平成24年度上半期の国内における鶏肉需給は、順調な生産の回復と高水準の在庫量から供給過剰の状態が続き、それに見合う大幅な需要増加もみられなかった。この結果、卸売価格は低水準のまま推移した。
財務省「貿易統計」によると、平成24年度上半期の鶏肉輸入量は、前年同期比13.8%減の21万4350トンであった。輸入相手国別に見ると、シェアが大きいブラジル産が19万3695トン(前年同期比11.3%減)、米国産が1万6353トン(同28.5%減)と、ともに前年を大きく下回った(図4)。一昨年度の同期実績と比較すると、いずれも5%以内の差にとどまることから、この減少の主な要因は、昨年発生した東日本大震災の影響により大幅に輸入量が増加した反動であると考えられる。ただし、ブラジル産に関しては、7月以降、飼料用穀物価格の高止まりによって現地価格が上昇傾向にあることも、輸入量の減少につながっているとみられる。
図4 国別鶏肉輸入量の推移
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資料:財務省「貿易統計」 |
一方、鶏肉調製品輸入量の上半期累計は22万3855トン(同1.8%増)であり、東日本大震災発生前年の平成22年度上半期と比較すると、およそ2.3倍となった(図5)。震災発生後の代替需要が落ち着いた後も、外食・中食産業などからの高い需要があるものと考えられる。
図5 鶏肉調製品輸入量の推移
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資料:財務省「貿易統計」 |
国内生産量は、平成23年度上半期は東日本大震災の被害により落ち込んだが、その後、順調に回復した結果、今年度上半期は一昨年度と同程度となった。
平成24年度上半期の在庫量は、昨年度下半期に続いて増加傾向で推移し、今年7、8月末には平成21年2月以来の16万トン台となった。特に、国産品在庫の積み増しが著しく、5、6、8月の各月末には、平成23年度以前には見られなかった4万トン台まで積み上がった。
9月以降、需給バランスに変化の兆し
こうした供給状況を背景に、鶏肉卸売価格は平成23年度下半期以降、低迷が続いていたが、生産量および輸入量が、ともに7月以降は減少傾向となり、また9月下旬以降は秋の行楽需要などにより引き合いも強まってきたため、回復の兆しがみえ始めた。9月末現在での推定在庫量も15万3832トン(前年同月11.5%増)と、依然として前年同月をかなり大きく上回っているものの、前月と比較して約6,900トンの取り崩しが進んだ(図6)。今後の動向は、気温の低下がどの程度進むかによっても左右されるが、12月の最需要期に向けて引き合いは一層強まることが予想される。また、一般社団法人日本食鳥協会が実施している「生産・処理動向調査」によると、年内のひな出荷羽数は前年実績を下回る見通しである。こうしたことから、国内における鶏肉の需給バランスは徐々に改善されていくものと思われる。
図6 鶏肉生産量および在庫量の推移
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資料:平成23年12月以前の生産量は農林水産省「食鳥流通統計」、
平成24年1月以降の生産量および在庫量は農畜産業振興機構調べ |
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