需給動向 海外

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中国、韓国向け中心に域外輸出が大幅増加


◇絵でみる需給動向◇


2011年1〜10月の域外輸出量、前年同期比21%増

 欧州委員会によると、EUの2011年1〜10月における豚肉輸出量(生体、内臓肉などを含む)は266万4007トン(製品重量ベース、前年同期比21%増)と、前年同期を大幅に上回っている。これは、ユーロの為替レート低下などにより、EUと主要豚肉輸出国である米国、カナダ、ブラジルなどとの価格差が縮小し、EU産の競争力が高まったためとみられる。

 中でも、中国および韓国向け輸出が大幅に増加し、それぞれ77万7568トン(前年同期比55%増、香港向けを含む)、17万45トン(同108%増)となった。中国では、2010年前半の豚肉価格低迷や口蹄疫などの家畜疾病により飼養頭数が減少し、生産も減少した一方、消費は堅調であったことから豚肉価格が高騰し、輸入需要が増加した。また、最近の特徴として、従来中国向け輸出の大半を占めていた安価な内臓肉のほか、冷蔵・冷凍豚肉の輸出も増加していることが挙げられる。一方、韓国では2010年11月に発生した口蹄疫の影響により豚肉需給がひっ迫し、EU産の輸入が前年の2倍以上に増加した。ロシアや日本などそのほかの輸出先も全体的に増加傾向となっている。唯一ウクライナ向けは減少し、前年を大幅に下回る9万4082トン(同18%減)となった。これは、同国が国内生産の増加に取り組んだ影響と考えられる。

表4 域外向け豚肉輸出量(1〜10月)
(トン、製品重量ベース)
資料:欧州委員会
図5 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

 好調な域外輸出を反映し、2011年においてEUの豚枝肉卸売価格は一貫して前年を上回って推移している。2011年12月の平均価格は100キログラム当たり159.34ユーロ(約16,252円、1ユーロ=102円)と、前年同月と比べ14.3%高となった。

2012年の豚肉輸出量は前年比5%減の見通し

 現地調査会社のGiraによると、2011年5、6月時点におけるEUの母豚頭数は前年同月比3.5%減の1347万頭となった。母豚頭数の減少は、2010年後半以降の飼料価格高騰による養豚経営の収益性低下が要因とみられている。また、アニマルウェルフェアの規則強化により、2013年1月1日以降、母豚のストール飼育が禁止されることも減少の要因として指摘されている。母豚頭数は減少しているものの、1母豚当たりの年間出生頭数の増加など生産性の向上により、総飼養頭数は前年並みの1億4766万頭(前年比0.8%減)となった。これを受け、2012年のEUにおけると畜頭数は同1.4%減と予測されている。一方、消費量は同1.0%減の見通しとなっている。

 このように、2012年におけるEUのと畜頭数(豚肉生産量)および消費量は前年から1%程度の減少が見込まれているのに対し、輸出量の減少率はこれを上回る前年比5%減と予測されている。Giraは輸出減少の要因として、2011年にEUの豚肉輸出をけん引している韓国で口蹄疫の影響が薄れ、2012年の輸入需要は平年並みに戻るとみられること、また米国などほかの豚肉輸出国との間で、中国向け輸出の競争が激化すると予測されることを挙げている。


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