需給動向 海外

◆中国の畜産物需給◆

全脂粉乳の輸入量は1割超減、一方、脱脂粉乳は6割超増


1.搾乳牛頭数及び生産量ともに堅調

米国農務省(USDA)によると、2012年の中国の搾乳牛頭数は、前年比5.0%増の800万頭となる。また、生乳生産量は同5.4%増の3370万5千トンと伸びが見込まれ、その結果、脱脂粉乳が同1.8%増の5万7千トン、全脂粉乳が同5.0%増の115万5千トンといずれも増加の見込みとなる。

 2008年9月、メラミンが生乳に混入した事件などを契機に、牛乳・乳製品に対する安全性が問題視されたが、その後の中国政府による生乳成分の強制規格化や生産農家・乳業メーカーによる品質改善への取組などが消費者に評価されたことを背景に、2009年以降、消費も回復基調にある。このことから、生乳消費量が徐々に増加し、それに伴って搾乳牛頭数も増加してきたものと考える。

 なお、現地報道によると、乳業メーカーによる大型牧場建設が相次いでいることから、生産構造が零細農家からメーカー主体の大規模生産へ移行が進んでいるものと考えられ、更なる品質の安定化が想定される。

表9 中国の生乳需給等の推移
資料: USDA 「China-Peoples Republic of Dairy and Products Annual」
   「China-Peoples Republic of Dairy and Products Semi-annual」
 注:2012年は予測値

2.乳幼児用粉乳小売価格の上昇傾向が継続

 中国商務部によると、中国国内における牛乳の小売価格は2012年以降、1リットル当たり8.87元(115円:1元=13円)から同9.05元(118円)と、小幅の変動はあるものの、ほぼ横ばいで推移している。

 海外ブランドの乳幼児用粉乳の小売価格は、1キログラム当たり191.06元(2,484円)から同194.62元(2,530円)、国内ブランドは、同142.28元(1,850円)から同149.13元(1,939円)の幅で、ともに緩やかながらも上昇の傾向にある。年々、国内産ブランドと海外ブランドの価格差は縮まってきており、今後の価格差次第では、中国国民の乳幼児用粉乳の消費行動に変化が見られる可能性がある。今後、引き続き乳幼児用粉乳の製造コストの上昇を価格に転嫁することができるのか、もしくは、脱脂粉乳の生産量や輸入量の増加が予測されるなか、牛乳と同様、徐々に安定していく傾向となるのか、メーカーの動向や粉乳などの輸入量などに注目する必要がある。
図14 牛乳の小売市場価格の推移(月別)
資料:中国商務部
図15 乳幼児用粉乳の小売市場価格の推移(月別)
資料:中国商務部

3.ニュージーランド産乳製品の今後の動向に注目

 2012年1〜5月における脱脂粉乳の輸入量は、前年同期比65.0%増の9万3142トンと大幅に増加した。内訳を見ると、ニュージーランド(以下、「NZ」という。)が同72.0%増の6万1072トン(シェア65.6%)となり、全体の輸入量を底上げした。ドイツとフランスもそれぞれ同3.3倍、同4.7倍と大きく増加し、米国や豪州と並ぶ勢いである。USDAによると、2012年の脱脂粉乳の生産量は、前年比1.8%増とほぼ横ばいが見込まれることから、脱脂粉乳の輸入量の増加が消費量の増加を表しているものと考えられる。今後も消費量の増加に符合して輸入量が増加する場合、国際市場への影響も考えられるため、今後の消費動向を注目する必要がある。

 全脂粉乳の輸入量(1〜5月)は、前年同期比13.1%減の18万4263トンと大きく減少した。内訳を見ると、全体的に減少傾向にある中、全脂粉乳の輸入量合計の96.3%を占めるNZは同9.4%の減少にとどまったのに対し、豪州は同88.6%の大幅な減少となった。USDAによると、全脂粉乳の生産量(2012年)は、前年比5万5千トン増と見込まれることから、国内産の増産に相反する形で、昨年に続き2012年も輸入量が前年割れとなるのか注目される。

 バターの輸入量(1〜5月)は、前年同期比30.6%増の1万2049トンと大幅に増加し、そのうち、NZ産については、同37.4%増加し、バターの輸入量合計の87.3%を占めた。

 このように、2008年4月のFTA(※)締結を背景に、NZは乳製品の主要輸入先国となっているが、輸入品目が全脂粉乳の減少と脱脂粉乳の増加という形で変化してきている。今後もこの変化が強まっていくのか、国際市場の動向と併せて注視していく必要がある。

 また、ホエイの輸入量(1〜5月)は、同34.6%増の15万3351トンと大幅に増加している。2011年8月以降は、月間輸入量が3万トン前後で推移していることから、2012年の輸入量については、昨年を上回ることも想定される。そのうち、アルゼンチン産は、同167.5%増と大幅に増加しており、今後の同国からの輸入量についても併せて注目したい。

※2012年の関税率は、5.8%(脱脂粉乳および全脂粉乳)、5.0%(バター)など。当初は10.0%以上であったが、締結時の2008年以降、段階的(毎年)に削減され、バターは2017年に、脱脂粉乳および全脂粉乳は2019年にそれぞれ無税となる。
表10 脱脂粉乳の国別輸入量
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
 注:HSコード040210
表11 全脂粉乳の国別輸入量
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
 注:HSコード040221,29
表12 バターの国別輸入量
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
 注:HSコード040510
表13 ホエイの国別輸入量
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
 注:HSコード040410

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