需給動向 海外

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景気低迷の影響は生乳価格にも反映


◇絵でみる需給動向◇


 オランダの生産者団体であるLTOは、EU主要乳業メーカー17社の10月の生乳価格を発表した。これによると、2011年10月の生乳価格は、17社平均で100キログラム当たり35.48ユーロ(約3,799円:1ユーロ=106円)となり、前月より0.68ユーロ(約72円)下げた。この価格は、2011年当初を上回っており、前年同月と比べ6.1%高と依然高い水準となっている。例年EUでは、最需要期となるクリスマスシーズンを控え、10〜11月にかけて価格は上昇するが、本年は10月に下降した。景気低迷による域内需要の低下が深刻であることがうかがえる。

 生乳生産量が2011年も前年を上回る水準で推移しており、域内需要の低下は、余剰分を輸出へ振り向ける動きが加速化するものと考えられる。しかしながら、主要輸出国を見ると、米国も景気低迷による国内需要の低下から輸出向けが増加することが見込まれており、さらに、ニュージーランドは生乳増産に加え、主要輸出先である中国の全粉乳の需要が5月以降低下している。そのため同国において、全粉乳からバターや脱脂粉乳の生産へと切り替え始めたが、その他の輸出国からの主要輸出品である脱脂粉乳やバターの出回り量が増加していることから、乳製品の国際価格が軟調となり、EUの生乳価格にも影響を及ぼしている。

図13 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
  注:域内主要乳業17社の平均値

バター価格続落

 ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、EU域内のバター卸売価格は下落傾向で推移している。2011年夏まで高水準で推移していたが、8月に入って下落に転じ、10月もその傾向が続いた。10月のオランダのバター卸売価格は、100キログラム当たり397ユーロ(約42,082円)であった。しかし依然として、高水準で推移しており、介入価格を55%上回っている。また、国際価格と比較して、80ユーロ(約8,480円)ほど上回っている。

図14 オランダにおけるバター卸売価格の推移
資料:ZMB

 バター卸売価格の下降要因は、EUの生乳生産量がピークを終了して取引が少なくなっていることと、ニュージーランドや米国の輸出が増加し、バターの国際価格が7月以降、下落して推移していることにある。国際価格の低迷は、EUのバター卸売価格も押し下げている。ZMBでは、2012年前半も価格の下落傾向は続くと予測している。

図15 国際市場におけるバター卸売価格の推移
資料:ZMB

インドとのFTA締結に向けて交渉

 ロシアのWTO加盟の決定やEUと韓国のFTA締結など自由貿易に向けた通商交渉が加速化する中、EUはインドとのFTA交渉を進めており、成長著しいインド市場を含め国際市場におけるEU製品の輸出拡大への期待は大きい。

 EUは、2015年に生乳クオータ制度の廃止が決定しているが、それに向けてEU域内の生乳生産量は増加しており、2011年1〜9月までの生産量は、前年同期比1.1%増となっている。一方、域内の需要は、東欧諸国では一部消費が増加しているものの、景気低迷などの影響により今後の需要の伸びは期待できない。クオータ制度廃止を見据え、EUの酪農にとって、輸出による市場拡大は、必須といえよう。

表4 乳製品における主な生産国と輸出国
資料:USDA

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