需給動向 海外 |
総飼養頭数は最低記録を更新、更新用肉用雌牛は前年比2.2%減 |
飼養頭数は減少を続け最小値を更新米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が7月22日に公表した牛の飼養動向調査「Cattle」によると、2011年7月1日現在における牛の総飼養頭数は、前年を1.1%(110万頭)下回る1億頭となった。これは、同調査においてデータが確認できる1973年以降の最小値となる。 米国のキャトルサイクルは、2006年をピークに飼料コストの高騰などから減少局面に入り、その後は世界的な景気低迷に伴う需要減や干ばつの影響などから、この5年間で480万頭減少した。
飼養頭数を部門別に見ると、肉用繁殖雌牛は3140万頭と前年を1.1%(35万頭)下回り、500ポンド(227キログラム)以上の更新用肉用雌牛(未経産牛)も前年を4.5%(20万頭)下回る420万頭となった。子牛価格は昨年から好調を維持しているにもかかわらず、繁殖雌牛の減少に歯止めがかからない状況にある。これは、テキサス州など南部地域において深刻な干ばつが続き十分な牧草の確保が困難となっていることなどから、生産者が繁殖雌牛をとう汰していることや、後継牛を保留せずフィードロットへ出荷していることが主な理由として考えられる。 なお、2011年の子牛生産頭数は、前年比0.5%減の3550万頭と見込まれており、飼養頭数の減少は当面続くと予想される。
6月のフィードロットへの導入頭数は大方の予想を覆し増加同局が同日公表したフィードロット(収容能力1,000頭以上規模)の牛飼養動向調査結果「Cattle on Feed」によると、6月のフィードロットへの導入頭数は、前年を4%上回る170万頭となった。市場関係者は、フィードロットへの導入頭数が今年に入り前年を上回って推移していたことを踏まえ、6月の導入は減少すると見込んでいたところである。6月の導入頭数の増加は、本来であればもう少し長い期間育成されるはずの子牛が、乾燥気候により牧草の状態が不良であるため、前倒ししてフィードロットへ仕向けられたことが主な要因であり、干ばつの状況が深刻であることが示唆される。導入された肥育素牛の体重をみると、2006年6月以降最も軽量であり、この結果からも育成期間が短縮されたことが推測される。
干ばつを考慮して、米国農務省(USDA)が土壌保全事業(CRP)の要件緩和を決定干ばつは牧草の作柄にも影響を与えている。8月7日時点の牧草の作柄は「悪い」および「大変悪い」が38%を占め、昨年同時期の15%を大きく上回っている。また、干ばつの影響を最も受けているテキサス州およびオクラホマ州においては、「悪い」および「大変悪い」の比率が90%を超える深刻な状況にある。 このような中、USDAは8月8日、牧草の供給を増やすため、土壌保全事業(CRP、Conservation Reserve Program)の要件緩和を決定した。CRPは、土壌侵食を起こしやすい農地および環境的に脆弱な耕作地の所有者が、政府との間で特定の耕作地を10〜15年間休耕するなどの契約を結ぶことにより奨励金を受け取る事業であり、対象となった耕作地には土壌保全のために牧草が作付られるケースもある。CRPでは、終了期限を迎えて他の作目を作付する場合は、その牧草を破棄することが事業要件として定められているが、干ばつによる牧草被害の影響を踏まえて、それら牧草の収穫・使用・販売を認めることを内容とする要件緩和が決定された。このほかにも、CRPの中で土壌保全のために放牧を行い、9月末に事業終期を迎えるテキサス州、オクラホマ州などの生産者に対して、特例として放牧期間の1カ月延長を認める決定が行われた。 |
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