需給動向 海外

◆米 国◆

豚肉生産は増加傾向、しかし、飼料価格の高騰が制約要因


◇絵でみる需給動向◇


繁殖豚頭数は12四半期ぶりに前年を上回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/ NASS)が3月25日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、本年3月1日現在の豚総飼養頭数は前年を0.5%上回る6396万4千頭となった。

 内訳としては、繁殖豚が昨年12月1日時点よりも約1万頭多い前年比0.5%増の579万頭と、12四半期ぶりの増加を示すとともに、肥育豚も前年比0.6%増の5817万6千頭と10四半期ぶりに前年を上回った。

 肥育豚を体重別にみると、50〜119ポンド(約22.7〜54.3キログラム)のグループで前年を1.5%上回っていることから、夏以降出荷頭数は徐々に前年を上回って推移することが見込まれる。

 飼養頭数の増加は、好調な肥育豚価格を踏まえ、生産者が増産体制にシフトしていることを示している。しかし、2008年、2009年の肥育頭数と比べれば、それぞれ2.8%、4.7%下回っている状況にあり、現時点では、2011年の豚肉生産量が大幅な伸びを示すとは考えにくい。

表3 豚飼養頭数の推移
(単位:千頭)
資料:USDA/NASS「Quartely Hogs and Pigs」
  注:各年3月1日時点

輸出需要の増加などにより豚肉価格は高水準を維持

 USDA/AMS(同省農業市場流通局)が毎週公表している「Estimated Weekly Meat Production 」によると、2月28日から4月9日までの豚枝肉生産量は前年比1.5%増の26億5500万ポンド(120万4281トン)となった。一方、好調な輸出需要及び国内需要の回復により、本年3月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー)は前年比24.8%高の100ポンド当たり92ドル(キログラム当たり170円)と高水準を維持している。特に、輸出については、口蹄疫により国内生産に大きな打撃を受けている韓国からの需要が強く、1月の同国への輸出量は前年比144%増の15,892トンとなっている。

表4 豚枝肉生産量、と畜頭数、枝肉重量の推移
資料 USDA/AMS
  注 枝肉重量は合計ではなく、平均値。

 また、同期間のと畜頭数が前年比0.6%減の1274万6千頭であったのに対し、枝肉重量は前年比2.1%増の208ポンド(94.5キログラム)であった。このことから、生産者は好調な肥育豚価格を踏まえた結果、飼料価格が高水準で推移しているにもかからず、肥育期間をやや延長し体重を増加させて肥育豚を出荷していると推測される。

 豚肉価格については、好調な輸出需要に加え、夏に向けてバーベキューなどの国内需要も高まることから、さらなる上昇が予測される。通常であれば、豚肉価格の上昇は生産者の増産インセンティブを高めることにつながるが、一方で、トウモロコシ価格は依然として高水準にあり、生産者は大幅な増産に踏み切れる状況にはない。最近のUSDAの統計により、2011年3月1日時点のトウモロコシ在庫が昨年を15%下回っていることが明らかとなり、それを契機にトウモロコシ相場が一段高で推移し、2008年の最高値を更新したところである。このような飼料サイドの動向が今後の豚肉生産にどのような影響を及ぼすのか注目されるところである。

 


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