需給動向 海外

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生乳価格下落継続


◇絵でみる需給動向◇


 LTO(オランダ農業園芸組織連合会)によると、域内主要乳業メーカー17社の5月の平均生乳価格は、前年比6.5%安の100キログラム当たり31.38ユーロ(3,138円:1ユーロ=100円)となり、2011年11月以降7カ月間下落が継続したことが明らかになった。

 主要乳業メーカーの価格をみると、アラアフーズ(デンマーク)は、対前月0.4ユーロ安の100キログラム当たり31.82ユーロ(3,182円)、更に7月に0.8ユーロ安を予定、ミコベル(ベルギー)は1.0ユーロ安の28.50ユーロ(2,850円)、フリースランド・カンピナ(オランダ)は1.0ユーロ安の29.56ユーロ(2,956円)となった。主要乳業メーカーの5月の生乳価格は前年と比べると英国以外のほぼ全ての加盟国で下落している。英国だけ値上がりしているのは、ユーロ換算した場合の上昇であり、ポンドでは下落している。他国と同様に英国でも生乳価格の下落は深刻で6月にファーストミルクで1.5ユーロ安、デイリークレストも7月に1.0ユーロ安を予定している。

 ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、生乳価格の下落要因は、生乳生産量の増加としている。生乳価格の下落を受けて、2012年3月まで月平均で前年比2.3%増で推移していた生乳生産増加率は、4月に入り2.1%増と低下したが、依然として増産が継続しているのに加えて需要が少なかったため下落傾向が継続したとしている。

図10 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
 注:域内主要乳業17社の平均値
図11 EU主要乳業メーカーの対前年比乳価割合(5月)
資料:LTO

バター価格さらに下げる

 ZMBによると、5月のバター価格は前年比39%安の100キログラム当たり242ユーロ(24,200円)となり、2011年9月以降の下落に歯止めがかからない。この要因は、生乳の増産に伴うバター供給増である。2012年1月から3月のバター生産量は、EU全体で前年比6.0%増の51万2600トンとなった。

 また、民間在庫量も低価格により積み上がっている状態で、7月1日までに10万トンを超えた。これは、過去3年のうちで最も高い水準である。ただし、生乳生産のピークの5月まで静観していた実需者に、6月以降動きが出てきており、今後バター価格は上昇することが見込まれる。しかし、民間在庫量が高水準であるため、価格上昇は限定的で秋以降の価格低下が懸念されている。
図12 バター卸売価格の推移
資料:ZMB
図13 EUにおけるバター民間在庫量

資料:EUCOLAIT

欧州議会前で生産者団体が抗議活動を実施

 EU14カ国19組織の生産者団体で構成されるEMB (the European Milk Board)は、7月10日、ブリュッセルの欧州議会前で現在の乳価低迷に対する抗議活動を行った。

 EMBは「需要と供給のバランスを回復する手段として、自主的な供給規制と欧州監視機関の設置による具体的な施策と実施」を求めた。また、「2015年の生乳クオータ廃止に向けて欧州委員会が提案している『ソフトランディング』は、我々を墜落させようとしている。現在の状況を改善するために、欧州議会は、短期の自主的な生産調整による生産制限および安定した市場確保のための建設的な新たな規則案を欧州委員会に提出すべきである。」とのコメントを出している。

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