需給動向 海外 |
1月のバター価格は下落傾向が弱まる
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ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、2012年1月のバター価格は、100キログラム当たり348ユーロ(38,280円:1ユーロ=110円)となり、昨年10月以降から続いた下降傾向が弱まった。しかし、依然として高水準であり、介入価格の同246.39ユーロ(27,102円)より40%高となった。12月の下落の要因としては、EUの12月の生乳生産量が前年同月比2.6%増加したことに加え、ニュージーランドの生乳生産が好調だったことから、バターの国際価格が軟調であったことなどが挙げられる。 速報では、域内のバター価格は2月に入り横ばいに転じたとされている。これは、欧州委員会が2012年3月1日から開始するバターの民間在庫補助(PSA)の詳細を発表(2月24日付け官報)したことが影響していると見られる。バターのPSAは、夏季は生産が域内需要を上回り、冬季はその逆になることから、年間を通じて安定的に流通することを目的として実施しており、毎年3〜8月に市場から隔離し、需要期に放出すために在庫の保管を行う者に対し、補助金が交付される仕組みとなっている。2012年のPSAは、例年通り3月1日から開始され、その4週間前の製造商品から対象となる。補助単価は、固定経費が1トン当たり14.88ユーロ(1,637円)で前年比20%減、保管経費が1トン、1日当たり0.26ユーロ(28円)で同25%減となった。補助単価の削減が発表されたものの、そのほかの条件は前年と変わらず、2012年のPSAの対象期間が始まったため、バター価格は下降から横ばいとなったもようだ。 欧州委員会は、今後のPSAについて、市場原理に基づく需給調整へと移行し、さらに、バター、牛肉、砂糖など各々で施行されているそれぞれの介入制度から品目横断の統一制度にし、積極的な介入によるセーフティーネット機能を持たせたいとの意向を示している。
欧州委員会が短期予測を発表欧州委員会の農業・農村開発総局 (DG AGRI)が2012年2月にEUの農産物需給の短期予測を発表した。これによると、EUにおける酪農部門の生産見通しはおおむね良好で、生乳や、全粉乳以外の乳製品の生産は増加の見通しで、脱脂粉乳の輸出は、高水準だった2011年と同レベル程度と予測している。 2011年は、主要生産国であるフランス、ドイツ、オランダ、英国で生乳の増産が見込まれ、EU全体でも前年比2.1%増加と見込まれている。2012年、2013年も増加の予測で、それぞれ同1.0%増、同0.6%増としている。また、1頭当たりの年間泌乳量は、2011年の年平均は6,431キログラムであったが、これを、2012年、2013年は上回り、それぞれ同1.9%増となり、飼養頭数の減少を補うとしている。さらに、これまで、生乳クオータを下回っていた加盟国でも、クオータ量まで生産を伸ばすと予測している。 チーズの生産については、2011年は前年比0.2%の増加であったが、今後も微増と見込んでいる。主な輸出先であるロシア向けは、2011年は同0.9%増であったが、今後は減少を予測している。しかし、そのほかの国の輸入需要の増加とともに、新規加盟国であるEU12の消費量の増加により域内需要は伸びることから、2012年、2013年ともに同0.8%増加すると予測している。 2011年の全粉乳生産量は、前年比3.0%の減少であったが、今後も停滞するとの見込みである。一方、脱脂粉乳の生産量は、2011年は同13.0%増であったが、2012年もさらに同4.0%増、2013年は同2.0%増との予測となっている。輸出は、2011年は同37.0%増加であったが、今後2年間も増加が予想されている。引き続き、中国の需要は重要な要因となり、さらに、北アフリカ(アルジェリア、エジプト)向けについてもEUからの輸出の増加の鍵となるとしている。また、2009年に介入により保管されていた脱脂粉乳の大量在庫は、2012年末までには全て解消されると予測している。 バターおよびバターオイルの2011年の生産量は、前年比2.0%増加であったが、2012年は同1.1%増、2013年は同1.0%増と引き続き増加の見込みである。 なお、今回の予測は、需給に大きな影響を与える、経済、為替、天候の状況や、域外の主要輸出国の生産状況などの不確定要素は加味していない。
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