需給動向 海外

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ユーロ安の後押しを受けた好調な域外輸出により、
豚枝肉価格は高騰


◇絵でみる需給動向◇


6月の豚枝肉卸売価格、前年同月比7.9%高

 欧州委員会によると、EU域内における6月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり167.83ユーロ(1万6783円、1ユーロ=100円)と前月から3.1%上昇し、前年同月と比べ7.9%高となった。ユーロ安による国際競争力の向上と、ロシアおよび中国を中心とした堅調な需要により、好調な輸出が続いていることが枝肉価格を引き上げたものと考えられる。

図6 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

EU域内の肉豚と畜頭数が鈍化

 英国の農業・園芸委員会(AHDB)によると、2012年第1四半期(2012年1月〜3月)のEU域内の肉豚と畜頭数は、前年同期比1%の減少となった。各月を前年と比較すると、3月のと畜頭数が少なく、1月、2月が多い傾向にあった。

 主要な豚肉生産国のうち、と畜頭数が増加したのは、スペイン、イタリア、英国のみであり、中でもスペインは同5%上昇した。オランダでは、子豚、肥育豚ともに生体輸出が低調であったが、と畜頭数は3月に同7%減少、第1四半期では同3%の減少となった。対照的に、デンマークは各月とも減少傾向が続き、第1四半期では同5%の減少となった。これは、昨年終盤の子豚輸出増加が要因となっているものと考えられる。また、EU最大の豚肉生産国であるドイツでは、と畜頭数の減少はわずかであったが、同12%増となる120万頭の肥育豚を輸入した。この要因として、ドイツ国内における肉豚の出荷可能頭数が減少していることが考えられる。

 なお、欧州統計局の公表値から推計される2012年の豚肉生産量は、繁殖母豚頭数が減少したものの、生産性の向上により昨年度と同程度に達すると見込まれているが、EU指令2008/120/ECに基づき、2013年1月1日から実施される母豚ストール飼育の禁止への対応などの不確定要素が残されており、留意が必要であるとしている。

堅調な価格と輸出により、安定した生産が継続するとの見通し

 欧州家畜食肉取引業者連合(UECBV)は、EU27カ国における養豚について、今後の見通しを公表した。

 UECBVは2012年の見通しとして、EU域内の養豚に関し、(1)わずかに減少するものの安定した生産を維持、(2)2011年時点の予測よりも高い枝肉価格で推移、(3)好調な豚肉の域外輸出の継続、(4)飼料コスト増加への懸念、(5)わずかではあるが黒字経営を維持、(6)母豚に適用されるアニマルウェルフェア規制の遵守が生産量と農場規模に影響、の6項目を指摘している。

 詳細をみると、安定した生産、力強い国際需要とともに、民間在庫補助制度の対象となっている豚肉在庫が存在しないこともあり、2012年の豚枝肉価格はさらに上昇するとみている。しかし、飼料原料の農外利用の増加と大豆価格の高止まり傾向を受け、飼料価格が高騰すると予測しており、豚枝肉価格が上昇しても、飼料コストについては十分に注意する必要があるとしている。

 【「民間在庫補助制度」については、平成23年1月25日付海外情報(http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_000305.html)参照】

 EU域外への輸出については、輸出先のうち、豪州とウクライナを除き、全ての輸出先が好調であり、特に中国、韓国、ロシアが輸出をけん引するとみている。この予測について、専門家によっては、2011年と同程度の輸出が続くかどうか不確定な要素もあるとの指摘もあるが、1月、2月の輸出実績が前年同期比で17%増加したことは、国際的な需要が底堅く推移している証拠であると結ばれている。

 一方、AHDBもEU域内の豚肉需給に関し、今後の見通しを公表した。

 AHDBは、2012年の豚肉生産量を前年比1〜2%程度の減少と予測している。要因として、豚枝肉価格は好調であるが、ユーロ圏の経済不安と飼料価格の高騰、さらには母豚ストール飼育の禁止などアニマルウェルフェア規制の強化をあげている。

 輸出については、UECBV同様に堅調であるとの見通しを立てており、特にドイツの輸出が増加すると見込んでいる。2012年第1四半期において、ドイツはEU域外向けの輸出が最も多いデンマークの輸出量を上回っており、今後もこの勢いは続くとみている。

 ただし、EU域内市場については、不景気の影響を受けて消費が落ち込むことを予測しており、個人消費は2013年まで回復が難しいとしている。

 なお、両者ともに不安定要因として取り上げている飼料価格は、現在、次のようになっている。

 欧州委員会の統計によると、豚用の配合飼料価格は2011年4月をピークに減少傾向にあったが、2012年2月から上昇に転じており、4月には前年同月比4.4%安のトン当たり279.95ユーロ(2万7995円)となっている。今後、米国のコーンベルト地帯の干ばつにより、穀物相場の高騰が予想されており、飼料価格の上昇が養豚経営を圧迫する要因になると懸念される。
図7 EUにおける豚用飼料価格の推移
資料:欧州委員会


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