減産傾向の鶏肉生産量、2012年上半期は3年ぶりに前年同期を下回る
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2012年上半期のブロイラー生産量は前年同期比1.7%減の837万6000トンとなり、3年ぶりに前年同期を割り込んだ。月別にみると、前年同月比で増減はあったものの、3月に同8.0%減となったことなどが響き、上半期全体では減少となった。なお、直近の8月の生産量は、同0.6%減の150万4000トンとなり、減産傾向が続いている。
米国鶏肉・鶏卵輸出協会(USAPEEC)は、鶏肉生産が減少している理由として、国内の景気後退やトウモロコシのエタノール向け需要の増加に加え、今年発生した干ばつの影響によるトウモロコシをはじめとする飼料穀物価格の高騰をあげている。一方、鶏肉加工や輸出分野は、過去数年間は堅調な鶏肉価格や安価な食肉を好む消費者の購買意欲に支えられてきたが、今後、生産費の高騰分が販売価格に転嫁されなければ、ブロイラー産業に関わる経営全体が厳しさを増すと懸念される。
表3 ブロイラー生産量の推移(可食処理ベース)
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資料:USDA/ERS, NASS
注:2012年第1〜3四半期は実績値。第4四半期は推測値。
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生産費上昇によりブロイラー経営を圧迫
干ばつの影響による飼料穀物価格の高騰が、ブロイラー生産費の約7割を占める飼料費を押し上げている。全米鶏肉協議会(NCC)によると、飼料穀物価格が高騰し始めた今年の7月のブロイラー生産費は、1キログラム当たり101.28セント(82円、1米ドル=81円)であり、うち飼料費が同69.12セント(56円)であった。しかしながら、9月になると飼料費が同88セント(71円)を超えたため、生産費が同110セント(89円)程度まで上昇した。この結果、卸売までにかかるコストも7月時点では同193.50セント(157円)だったものが、9月には同216〜218セント(175〜177円)まで高騰した。7月および9月の生産者生体販売価格はともに同108.0セント(87円)、ブロイラー卸売価格(12都市平均丸どり価格)はそれぞれ同182.1セント(148円)、187.8セント(152円)となったため、生産者、卸売業者ともに短期的な赤字に陥っている。
ブロイラー生産は、トウモロコシの主要生産州内に分布しているフィードロット(肉牛肥育)や養豚と異なり、南部と東部に多いため、トウモロコシ価格に輸送費が上乗せされ、トウモロコシの購入価格は割高になる。USAPEECによると、主要ブロイラー生産州の1つであるジョージア州のブロイラー経営は、中西部のトウモロコシを購入する際に、輸送費として1ブッシェル当たり40〜50セント(32〜41円)上乗せされているという。
ブロイラーは飼料の中でもトウモロコシの利用割合が高いため、今後飼料価格の高騰分を販売価格に転嫁できるかどうかが、ブロイラー生産にとっては極めて重要である。しかしながら、その転嫁によって小売価格の上昇が長引けば、需要が縮小する可能性があり、中長期的にはブロイラー産業の衰退につながる恐れがある。
表4 ブロイラー生産費内訳(2012年7月)
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資料:NCC
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生産費上昇分の小売価格への転嫁に向けた動き
NCCによると、生産費上昇に伴い、生産者や卸売業者は、小売業者に対して生産費上昇分を消費者に負担してもらうよう交渉を始めている。また、飼料費の変動分を価格に反映させるという特約付きの弾力的な契約を3〜6カ月の期間で締結する動きもある。ただ、一方で、既に販売計画の縮小を発表する大手小売企業もあり、飼料穀物価格高騰への対応は二極化しているともいえる。
なお、今後の生産量見込みについて、ERSは、2013年は飼料価格高騰が和らぐとの予測から前年比0.8%減の1652万トンと見込んでいるが、NCCは、飼料価格高騰の影響をより深刻にとらえており、同3%減以下にまで落ち込むとみている。トウモロコシ価格の高騰によりブロイラー生産量が減少すると、結果として、トウモロコシの需要量が減少することになり、トウモロコシの需給が緩むという見方もあることから、今後のブロイラーの生産動向が注目される。
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