需給動向 海外

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3月の乳製品卸売価格、脱脂粉乳の高騰は一服


◇絵でみる需給動向◇


脱脂粉乳は依然として高水準ながらも3カ月ぶりに下落

 EU域内における乳製品卸売価格は、ニュージーランドの干ばつによる生産量の減少など世界的に需給がひっ迫していることに加え、域内の旺盛な需要などを受け急騰していた。しかし、脱脂粉乳については、輸出需要が低下したことから、3月は3カ月ぶりに前月をわずかに下回る前月比1.2%安の100キログラム当たり265ユーロ(約30,740円。1ユーロ=116円)となった。(図10)

図10 脱脂粉乳の卸売価格の推移
資料:ZMB
  注:ドイツの脱脂粉乳(食品グレード)を指標とした。

 この水準は依然として前年同月の3割高、介入買入価格の5割高という高いものであることから、買い控えが起こり代替製品へ需要がシフトするとの懸念も指摘されるものの、当面、旺盛な域内需要は継続するとみられる。

バターは3カ月連続して上昇、介入価格の8割高の水準

 一方、バターについては、脱脂粉乳同様輸出需要は減退したものの、旺盛な域内需要の影響を受け、前月比5.0%高の同414ユーロ(約48,024円)と、3カ月連続して前月を上回った。この水準は脱脂粉乳を上回っており、介入買入価格の8割高という極めて高い状況である。(図11)

図11 バターの卸売価格の推移
資料:ZMB
  注:オランダのブランドバターを指標とした。

 なお、生産量に占める輸出向け割合(2010年)は、脱脂粉乳が約40%であるのに対し、バターが約7%であり、輸出需要が価格に与える影響は限定的であったとみられる。

脱脂粉乳の介入買入在庫、約5万トンで変動せず

 以上のように域内価格が高水準で推移する中、EU当局が保有する脱脂粉乳の介入買入在庫への注目も高まっている。既報(「畜産の情報4月号」)のとおり、脱脂粉乳の同在庫は、1〜2月の短期間に約46,000トンもの放出が決定され、域内価格の高騰が続けば夏季を待たずして同在庫は解消されるのではとの声も聞こえていた。

 しかし、3月3日に開催された乳業管理委員会では約300トンの落札にとどまり、続く17日の同委員会でもさらなる放出は行われなかったため、約5万トンという在庫量は変動していない。これらの結果から、記録的な乳製品価格の高騰を抑制するため、欧州委員会が一定水準の介入在庫を保有したいのではとも考えることができる。なお、生活困窮者向けとして既に放出が決定されていた在庫分(約9万4千トン)については、6月〜9月の間に放出される見込みとなっている。

 乳製品価格の記録的な高騰は、代替製品へ需要がシフトするとの懸念から、乳業者のみならず生産者にとっても好ましい状況ではなく、市場の早急な安定化が求められているとみられる。


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