2012年の牛肉生産量は前年を2.3%下回る見込み
2012年、米国は70年に一度とも言われる干ばつに見舞われ、肉牛産業は2年連続で干ばつの影響を受けることとなった。2011年の干ばつはテキサス州など米国最大の肉牛繁殖地域を中心に発生し、2012年はコーンベルト地帯を中心に全米で発生した。米国の牛飼養頭数(2012年7月1日現在、9780万頭)は、牛飼養動向調査「Cattle」(米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS))においてデータが確認できる1973年以降最低となっており、今年の干ばつの影響により今後も減少することが予想される。
繁殖経営を見ると、2011年の干ばつでは、放牧地の牧草生産量が減少したため、テキサス州などでは、粗飼料の購入や干ばつの影響が少ない州への牛群の移動を強いられた。2012年は干ばつ被害が米国全体に拡大したことで、この様な動きが全国で進行したとみられる。しかしながら、これらの対応が困難な場合は、フィードロットへの子牛の早期出荷や高齢の雌牛を中心にと畜するなどの対応もとられている。
また、フィードロット経営では、トウモロコシのエタノール蒸留かす(DDGS)や麦稈などを利用し、飼料コスト上昇を抑える努力が続けられている。関係者によると、肥育素牛価格と穀物価格の高騰により、フィードロットの経営は厳しい状況にあり、1頭当たり150ドルの赤字が発生しているケースもあるという。
改良などにより1頭当たり枝肉重量は増加傾向で推移しているものの、干ばつの影響もあり牛飼養頭数が減少していることから牛肉生産量の減少が続くものとみられており、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が10月17日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」においても、2012年の牛肉生産量は前年比2.3%減、2013年は同3.8%減になると予想されている。
図1 牛肉生産量の推移 |
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資料:USDA/ERS「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」
注1:2012年第4四半期、2013年第1〜第3四半期は予測
注2:2013年第4四半期は公表データより推計
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肥育素牛の減少により、肥育素牛価格は前年を上回って推移
繁殖雌牛の飼養頭数の減少により、肥育素牛の供給が不足している。肥育素牛価格は前年を上回る水準で推移しており、2012年10月の価格は前年同月比4.4%高の100ポンド当たり148.4ドル(キログラム当たり267円:1米ドル=81円)となった。また、と畜頭数の減少の影響を受けて、肥育牛価格は同3.8%高の100ポンド当たり125.8ドル(同226円)となった。さらに、牛肉卸売価格(チョイス級、600〜900ポンド、カットアウトバリュー)も、同4.6%高の100ポンド当たり193.9ドル(同349円)と、前年を上回る状況が続いている。繁殖雌牛飼養頭数回復のためには、干ばつの解消が第一の条件となるが、仮に今後天候が良好に推移したとしても、飼養頭数が増加に転じるまで長期間を要すると見込まれるため、今後も肥育素牛価格は高値で推移するとみられる。
図2 米国の肥育素牛価格の推移(1〜10月) |
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資料:USDA/ERS 「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」 |
1〜8月の牛肉輸出量は前年割れする一方、日本などアジア向けは増加傾向
ERSによると、2012年1〜8月の牛肉輸出量(枝肉重量ベース)は、前年同期比12.2%減の74万3700トンとなった。国別の輸出量を見ると、主要輸出先であるNAFTAで減少した一方、韓国を除くアジア向けなどで増加した。アジア向けをみると、最も増加率が大きかったベトナム向けは前年同期比34.1%増、香港向けは同8.9%増となった。
また、日本は2011年の輸出先国1位、2位であったメキシコ、カナダを抜き、2012年同期では第1位の輸出先国となった。日本向けは、前年同期を3.0%上回る14万6000トンとなり、輸出量全体に占める日本向けのシェアは20%となり、前年の17%を上回った。これは、米ドル安による米国輸出のインセンティブの高まりや、豪州ドル高による豪州の日本向け牛肉輸出量が減少したことなどが要因であると考えられる。
図3 日本への牛肉輸出量の推移(1〜8月) |
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資料:USDA/ERS 「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」 |
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