【要約】
近年の加工乳、乳飲料、はっ酵乳及び生クリーム等の消費は、年度に応じてさまざまな需要動向をみせており、普通牛乳の消費にも大きな影響を与えている。当機構では、これら乳製品の需給を的確に把握するため、加工乳・乳飲料等の生産実態調査を行っているが、今般、平成22年度の調査結果を取りまとめたので、その概要を紹介する。
調査結果の概要
本調査は、「加工乳」、「乳飲料注1」、「はっ酵乳」、「生クリーム等(「クリーム」及び「乳等を主要原料とする食品」をいう。)」の4品目について、郵送・電子媒体等を利用してアイテムごとの成分、生産量などを調べたものである。調査対象は加工乳・乳飲料等を製造している全国145の企業であり、有効回答は90社、回収状況は66.7%であった。
今回の調査において見られた特徴的な結果としては、
・大手3社注2による加工乳の生産量増加
・加工乳、はっ酵乳の原材料に占める生乳割合の低下
・非乳業系によるはっ酵乳の生産量増加
などが挙げられる。
注1 乳飲料は、大きく分けると、牛乳をベースとして牛乳の栄養分や風味をそのままにカルシウムや鉄、ビタミン、ミネラルなどの栄養分を強化した「白物乳飲料」と、コーヒーや果汁などの入った色のついている「色物乳飲料」がある。本調査では、風味にかかわらず、白いものを「白物乳飲料」、色のついているものを「色物乳飲料」に区分している。
注2 本調査の企業区分は次のとおりである。「大手3社」は明治、森永乳業、雪印メグミルクをいう。「農プラ系」は、主に酪農生産者団体が出資する乳業会社のことであり、「中小系」は大手3社・農プラ系を除いたその他の乳業会社をいう。
1.生産量と割合
(1)加工乳・乳飲料
加工乳では、平成21年度から大手3社のシェアが拡大し、特に乳脂肪率が2.5%以上、3.0%未満のタイプの生産量が大きく増加した。農プラ系、中小系は生産量が低下したものの、中小系は32.8%と一定のシェアを占めている。
乳飲料では、色物乳飲料と白物乳飲料ともに大手3社のシェアが高く、平成21年度と比較して同程度、もしくは増加傾向であった(図1)。また、農プラ系においても、生産量は増加した。
図1 加工乳・乳飲料の生産シェア(平成22年度) |
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(2)はっ酵乳
はっ酵乳注3の生産量は、ハードタイプは減少したものの、ドリンクタイプの増加が顕著で、ソフトタイプ、プレーンタイプも微増し、全体の生産量としては増加した。
生産量におけるシェアは、乳業系注4が83.8%を占め、平成21年度から3.2ポイント減少した。種類別では、乳業系ではソフトタイプ、フローズンタイプが微増となり、非乳業系ではハードタイプ、ドリンクタイプが増加した(図2)。
注3 はっ酵乳の区分は、「ハード」は寒天やゼラチン等で固形化したもの、「ソフト」は果肉等を加えた流動性のあるもの、「プレーン」は牛乳・乳製品をはっ酵させただけのもの、「ドリンク」はプレーンヨーグルトを液状化したもの、「フローズン等」はフローズンヨーグルトや上記以外のもの。
注4 本調査では、牛乳処理施設を持っている会社を乳業系、牛乳処理施設を持っていない会社を非乳業系とする。
図2 はっ酵乳の生産シェア(平成22年度) |
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(3)生クリーム等
生クリーム等の生産量は、平成21年度と比較して、製品の乳脂肪率にかかわらず一様に減少した。
生産量におけるシェアは、乳業系が平成21年度から4.8ポイント上昇し93.0%を占めた。種類別では、乳脂肪率が18%以上の製品は、乳業系が平成21年度から0.6ポイント減少し98.4%、乳脂肪率が18%未満の製品は、6.7ポイント上昇し73.3%を占めた(図3)。
図3 生クリーム等の生産シェア(平成22年度) |
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2.製品の乳成分割合
加工乳・乳飲料
「低脂肪」タイプの加工乳における乳成分の平均は、乳脂肪率0.9%、無脂乳固形分率9.0%、「濃厚」タイプの平均は、乳脂肪率4.3%、無脂乳固形分率8.8%であった。「その他」(「低脂肪」「濃厚」タイプ以外のもの)の平均は、乳脂肪率3.2%、無脂乳固形分率8.6%であった(図4)。
図4 加工乳の成分(平成22年度) |
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「加工乳」と「白物乳飲料」の成分を、企業区分別で比較すると、中小系、農プラ系と大手3社とで傾向に違いが見られた。中小系、農プラ系については、「加工乳」(平均)の無脂乳固形分率が「白物乳飲料」と比べて1%程度高いものの、乳脂肪率では顕著な差が見られなかった。一方、大手3社については「加工乳」(平均)の乳脂肪率が高く、無脂乳固形分率が「白物乳飲料」と比べてやや低いという結果になった(図5)。
図5 白物乳飲料と加工乳(平均)の成分割合(平成22年度) |
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3.乳脂肪率ごとの生産量
(1)加工乳
乳脂肪率ごとに生産量を見ると、「低脂肪」タイプと「濃厚」タイプは減少、「その他」タイプの製品は増加しており、「その他」タイプの製品が全体の生産量の51.8%を占めた。大手3社において、平成21年度と比べ「低脂肪」タイプが減り、2.5〜3.0%のタイプが大きく増加したことがその要因として挙げられる。農プラ系、中小系の生産量では「低脂肪」タイプの割合が大きいものの、その数量自体は平成21年度と比べ減少した(図6)。
原材料使用割合の推移を見ると、平成21年度まで生乳の使用割合は横ばいの傾向であったが、平成22年度は22.0%と使用割合が減少した(図7)。加工乳の生産量は、おおむね横ばいの傾向であった。
図6 乳脂肪率ごとの生産量(加工乳・平成22年度) |
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図7 原材料使用割合の推移(加工乳) |
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(2)乳飲料
乳飲料全体では、乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が全体の41.3%を占め、主力となっている。同区分の製品は、「色物乳飲料」では全体の生産量の48.6%を占めており、 「白物乳飲料」では、全体の生産量の33.1%を占めた。
企業区分別に見ると、「白物乳飲料」では、大手3社では、乳脂肪率1.5〜2.0%の製品が、また、農プラ系及び中小系では、乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が主力となっている(図8)。
「白物乳飲料」の原材料使用割合の推移を見ると、昨年度より増加傾向にあった生乳がさらに5.8ポイント増加した(図9)。
乳飲料の生産量は、大手3社、農プラ系、中小系で、「色物乳飲料」のコーヒータイプがそれぞれ46.5%、21.1%、27.9%を占めた。
図8 乳脂肪率ごとの生産量(白物乳飲料・平成22年度) |
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図9 原材料使用割合の推移(白物乳飲料) |
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(3)はっ酵乳
乳脂肪率別の生産量は、乳脂肪率0.5%未満の製品が全体の24.6%と最も多く、特に非乳業系においては45.5%を占めた。タイプ別に見ると、ドリンクタイプの製品では、乳脂肪率が1.0%未満のものが多く、ソフトタイプでは0.5%未満のものと2.0〜2.5%のもの、プレーンタイプでは3.0〜3.5%のものに集中している(図10)。
はっ酵乳の生産量は、平成21年度と比較して5.9%増加しており、特にドリンクタイプは25.5%と大きく増加した。
はっ酵乳は、消費者の健康志向の高まりなどを背景として、今後一層の市場拡大が期待されている。
図10 乳脂肪率ごとの生産量(はっ酵乳・平成22年度) |
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(4)生クリーム等
乳脂肪率ごとの生産量を見ると、乳脂肪率18%以上の製品では、42.0〜48.0%の割合が最も高く、全体の生産量の45.3%を占めた(図11)。乳脂肪率18%未満の製品では、乳脂肪率0%の製品(植物油脂を使用した製品等)が66.7%を占める結果となった。
生クリーム等は、コンビニでのデザート類の市場拡大を背景として増加する傾向がうかがえる。
図11 乳脂肪率ごとの生産量(生クリーム等(F)18%以上)・平成22年度) |
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