需給動向 海外 |
生乳不足により上昇を続ける生乳価格 |
モンスーン期の降雨不足により生乳生産量が減少インド農業省畜産酪農・漁業局は先ごろ、モンスーン期の降雨不足を踏まえ、2011年の生乳生産の見通しを1億2100万トンから1億1800万トンに下方修正した。 インド気象庁は、今年のモンスーン(季節風)による降雨量が8月10日現在、過去50年間の平均(長期平均)を4%下回ったと報告しており、シーズン全体を通した降雨量は、長期平均並みかやや下回ると予想される。降雨量が減少すると、飼料原料となる穀類の単収低下が懸念されるほか、乳牛および水牛のエサとなる草の生育にも影響するため、産乳量の低下による供給不足を引き起こす恐れがある。中でも、最大産地ウッタル・プラデーシュ州が属する東部及び北東部の降雨不足はほかの地域より深刻であるため、生乳生産への影響が懸念される。降雨不足は生乳価格にも影響を及ぼしている。
生乳価格は、生産の伸びを上回る需要の増加を背景に上昇基調にある中、主産地の降雨不足による草の生育不良および飼料価格の上昇などから、8月には前月比1%高の1キログラム当たり200ルピー(無脂固形分換算、約360円、1ルピー=1.8円)と高止まっている。また、脱脂粉乳の卸売価格は同206ルピー(約371円)と過去最高値を更新した。生乳および脱脂粉乳の価格上昇は小売価格の値上がりを引き起こしており、大手乳業メーカーMother Dairyやグジャラート州酪農業協同組合連合会(GCMMF)は牛乳の小売価格を相次いで値上げした。このため、小売価格は3年間で同17ルピー(約31円)から29ルピー(約52円)まで上昇した。 インドでは、牛乳は、消費生活上重要な品目であることから価格が上昇しても消費は今のところ減退していない。また、農村部で生乳が多く出回るため飲用乳の消費が多い一方、都市部では、消費者の嗜好の変化などから、チーズ、バター、ギーなどの乳製品が飲用乳より消費されるようになっている。
粉乳の無税輸入枠を5万トンに拡大予定インドでは近年、消費増加のため、還元乳向けなどの脱脂粉乳およびバターの輸入量が増加傾向にあり、特に2010/11年度は、脱脂粉乳が前年度から3倍以上の1万2千トン、バターも同2.6倍増の360トンと大幅に増加した。
政府は今年2月24日、暑季の生産性低下による脱脂粉乳不足を見越し、粉乳(脱脂粉乳、全脂粉乳、育児用粉乳など)およびカゼイン類の輸出を禁止するとともに、粉乳の無税輸入枠3万トンを設定した。さらに、政府は8月4日、高騰の続く脱脂粉乳の価格安定を図るため、粉乳の無税輸入枠を3万トン追加することを決定した。ただし、貿易を管理する商工省から追加分については、正式な通知は発出されておらず、輸入もされていない。 インドの乳製品市場については、市場規模の潜在性から進出が成功した際に、大きな利益を上げられるとして、国内外から注目が集まっている。豪州では複数の乳業メーカーが今後年間300万トンの生乳が不足すると見ている。また、ニュージーランドも、現在交渉中のFTAの合意後を見越して、乳製品の輸出増大を計画している。一方、インド国内でも、乳業会社の買収など、成長産業としての酪農部門に一般企業が新規参入する動きがみられる。
増産に向けスーパーブル900頭を選抜へこのような需要増に対応するため、インド酪農開発委員会(NDDB)は2年前、増産のための各種取り組みから成る国家酪農計画を策定し、その一環として、今年の10月から5年間かけて、スーパーブル900頭の選抜を行うこととしている。従来からインドの雄牛は血統が、品種改良を抑制する要因の一つとされ、平均的な交雑種の一日当たり乳量は6.5キロリットルにとどまっている。NDDBは、品種改良によって、乳量が30〜100%向上するとしており、グジャラート州およびパンジャブ州ではスーパーブルを導入する準備が進められている。しかし、そのほかの州では、在来種との交雑の恐れがあることや、インフラ上の問題などにより導入は未定である。 さらに、NDDBは、品種改良の推進には人工授精の普及が必要不可欠とし、その割合を現在の20%から、2016/17年度には35%、2021/22年度には50%に引き上げることを目標としている。 |
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