国産鶏肉の相場の低迷が続いている。4月末の国産品の推定期末在庫量(機構調べ)は過去10年間で最も高い水準にあり、在庫過剰の影響などから5月の国産鶏肉の相場は前月よりさらに低下した。
鶏肉の供給面を見てみると、平成24年4月の国内の鶏肉生産量(機構推計)は、11万6千トン(前年同月比13.2%増)と4カ月連続で前年同月を10%上回った。また、財務省「貿易統計」によると、平成24年4月の鶏肉輸入量は、3万2千トン(同21.4%減)と2カ月連続で大幅に減少した。一方、鶏肉調製品の輸入量は3万6千トンと(同1.5%増)と以前ほどの増加率ではないが、東日本大震災以降、概ね前年同月を上回って推移している。
こうした中、鶏肉の推定期末在庫量は平成24年1月末の15万4千トンをピークに取り崩しが進んでいるが、4月末は14万8千トン(同40.3%増)と依然として高い水準にある。また、この内訳をみると、輸入品は輸入量の減少に伴い、10万9千トン(同37.5%増)と先月末より取り崩されているが、国産品は逆に積み増し、3万8千トン(同49.0%増)と過去10年間で最も多い在庫量となっている(図4)。
図4 鶏肉・鶏肉調製品輸入量、生産量及び在庫量の推移 |
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資料:財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ、農林水産省「食鳥流通統計」 |
国産品在庫が積み増す中、国産鶏肉の卸売価格は依然として低迷している。農林水産省「食鳥市況情報」によると、平成24年4月の鶏肉卸売価格(東京)は、もも肉578円(同17.4%安)、むね肉172円(同37.9%安)と平成23年11月以降前年同月を下回って推移している。さらに、直近5月の卸売価格も在庫の過剰感などから、もも肉572円(同17.8%安)、むね肉171円(同38.7%安)と低下している(図5)。
なお、国産鶏肉の需要は好調であり、「食肉の小売動向(POS情報)」(機構調べ)を見ても、平成24年4月の国産鶏肉の購入量はレジ通過1000人当たり24.7キログラム(同21.7%増)と昨年の東日本大震災による減少の反動を考慮しても増加している。現在は、需要以上に供給が多いため在庫が積み上がっている状況であり、国産鶏肉の卸売価格が上昇するには需要に見合った生産と国産品在庫の減少が不可欠であることから、今後の両者の動きを注視したい。
図5 鶏肉国産品の卸売価格の推移(東京) |
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資料:農林水産省「食鳥市況情報」 |
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