需給動向 海外

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生乳生産が前年下回り生乳価格続伸


◇絵でみる需給動向◇

 LTO(オランダ農業園芸組織連合会)によると、域内主要乳業メーカー17社の9月の平均生乳価格は100キログラム当たり前年同月比7.9%安の33.30ユーロ(3,497円:1ユーロ=105円)となり、最安値をつけた5月以降6カ月連続で上昇した。

 ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、生乳価格の上昇は、12月の乳製品需要期に向けて引き合いが強まったことに加え、生乳生産が減少に転じたためとしている。また、今後、乳価は引き続き堅調に推移するが、各国によって動向は異なると予測している。

 生乳生産量は、7月に引き続き8月も前年比1.1%減となり2カ月連続の減産となった。生乳生産量は、先進加盟国のフランス(前年比3.3%減)、ドイツ(同1.0%減)、英国(同3.9%減)で減少しているが、後進加盟国のポーランド(同4.9%増)、ハンガリー(同3.8%増)、バルト三国(同3.2%増)では増加している。

図14 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
 注:域内主要乳業17社の平均値
図15 EU27大豆かす輸入単価の推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
 注:HSコード2304
 減産要因は、欧州の一部地域での天候不順、年初から5月まで乳価が低調であったこと、飼料高による生産コスト増などである。欧州は、飼料穀物として小麦、大麦を主に利用しているが、タンパク源には大豆かすを利用しており、大豆かすは輸入に依存している。米国の干ばつによる穀物価格高騰は、依然として高水準で推移しており、酪農における生産コストを上昇させている。このような状況下で、大豆かすの代替としてアブラナ、ヒマワリ、麻、ビール粕などが利用され始めているものの、全てを代替することは難しいとみられている。

 ZMB は、生産コストの上昇、取引の太宗を占める長期契約の生乳価格低迷により、生乳生産による収益は前年より悪化していると述べている。

バター価格上昇、市場活発化

 ZMBによると、9月のバター価格(100キログラム当たり)は319ユーロ(33,495円)と、前年より下回っているものの、前月(282ユーロ(29,610円))からは大幅に上昇し、2012年初めの価格下落前の水準に近付いてきている。

 これは、バター生産量が7月以降減産基調となったこと、業務用バターの引き合いが強まったこと、夏の低価格が輸出を促進させたことなどが要因である。

 乳製品生産の動向は、当初、バター、チーズ、脱脂粉乳の生産量が大幅に増加、全粉乳の生産量が減少で推移したものの、価格の低迷などの影響により7月のバター生産量は前年比3.8%減、脱脂粉乳は同2.4%減となった。一方、チーズは依然として増産しており、同3.9%増となっている。また、クリーム及びコンデンスミルクも増加している。全粉乳は、中国の旺盛な需要に対して、EU産はニュージーランド産および米国産と比べて価格競争力が乏しく、輸出が伸びなかったため生産量は減少した。

 過去3年間で最多であった民間在庫は、バター価格が好調であることや、バターが減産に転じたこと、域内需要が旺盛なことなどにより順調に市場に放出され、13万トンを超えた在庫量は10月末時点で7万トンまで減少した。

 ZMBは、バター価格の今後の動向として、生産量の抑制に加え、最も需要が多いクリスマスシーズンを間近に控えて価格は高水準になると予測している。また、現時点で2013年の動向を予測することは難しいとコメントしている。
図16 バター卸売価格の推移

資料:ZMB
図17 EUにおけるバター民間在庫量の推移

資料:Eucolait


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