需給動向 海外

◆タ イ◆

国内鶏肉卸売価格が下落から一転、急上昇


◇絵でみる需給動向◇


2010年の鶏肉生産量、輸出量ともに最高記録を更新

 2010年のブロイラー生産量は前年比3.4%増の1232万トンと堅調に増加し、過去最高となっている。これは、毎年800万トン前後の国内消費量を確保しつつ、順調に輸出量を増加させてきたことによる。

 月別にみると、2010年の前半はここ10年間で最悪の干ばつに見舞われ、さらに高温の影響もあり、生産量は低水準に推移した。しかしながら、降雨があった5月以降は生産量を増加させることに成功し、5月以降の各月ともに前年を上回る水準で生産している。

図3 ブロイラーの生産量、輸出量、消費量の推移
資料:OAE、タイブロイラー加工輸出連合

2010年11月以降の国内価格は低下から一転、増加傾向で推移

 タイ国内のブロイラー卸売価格(生体)は、2010年の6月から10月までは下落傾向で推移し続けていたが、11月から一転して上昇し続け、2011年2月には1キログラム当たり47.7バーツと近年にない高値を更新している。この背景には、労働者の最低賃金の上昇、タイ国内のトウモロコシやキャッサバ不足および中国からの需要増による飼料価格の上昇などがある。また、生産者サイドにおいては、初生雛導入価格も微増しているが、まだ卸売価格に転嫁されていない。そのため、将来的にはさらなる価格の上昇もありうる。

図4 ブロイラー生産量と卸売価格の推移
資料:生産量はタイ農業・協同組合省、卸売価格はタイ商務省
  注:生産量のデータは2007年12月以前と2008年1月以降では連続していない。

 生産量については、2011年1月に入ってから、前年同月比10.4%増の7800万羽生産しており、高い生産量となっている。一方で、前月より500万羽減少(5.6%減)しているのは、12月はクリスマスや正月などで海外の需要が高かったためであり、国内需要は依然として安定している。2月には旧正月も控えていることから、需要が高まりさらに生産量は増加すると予測される。以上のように、生産量は2010年後半から対前年比で増加基調にある。

図5 鶏肉の国内出回り量と輸出量
資料:タイ農業・協同組合省資料および関連団体からの聞き取りによりコンサル作成

2010年の鶏肉調製品の輸出量は増加しているが、価格は前年に比べ低迷

 2010年における鶏肉調製品の輸出量は39万9千トンと、前年に比べ12.7%の増加となった。このうち日本向けは17万4千トンで、同13.2%の増加である。

 月別にみると、4月を除き全体的に前年を上回って推移し、年間を通じた増加が顕著となっている。

図6 タイからの2010年鶏肉調製品輸出量と輸出価格
資料:タイ財務省

 日本向け輸出量は1〜2月を除き、前年を上回って推移している。中でも5月〜8月まで対前年比20%程度の増加であったが、9月以降若干伸び率は鈍化している。

 主要な輸出先国は依然として日本、英国、オランダである。2010年の各国のシェアはそれぞれ43.6%、33.1%、8.0%と3カ国で8割以上のシェアを占めており、この比率はほとんど変化がない。その他、シンガポール、韓国への輸出が前年に比較して増加している。

 一方、輸出価格については、8月以降下落しており、年間を通じた一ヶ月の平均が1トン当たり126,117バーツであり、前年比で5.8%安、日本向けを見ても134,600バーツで同9.6%安と前年に比較すると安値傾向となっている。ただし、これは輸出価格が上昇した2009年との比較であり、2005年から2007年の価格に比較すると、堅調に推移している。

 ちなみに、2011年1月の輸出量は3万2千トンと前月に比べ12.5%の需要減となっているが、前年同月よりも7.7%増加している。2月は、前月から減少した昨年の傾向と異なり、3万3千トンと増加している。

 また、2011年2月の輸出価格については、1トン当たり129,022バーツと前月比、前年同月比ともに上回り、2010年8月からの下げ止まり反転の気配がある。これには、日本の高病原性鳥インフルエンザの発生により増加した引き合いやバーツ高、生産コスト上昇などによるところが大きいとみられる。

 


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