モンスーン期後半の降雨回復により生乳生産量は上昇
インド農業省畜産酪農・漁業局は先ごろ、2011年の生乳生産の見通しについて1億1800万トンから1億2200万トンに上方修正した。これは、モンスーン期の降雨回復を増産要因としたものである。インド気象庁によると、今年のモンスーンによる降雨量は、過去50年間の平均(長期平均)を1%上回ったとした。モンスーン期前半は、降雨不足により長期平均をやや下回ったため、生乳不足が懸念されたが、9月に入ってから降雨量は大幅に増加し、例年9月1日までのモンスーン期は約3週間遅れで終了した。モンスーン期後半にもたらされた豪雨によりインドのほぼ全土で土壌水分が豊富となり、牧草は良好に生育したため、生乳生産量の回復につながった。
表7 生乳生産量と用途別処理量 |
(単位:千トン)
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資料:食品産業省他、機構調べ
注:2011年は予測値
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2011年上半期の生乳価格は前年を大幅に上回る高い水準で推移している。これは、飼料の生産者売渡し価格の上昇、主産地での降雨不足による牧草の生育不良などによるもので、9月は前月比6%高の1キログラム当たり212ルピー(無脂固形分換算、約318円、1ルピー=1.5円)、脱脂粉乳についても卸売価格が同238ルピー(約357円、同5.8%高)に達し、いずれも過去最高値を更新した。
図16 生乳、脱脂粉乳およびバターの価格動向
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資料:インド乳業協会他、機構調べ
注1:生乳価格は無脂固形分(SNF)換算
2:生乳は生産者販売価格、それ以外は卸売価格
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9月以降は、前述のモンスーン期後半の降雨により、今後収穫を控える乾季作の大豆や油糧種子、とうもろこしなど飼料作物の単収増加も見込まれ、飼料価格は安定するものと見込まれる。さらに、生乳生産量も回復基調で推移しており、生乳価格は9月をピークに今後数カ月は下落していくものと予測される。
脱脂粉乳の輸入量は増加傾向
インドでは人口増加と所得増加を背景に、牛乳・乳製品の需要は年々高まっており、乳製品の輸入量は増加傾向にある。2010/11年度は、高騰の続く脱脂粉乳の価格安定を図るため、政府は粉乳(脱脂粉乳、全脂粉乳、育児用粉乳など)の無税輸入枠を5万トンに設定した。このため、脱脂粉乳の輸入は前年度から5.8倍の2万トンと大幅に増加しているが、5万トンには達していないものと見込まれる。また、主な輸入先としては、インドを重要市場と位置付ける豪州やニュージーランドなどである。
輸出について、政府は今年2月24日、粉乳およびカゼイン類の輸出を禁止したが、10月31日に1053トンを上限とし、カゼイン類の輸出を許可した。政府は、食料品価格の上昇に伴う国内のインフレを懸念していることから、粉乳の輸出許可には慎重な対応をとるものと考えられる。
表8 脱脂粉乳の輸入量
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(単位:トン、10万ルピー) |
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資料:商工省商務局外国貿易部
注:年度は4月〜翌3月
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表9 バターの輸出入量
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(単位:トン、10万ルピー)
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資料:商工省商務局外国貿易部
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