需給動向 海外

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2011年上半期の生乳生産量、前年同期比2.2%増


◇絵でみる需給動向◇


 ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、2011年上半期(1〜6月)におけるEU27の生乳供給量(速報値)は、前年同期比2.2%増の7,088万トンとなった。加盟国別では、主要生産国であるドイツ(同2.6%増)、フランス(同5.2%増)、英国(3.0%増)、オランダ(1.3%増)などのEU15において総じて増加したものの、2004年5月に加盟したEU10では、中小零細農家が多く、2009年の酪農危機からの回復が遅れているため、生乳生産量は減少している。

 この増加は、2010年以降、乳製品需要が域内のみならず、域外についてもユーロ安で推移した為替状況により旺盛であったことなどから、域内のサプライヤーが生産者乳価の引き上げを通じて生乳供給の増加を図ったことによる。なお、今春ヨーロッパの北部地域に見られた少雨による減産懸念については、その後続いた好天により払拭されることとなった。

図9 月別生乳供給量の推移(EU27)

6月の乳製品卸売価格、バターは高止まり、脱脂粉乳は下落傾向

 EU域内における7月のバター卸売価格は、前月比0.4%高となる100キログラム当たり420ユーロ(約47,460円。1ユーロ=113円)となった。同価格は、2011年に入って、4月および5月を除き上昇傾向で推移している。これは、2007年以来の記録的な水準であり、介入価格と比べると80%高という高水準で高止まっている状態となっている。

 高値の要因としては、域内のバター生産量が2011年上半期で見ると前年同期比2.6%増と好調なものの、需要についても、域内外とも活発であるためと考えられる。さらに、民間在庫補助分(約8万トン)が最需要期である冬場の需給調整のため市場から隔離されていることも需給ひっ迫が解消されない要因の一つとされる。

表3 2011年上半期の生乳生産量(EU27)
単位:千トン
資料:ZMB
  注:数値は速報値。
    飲用乳、バター、チーズは1〜5月分。脱脂粉乳、全粉乳は1〜4月分。

 なお、現地報道によると、冬場の需要については、増産分および民間在庫補助分で過不足なく補えるとされている。それに加え、生乳の仕向け先をチーズからバター・脱脂粉乳に切り替えるサプライヤーも現れているとのことであり、卸売価格のさらなる上昇は見込まれないと考えられる。

図10 バターの卸売価格の推移
資料:ZMB
  注:オランダのブランドバターを指標とした。

 一方、7月の脱脂粉乳卸売価格は、前月比6.8%安となる同225ユーロ(約25,425円)と、前年同月並みまで下落した。しかしながら、バターと同様、依然として介入価格の40%高という高水準となっている。

 脱脂粉乳の場合、バターに先駆けて4月から下落に転じた。これは、バターと異なり、増産に伴い需給のひっ迫感が緩んだことが要因と考えられる。

 しかしながら、アルジェリアをはじめとする域外需要が依然として旺盛なこともあり、為替次第ではEUへの需要が強含みで推移する可能性があること、価格抑止力としての機能を果たしてきた介入買入在庫が実質的にゼロとなったことなどから、卸売価格が再び上昇する可能性も否定できない状況となっている。

 EUでは、2015年の生乳クオータ撤廃に向けたいわゆる「ソフトランディング(軟着陸)」として毎年1%ずつクオータを増加しているが、今回の増産はこれを上回っている。

図11 脱脂粉乳の卸売価格の推移
資料:ZMB
  注:ドイツの脱脂粉乳(食品グレード)を指標とした。
  生乳クオータ制度撤廃を見据え、増産は継続か

 国際的な飼料価格の高騰はEUにおいても例外ではなく、短期的には、特にEU10において酪農家の収益性の低下、廃業による生乳生産の減産が懸念されている。しかし、長期的には、クオータ撤廃に向け、増加傾向は継続するのではないかと推測される。

 先般意見交換を行ったZMBの担当者によると、クオータ撤廃後の生乳供給量については、増加すると明言しないまでも減少することはない、増産をけん引するのはEU15であり、EU10においては現状維持もしくは減少するとしている。

 なお、生乳生産量増加に伴い乳製品も増産されることになるが、ZMBによれば、その仕向け先としては、干ばつの影響により生乳生産が減少しているロシア、伝統的に粉乳を輸入しているアルジェリアのほか、今後の成長市場として中国、南アフリカなどが主たる相手先と考えられるとのことであった。日本は、EUのチーズ輸出において、ロシア、米国に次ぐ第3位の輸出先であることから、今後ともEUの生乳生産動向に注視する必要があろう。


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