需給動向 海外

◆米 国◆

2011年の米国産豚肉輸出量は過去最高を記録


◇絵でみる需給動向◇


中国、韓国向けが過去最高の豚肉輸出を牽引

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が2月15日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2011年12月の豚肉輸出量(枝肉重量ベース)はアジア向け、特に中国向けの輸出量が増加した結果、前年同期比22.8%増の22万4千トンとなった。

 2011年(1〜12 月)の豚肉輸出量は、前年同期比22.9%増となる過去最高の235万6千トンとなった。輸出先の内訳をみると、輸出量の多い順から、日本、メキシコ、中国、カナダ、韓国となっている。対前年でみると、中国向けが4.3倍、韓国向けが2.1倍と著しい伸びを示しており、これらの国が2011年輸出量の増加に貢献したことは明らかである。

 中国向け輸出の増加は、国内生産の減少により引き起こされた豚肉価格の高騰が主な要因である。中国ではPRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)など家畜の伝染病がまん延しており、豚肉生産の減少につながっている。中国では小規模の庭先農家が豚肉生産の太宗を占めており、疾病対策が不十分といわれている。今後、養豚産業の近代化に伴い大規模化が進めば、PRRSなどによる豚の損失も減少すると見込まれる。しかしながら、当面の間、米国、カナダ等の主要豚肉輸出国が、中国における豚肉需給の調整弁の役割を担うものと考えられる。

 また、韓国については、口蹄疫発生により豚飼養頭数が減少したことが、輸出増の要因となっている。

 このほか、日本の2011年の豚肉輸入量については、カナダ、デンマークからの輸入量が減少する一方で、米国からの輸入量だけが増加した。米ドル安を理由に米国産豚肉の競争力が増したことが要因として考えられる。また、米国産豚肉のメキシコ向け輸出量はほぼ前年同となっているが、メキシコの経済成長が当初の予測より伸び悩んだため、食肉需要が豚肉からより安価な鶏肉にシフトし、米国からの鶏肉輸入が増加したことが主な要因である。

表2 2011年米国産豚肉輸出先上位10カ国
資料:USDA/ERS

2011年の豚肉価格は引き続き堅調か

 過去最高の豚肉輸出量を記録したことから、2011年の豚肉生産量に占める輸出の割合も前年の18.8%を大きく上回る22.8%となった。輸出需要が旺盛ななか、国内需要も堅調であるため、豚肉価格および肥育豚価格は例年を大幅に上回る水準で推移している。2012年2月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー、推測値)は過去3年平均を18.6%上回る100ポンド当たり85.75ドル(キログラム当たり154円:1ドル=82円)となり、肥育豚価格(赤身率51〜52%、推測値)は同25.0%上回る100ポンド当たり63.5ドル(同114円)となった。

 今後の生体豚、豚肉卸売価格の見通しについては、生産が昨年をやや上回ることから弱含む局面もみられると考えられる。しかしながら、食肉小売価格の最近の推移をみると、豚肉より上位価格帯の牛肉、下位価格帯の鶏肉がともに生産減少等を理由に上昇傾向で推移しており、豚肉の小売価格も好調な現在の水準を維持するものと考えられる。このため、今後の豚肉卸売価格および肥育豚価格についても、例年を大幅に上回る現在の水準が継続されるものと推測される。

図5 米国における食肉小売価格の推移
資料:USDA/ERS 
注:小売価格は各品目の小売価格の平均を用いている。

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