需給動向 国内

◆牛 肉◆

東京市場の7月牛枝肉取引、放射性セシウム問題で混乱


◇絵でみる需給動向◇


  農林水産省の「食肉卸売市場調査(日別)」によると、東京市場の平成23年7月の平均枝肉卸売価格(速報値)は、ほとんどすべての規格で前年同月を下回った。去勢和牛では、A−5が1,868円(前年同月比11%安)、A−4が1,436円(同15%安)、A−3が1,181円(同19%安)、交雑種では、B−3が1,030円(同8%安)、B−2が869円(同8%安)、乳去勢では、B−3が629円(同9%安)、B−2が524円(同15%安)となったが、牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムの検出が報道された日以降、東京市場の牛枝肉の取引は大きく混乱した(図1)。

図1 東京市場における牛枝肉卸売価格の推移
資料:農林水産省「食肉卸売市場調査」

 報道直後の7月19日の相場を見ると、去勢和牛で、主力のA−4が606円、A−3が492円と直前の15日の相場に比べて660円から800円も値を下げ、国内で牛海綿状脳症(BSE)の発生が確認され牛肉の相場が急落した以来の安値を付けた。一方、大阪市場は、同日の値動きとして、去勢和牛で、A−4が1,471円、A−3が1,321円と、直前の15日の相場に比べて150円から190円安となったものの、東京市場ほどの急落とはならなかった(図2)。

図2 大阪市場における牛枝肉卸売価格の推移
資料:農林水産省「食肉卸売市場調査」

 その後、20日、21日には、東京市場の卸売価格は急激に上昇し、同月29日には、A−4が1,622円、A−3が1,268円に回復した。相場の急激な回復に関して市場関係者は、「取引が敬遠されている生産地の肉牛の上場が減り、価格がほぼ通常通りだった北海道産や西日本産の上場割合が高まったため」としている。ちなみに、同市場における7月下旬の1日当たり平均取引頭数は、前年同期を4割以上下回る324頭となった。

 8月に入ると、7月中旬からの福島県産、同下旬からの宮城県産に加えて、岩手県産および栃木県産の肉牛が原子力災害対策特別措置法に基づき出荷停止となり、また、肉牛の放射性物質の全頭検査を実施する県が拡大したことから、8月第1週における東京市場の1日当たりの平均取引頭数は、281頭と前年同月の半分以下となった。こうした中、当該週における枝肉平均卸売価格は、A−4が1,712円、A−3が1,423円と前週を上回って推移した。市場関係者によると、「放射性物質検査済みの牛枝肉については一定の値を付ける一方、検査の対象となっていないものは値を下げている」とされ、市場はある程度落ち着きを取り戻しつつある。

 こうした東京市場における取引頭数の減少を受けた、国産品から輸入品へのシフトについて、輸入業者は、現時点ではそうした動きは見られないとしている。機構が調査している輸入牛肉の卸売価格の状況からも、輸入品の約7割を占める豪州産の冷蔵フルセットの価格は、7月25日から29日の間で前週とほぼ同じ値動きを示しており、引き合いが強まっているような動きは見受けられない。


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