響を与えているとしている。また、OECD加盟国などの低金利政策により資金が商品市場へ流れているとの指摘もある。FAOによると、1990年から統計を取り始めた食品価格指数は、2011年1月、過去最高水準を示しており(図17)、今後の価格動向については、弱まることなく今後数カ月にわたり上昇は継続するとの見通しを示している。

図17 FAOによる食料価格指数(Food Price Index)
資料:FAO(2011年2月3日)

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