需給動向 海外

◆米 国◆

4月の牛肉卸売価格は下落、今後は回復か


◇絵でみる需給動向◇


4月の卸売価格は前月比7.2%安とかなり減少

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が4月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2012年4月の卸売価格は、LFTB(注)による風評被害などにより、前年比4.3%安、前月に比べ7.2%安の100ポンド当たり180.0ドル(キログラム当たり約321.5円、1ドル=81円)となった。牛肉パッカーの仕入れコストなどが増加傾向にある中、今回の卸売価格の下落は、牛肉パッカーに対し大きな影響を与えたものと考えられる。

 他方、4月の肥育素牛価格については、前月に比べ4.8%低下したものの、前年比18.2%高の100ポンド当たり171.5ドル(キログラム当たり約306円)であることから、繁殖農家の収益性は高まっているものとみられる。

(注)LFTB(Lean Finely Textured Beef)とは、水酸化アンモニウムで防腐処理された加工牛肉のことで、牛ひき材などに使われている。米国メディアは「ピンクスライム」と呼び、消費者の間で牛ひき肉への安全性の懸念が高まった。なお、USDAは食品への安全性は問題ないとして、水酸化アンモニウムの使用を認めている。

図1 牛肉卸売価格、肥育牛、肥育素牛価格の推移
資料:USDA「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」
注1:肥育素牛価格は、ミディアム、600〜699ポンド、オクラホマシティ市場
 2:肥育牛価格は、チョイス級、1100〜1300ポンド、ネブラスカ
 3:牛肉卸売価格は、チョイス級、600〜900ポンドのカットアウトバリュー

と畜頭数は前年を7カ月連続で下回る

 3月のと畜頭数をみると、前年同月比7.0%減の275万1千頭と、かなりの程度下回った(USDA「Livestock Slaughter」4月20日公表)。と畜頭数は、2011年9月から7カ月連続で前年を下回っており、と畜重量は前年同月に比べ23ポンド(約10.4キログラム)増加したものの、生産量は依然として低い水準にある。USDAによると、2012年第1四半期の生産量は、前年同期比2.4%減の283万9500トンであり、今後の生産量の見通しについても、第2四半期から第4四半期にかけて、それぞれ同1.8%減、5.0%減、8.5%減と下回って推移することから、2012年のと畜頭数は低水準で推移するものと考えられる。

図2 牛と畜頭数の推移
資料:USDA「Livestock Slaughter」

6年ぶりのBSE発生も消費への大きな影響はなし

 USDAは米国時間4月24日に、国内で4例目となるBSE感染牛を、カリフォルニア州で確認したと発表した。2006年3月以来、6年ぶりの発生であったが、感染牛由来の牛肉が市場に出回っていないことなどから、米国内での牛肉消費への影響は軽微とみられている。また、日本に加え、カナダ、メキシコ、韓国など主要輸入国においても、米国産牛肉の輸入禁止措置はとられていない。

 これらの冷静な対応に加えて、5月に入りLFTBの騒動が落ち着いてきたことや、と畜頭数の減少により今後も前年並みの生産量が見込めないことから、5月以降の卸売価格は回復に向かうものと考えられる。


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