需給動向 海外

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1月の乳製品卸売価格、南半球の減産を受け高騰


◇絵でみる需給動向◇


脱脂粉乳価格は前月比10.0%高と急騰

 1月の脱脂粉乳卸売価格は、前月比12.4%高となる100キログラム当たり237ユーロ(約26,781円。1ユーロ=113円)へと急騰し、介入買入価格の約4割高という高水準となった。EUにおいては例年、1〜2月頃に底値を迎えるが、今冬の急騰は、ニュージーランドなどの干ばつによる生産量の減少に伴う世界的な乳製品供給不足により、EU産脱脂粉乳への需要が高まったためとみられる。(図10)

図10 脱脂粉乳の卸売価格の推移
資料:ZMB
  注:ドイツの脱脂粉乳(食品グレード)を指標とした。

バター価格は依然として非常に高い水準で推移

 一方、バターの卸売価格については、9月以降緩やかに下落を続けていたものの、1月は前月比2.8%高となる100キログラム当たり370ユーロ(約41,810円)となり、この結果、依然として介入買入価格の約7割高という非常に高い水準が継続している。高騰の要因としては、脱脂粉乳と同じく国際需要の影響によるもののほか、域内生産量が域内需要を辛うじて満たす程度にとどまっていることが考えられる。(図11)

図11 バターの卸売価格の推移
資料:ZMB
  注:オランダのブランドバターを指標とした。

脱脂粉乳の介入買入在庫は急減、残る在庫は約5万トン

 以上のように、域内価格が高騰している一方、域内需要も依然として旺盛であるため、EU当局が抱える脱脂粉乳の介入買入在庫への需要も高まり、同在庫は急減した。

 脱脂粉乳の介入買入在庫は、2011年の食料支援制度(生活困窮者向け)として処理される予定の9万4千トンを除き、約9万トンが実質在庫として保管されていたが、1月20日に開催された乳業管理委員会においては、約9,500トンの放出が決定された。

 さらに、2月3日の同委員会においては、約1万6千トンの放出が決定されたところである。今回の入札では、応札数量が落札数量の約3.2倍となる約5万1千トン、入札の度に上昇していた落札価格も1月の域内卸売価格を上回る高水準(100キログラム当たり240ユーロ(約27,120円))となるなど、域内需要の高まりが反映された模様である。

 その後、2月17日の同委員会においても、約1万5千トン(最低落札価格250ユーロ(約28,250円)という高値)の放出が決定された。

 この結果、介入買入在庫は約5万トンと急減した。今後、域内価格の高騰が継続するとすれば、同在庫解消は順調に進むと期待される。同時に、一定量の在庫が存在するということは、2007年のような乳製品価格の記録的な高騰を抑制できるのではとも考えられている。

 一方、バターについては介入買入在庫が全て解消されることが既に決定していることもあり、バター価格は当面、高水準のまま推移するのではないかとの声も聞かれる。

 なお、現地の乳業関係者によれば、脱脂粉乳、バターの販売は極めて好調で、業界では相場が短期間で下落するとは予想していないとのことであった。

 国際需要の高まりによるEUの乳製品価格の高騰がどこまで続くのか、今後とも注視して参りたい。

 


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