需給動向 海外

◆米 国◆

2011年下半期からの生産抑制により鶏肉価格は上昇傾向

◇絵でみる需給動向◇


減産傾向にある鶏肉生産量、3月は前年同月比8.0%減

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が5月2日に公表した「Broiler Hatchery」によると、米国の主要19州におけるブロイラー向けひなの週間導入羽数は、2011年6月以降、前年同月を下回る水準で推移しており、直近の4週(4月1〜28日)平均では前年同期を4.2%下回っている。

 また、同局が公表した「Poultry Slaughter」によると、ブロイラーの処理羽数は2011年7月以降おおむね前年同月を下回って推移しており、2012年3月は前年同月比8.5%減となっている。

 生産者が鶏肉生産を抑えているのは、飼料価格が高値で推移する中、生産者販売価格が低調であったことに起因している。生産量は、うるう年のため処理羽数が増加した2012年2月を除き、2011年9月以降前年同月を下回って推移しており、3月の生産量は前年同月比8.0%減の1380千トンとなった。

図11 ブロイラー処理羽数の推移
資料:USDA「Poultry Slaughter」

生産量の減少により、在庫量も減少

  ブロイラーの在庫を部位別に見ると、生産量の減少などにより主要部位ではいずれも前年を下回っている。

 手羽は、国内需要が好調を維持しており、3月末在庫は前年同月比51.7%減の15千トンとなった。輸出が主な仕向け先である骨付きもも肉(もも四分体)の在庫は、輸出拡大により、8カ月連続で前年同月を下回り、同27.2%減の35千トンとなった。また、国内向けが主な仕向け先であるむね肉の在庫は、4カ月連続で前年同月を下回る水準で推移し、3月末在庫は前年同月比13.1%減の56千トンとなった。

 ブロイラーの輸出量は、2011年下半期は前年同期比7.8%増、2012年1〜2月も同16.9%増と拡大傾向にある。これは、米ドル安により、米国産ブロイラー(主に骨付きもも肉)の価格競争力が高まったことが主な要因である。

図12 ブロイラーの部位別在庫量の推移
資料:USDA/NASS「Cold Storage」

卸売価格は堅調に推移

 減産により需給の緩和が改善されたことから、主要部位の卸売価格は前年を上回って推移している。

 丸どり価格(12都市平均)は、2011年12月以降前年同月を上回って推移しており、4月は前年同月比4.0%高の1ポンド当たり85.40セント(キログラム当たり約155円:1ドル=82.19円)となった。部位別では、最も大きく上昇したのは手羽で、在庫の減少から同117.2%高の同179.52セント(約325円)となった。次いで、骨付きもも肉価格は同14.9%高の同53.22セント(約96円)、むね肉価格は同0.2%高の同135.60セント(約246円)となっている。

 また、好調な卸売価格を背景に、生産者生体販売価格も上昇傾向にあり、4月は前年同月比4.1%増のポンド当たり51.00セント(約92円)と、5カ月連続して前年同月を上回っている。

 生産者の減産努力により在庫の積み増しが解消されたことで、生産者生体販売価格も改善された。しかしながら、同省経済調査局(USDA/ERS)が4月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」において、2012年第2四半期の生産量が、前月の予測からわずかではあるが上方修正されるなど、増産意欲が高まってくることも予想されており、今後の生産者の動向が注目される。

図13 ブロイラー卸売価格の上昇率の推移(対前年同月)

資料:USDA/ERS「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」、
   USDA/AMS

元のページに戻る