需給動向 海外

◆ブラジル◆

乳製品輸出が大幅減(ブラジル)


2011年1〜8月、前年同期比30.8%減の約3万4000トン

 ブラジル商工開発省貿易局(SECEX)によると、2011年1〜8月のブラジルの乳製品輸出量は、乳製品の国際需給がひっ迫傾向であるにもかかわらず、前年同期比30.8%減の約3万4000トンと大幅に減少した。

 品目別(2011年上半期)では、主要輸出品目である粉乳類の輸出が、ベネズエラやアンゴラ向けなどの減少から、同29.4%減の1万2000トン。また、チーズ輸出もアルジェリア向けなどの減少から、同52.9%減の1570トンとなった。

国民所得向上が背景の国内消費増加などが要因

 この要因は、乳製品の国内消費拡大とレアル高がある。米国農務省(USDA)によると、2010年の主要乳製品消費量は、チーズ(2006年比24.8%増)、脱脂粉乳(同12.3%増)、全粉乳(同10.9%増)などと増加しており、2011年以降も堅調に推移するものと見込まれる。国内消費拡大により、輸出への仕向け量が減少したものと考えられる。

 乳製品の消費が伸びている背景には、経済成長がある。ブラジル地理統計院(IBGE)によると、同国の国内総生産(GDP)の成長率は、2009年のマイナス成長を除けば、2006年以降ほぼ右肩上がりで上昇し、2010年のGDPはドル換算で2兆898億ドル(約160兆9000億円、1ドル≒77円)となった。経済成長に伴って国民所得が増加し、食生活の向上により乳製品消費が伸びている。これを受け、国内生乳生産も順調に増加しており、2010年は前年比4.7%増の約305億リットル(暫定値)となった。

 2011年7月上旬には、1ドル≒1.55レアル(67円)になるなどレアル高ドル安傾向で推移したことも、輸出減少に影響した。

表8 主要乳製品消費量
(単位:千トン)
資料:米国農務省(USDA)「Dairy:World Markets and Trade」 
注:2010年は暫定値、2011年は予測値
図14 乳製品輸出入量
資料:ブラジル商工開発省貿易局(SECEX) 
注:2011年は1〜8月まで

南米産の乳製品輸入大幅増、今後は為替が懸念材料

 最近の乳製品の輸入動向は2009年以降輸出を上回っており、2011年1〜8月の乳製品輸入量は、前年同期比36.2%増の9万7000トンとなった。品目別(2011年上半期)では、粉乳類が同78.0%増の4万9000トン、チーズが同73.5%増の1万4000トンと大幅に増加した。両品目とも、アルゼンチンからの輸入が50%以上、次いでウルグアイとなった。しかし、為替は7月下旬以降一転してレアル安ドル高傾向となり、10月には同1.8レアル(77円)前後となった。このため、これまで大幅に増加していた乳製品輸入に影響が出てくるものとみられる。

今後は好調な消費に対して、どこまで生乳生産を伸ばせるかがカギ

 好調な国内消費を受け、2010年の生乳生産者価格は、1リットル当たり0.84レアル(約36円、1レアル≒43円)と2003年以降過去最高となった。2011年に入ってからも、一時期下落したものの、4月以降再び上昇し7月には同0.93レアル(40円)と月別で過去最高を記録した。このような中で、今後は好調な生産者価格を背景に、どこまで生乳生産を伸ばすことができるか注目される。

 


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