需給動向 海外

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豚肉卸売価格は前年を上回って推移する一方、繁殖用雌豚頭数減少


◇絵でみる需給動向◇


2011年9月の豚枝肉卸売価格、前年同月比7.0%高

 欧州委員会によると、EUにおける9月の豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり154.82ユーロ(約16,410円、1ユーロ=106円)と、域内における夏季の需要期を過ぎた影響で前月からわずかに下落したものの、前年同月と比べ7.0%高となった。2011年において豚枝肉卸売価格は一貫して前年を上回って推移している。この要因として、域外向け輸出が好調なことが挙げられる。

 2011年1〜7月の域外向け豚肉輸出量(生体、内臓などを含む)は175万9769トン(製品重量ベース、前年同期比20.5%増)と前年同期と比べ大幅に増加した。ユーロの為替レート低下により、国際市場におけるEU産豚肉の相対的な競争力が向上したことが輸出増加の主な要因とみられる。最大輸出先のロシア向けは48万7277トン(同7.2%増)に増加した。中国および韓国向け輸出は前年同期と比べ著しく増加しており、それぞれ17万8552トン(同76.8%増)、12万5912トン(同112.7%増)となった。中国では消費量の拡大に増産が追い付かず、輸入需要が高まっている。韓国については、同国の大規模な口蹄疫発生による供給不足と国内価格の高騰を受け、輸入が増加した。そのほかの輸出先も全体的に増加傾向となっている。

図1 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

 なお、ダイオキシン汚染飼料混入問題による価格下落を受け、2月に発動された民間在庫補助により市場から隔離された豚肉14万1218トンについては、5月以降毎月放出され、8月をもって全量放出となった。

豚肉生産上位12カ国の繁殖用雌豚頭数、前年比4.8%減

 このように、好調な域外輸出を背景に豚枝肉卸売価格が前年を上回って推移しているものの、EUの豚肉生産上位12カ国(合計で域内生産の約9割を占める)における2011年5〜6月時点の豚飼養頭数は1憶3045万頭と、前年と比べ0.5%減少した。分類別にみると、肥育豚(50キログラム以上)は4930万頭(前年比0.2%減)、子豚(50キログラム未満)は6940万頭(前年同)と両者とも前年並みとなった一方で、繁殖用雌豚が1150万頭(同4.8%減)に減少した。

図2 豚飼料価格の推移
資料:欧州委員会

 英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)は、繁殖用雌豚の飼養頭数が減少した要因として、飼料価格の高騰による養豚経営の収益性低下を挙げている。飼料費は生産コストの約5割を占めるとされる。世界的な穀物価格の高騰を背景にEUの豚飼料価格は2010年7月以降急激に上昇し、2011年2月には前年比4割高の水準に達した。豚飼料価格はその後も高水準で推移し、2011年8月は1トン当たり289.28ユーロ(約30,663円)となった。

 また、アニマルウェルフェアの規則強化により、2013年1月1日以降、繁殖用雌豚のストール飼育が禁止されることも繁殖用雌豚減少の要因として指摘されている。現時点で、多くの養豚家は2013年以降の規則に適合しておらず、豚舎への投資が必要とされる。しかし、ギリシャの債務問題などによる金融不安で投資資金の借り入れが困難な状況となっていることから、設備投資をあきらめ、経営規模の縮小や廃業を選択する養豚家もいるとみられている。

表4 豚飼養頭数(2011年5〜6月時点)
(単位:千頭)
資料:EUROSTAT

 


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