需給動向 海外

◆米 国◆

減産を加速する米国ブロイラー生産者

◇絵でみる需給動向◇


2011年の鶏肉生産量を下方修正

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が公表した「Broiler Hatchery」によると、米国の主要19州におけるブロイラー向けひなの週間導入羽数は、6月以降は前年同月を下回る水準で推移しており、直近の4週(10/30〜11/25)平均では前年同期を7.0%下回っている。

 また、同局が公表した「Poultry Slaughter」によると、ブロイラーの処理羽数は7月以降前年同月を下回っているが、平均出荷体重は2011年1〜10月では前年同期を2.2%上回るなど増加傾向で推移している。7月以降の処理羽数の減少を反映して、2011年上半期の鶏肉生産量は前年同期を4.8%上回ったが、7〜10月の4カ月では同0.5%下回っている。これは、飼料価格が高値で推移する中、生産者生体販売価格が低調であるため、生産者が生産を抑えた。価格が改善するまでは低調な状況は継続するものと考えられる。

図8 ブロイラー向けひな週間導入羽数と前年比
資料:USDA/NASS「Broiler Hatchery」

 同省経済調査局(USDA/ERS)が11月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2011年の生産量は、前月の予測から1万1千トン下方修正して前年を1.1%上回る1692万7千トンと予測している。2012年の生産量については前年を1.7%下回る1664万7千トンと予測している。

国内需要は不調の一方、輸出は好調

 USDA/NASSが11月22日に公表した「Cold Storage」からブロイラーの在庫を部位別に見ると、国内向けが主な仕向け先であるむね肉は2010年12月以降、一貫して前年同月を上回る水準で推移しており、10月末在庫は前年同月比26.9%増の6万トンとなった。一方、輸出が主な仕向け先である骨付きもも肉(もも四分体)の在庫は、同10.8%減の4万8千トンとなった。

図9 ブロイラー在庫の前年同月比の推移
資料:USDA/NASS「Cold Storage」

 これは、米国の景気停滞から需要が落ち込み、むね肉の在庫が積み増す一方、ドル安の恩恵で価格競争力を有した米国産ブロイラー(主に骨付きもも肉)の輸出が伸びたことによるものである。

 ブロイラーの輸出量は、2011年上半期は前年同期を1.7%下回ったが、7〜9月では同21.7%増と大幅に拡大し、1〜9月では同6.3%増となった。

 輸出量を国別にみると、最大の輸出先はメキシコである。2011年9月の輸出量は前年同期比4.9%増の3万8千トンで、1〜9月では同4.9%増の34万1千トンとなった。メキシコに次ぐのは中国である。2011年9月の輸出量は同93.4%増の3万2千トンで、1〜9月では同26.5%増の23万3千トンとなった。次いでロシアとなる。2011年9月の輸出量は同18.5%減の3万1千トンと前年同月を下回ったが、1〜9月では同98.4%増の13万3千トンと大きく伸びている。

 2011年第3四半期の輸出は、従来の輸出先国に加えて、東南アジア、中東、アフリカ、中南米の諸国などが伸びていることが特徴づけられる。

好調なもも肉の卸売価格

 前述の動向は、ブロイラーの卸売価格に影響する。2011年1〜11月の骨付きもも肉の卸売価格は、ほぼ一貫して前年同月を上回る水準で推移する一方、むね肉は一貫して前年同月を下回る水準で推移し、対照的となっている。11月の卸売価格は、骨付きもも肉が前年同月比30.6%増の1ポンド当たり51.8セント(約40.9円:1ドル=79円)となり、むね肉が同0.3%減の120.6セント(約95.3円)となった。

 骨付きもも肉の価格は、2011年は前年同月を大きく上回っているものの、ドル安により輸出において価格優位性がでてきた。最大のブロイラー輸出国であるブラジルに対しても価格競争力を有する。2011年7月のむね肉価格は同25.9%減の119.44セントであったが、その後生産量が減少したため、価格は前年並みの水準に戻りつつある。

 輸出動向は、輸出先国の経済情勢と為替動向、さらには当該国の政策にも大きく左右される。不安定要素は常にあるが、国内需給は生産者による生産調整が継続されており、今後の改善が見込まれている。

図10 ブロイラー卸売価格の前年同月比の推移
資料:USDA/AMS

 


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