国内需要の減少により、と畜頭数は1.6%減少
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2011年の肉用牛と畜頭数は前年比1.6%減の2881万4千頭となった。ブラジルでは、生産量の8割強を国内で消費するため、国内の需要をみながら、と畜頭数を確保している。2011年の牛肉価格は前年から引き続き高止まりが続いたため、安価な鶏肉や豚肉の消費が伸び、牛肉消費が減少した。さらに2005〜2008年に干ばつなどにより繁殖用雌牛のと畜割合が増加し、肥育牛の出荷頭数が減少した。2011年も同様の傾向がみられ、主要生産地域では、乾燥した気候や低温などによって牧草の状態が悪く、去勢牛のと畜重量の減少を補うために、繁殖用雌牛のと畜割合が前年よりも上昇し、33.6%となった。
去勢牛生体価格は2011年11月、1キログラム当たり7.31レアル(1レアル=40円、約292円)となって以降、下落基調にある。例年、ブラジルでは初冬の5月、6月は牧草不足の影響で、と畜頭数が増加し、一時的に供給が増加することから価格の落ち込みがみられる。今年も5月以降、6レアル前半で推移している。
図3 と畜頭数の推移 |
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資料:ブラジル地理統計院(IBGE) |
図4 各年第1四半期のと畜割合の推移 |
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資料:ブラジル地理統計院(IBGE) |
図5 去勢牛生体の国内価格の推移
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資料:サンパウロ州農務局農業経済研究所(CEPEA) |
ロシアの禁輸措置などから2011年の輸出量は13.9%減少
ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2011年の輸出量は前年比13.9%減の81万6277トンとなった。冷蔵は、2011年9月のパラグアイでの口蹄疫発生により、パラグアイ産牛肉の輸出が停止した代替として、チリがパラグアイ産からブラジル産に切り替えたため、輸出が大きく伸びたことなどから、輸出量は同10.2%増の8万8882トンとなった。冷凍は、2011年初めから、主要輸出先のロシアが、衛生問題を理由にブラジル産牛肉を含む食肉の禁輸措置などの影響により、輸出量は同10%減の72万7396トンとなった。
輸出額は前年比7.9%高の41億5755万ドルとなった。これはレアル高に加えて、世界的な牛肉需要の高まりを背景として、国際価格が上昇したためである。
2012年は輸出量が10%増加の見込み
2012年1〜5月の輸出量は、前年同期比2.9%増の33万7391トン、輸出額は同0.5%増の16億4741万ドルとなった。輸出先をみると、冷蔵はチリ向けが同2割増、冷凍はエジプト向けが同1割増、香港向けが同50.0%増と、顕著に増加した。
表2 牛肉輸出量と輸出額(2010年と2011年) |
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資料:ブラジル開発商工省(SECEX)
注:すべて骨なし生鮮牛肉重量 |
表3 牛肉輸出量と輸出額(2011年1〜5月と2012年1〜5月) |
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資料:ブラジル開発商工省(SECEX)
注:すべて骨なし生鮮牛肉重量 |
ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)の報告によると、2012年の輸出はおおむね好調とみている。前年と比べ、輸出量は1割増、輸出額は2割増と見込んでいる。この要因としては、(1)今年に入り、ドル高・レアル安の傾向が強まり、価格優位性が高まったこと、(2)世界的に牛肉需要が大きいこと、(3)肉牛生産の回復に伴い十分な供給量が確保できること―を挙げる。また、特に期待される輸出先は、エジプトやレバノンといったアラブ諸国やベネズエラとしている。
さらに、国際獣疫事務局(OIE)は5月20日、ブラジルの牛海綿状脳症(BSE)ステータスを、「無視できるリスクの国」として認定した。世界的にBSEの清浄化が進む中、今回の認定はブラジルの今後の輸出拡大にとって好条件とみられている。
なお、農務省(MAPA)が5月に発表した長期予測によると、2021/22年度までに牛肉の生産量は現在の32.3%増の1183万トン、国内消費量は27.0%増の923万トン、輸出量は20%増の161万トンと大幅な伸びを示すことが見込まれている。
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