需給動向 海外

◆E U◆

バター値下がりに底見えず


◇絵でみる需給動向◇


 EUにおけるバター価格は3月302ユーロ(32,918円:1ユーロ=109円)となり、前年比27%安と2月に続き下落となった。2011年のEUのバター価格は、世界的に需給がひっ迫していたことから、年間を通して高止まりの状態であった。2012年2月1日に開催された欧州乳製品輸出入・販売業者連合(Eucolait)の会議においても、バター価格は2012年も引き続き高い水準で推移すると予測されていたが、2月からバター価格は下落、予測と反する動きとなっている。現在のバター価格の下落は、EUの酪農業界にとって2008/09年度に起きた「酪農危機」を彷彿させ、大きな不安材料となっている。

 下落要因について、ドイツのZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)は「2012年以降、生乳生産の増加、バター輸出の減少、バター輸入の増加によるEU域内のバター出回り量の増加」を指摘している。オランダのLTO(オランダ農業園芸組織連合会)も同様の見解を示し「生乳生産が増加しているものの輸出が不振であるため、増産分が吸収できていない」と述べ、現在、バイヤーは成り行きを見守っている状態としている。

図14 バター卸売価格の推移
資料:ZMB
表3 EUにおける国別バター生産量(1月)
資料:ZMB
注1:2012年は暫定値である。
図15 EU-27:バター輸出量の推移
資料:ZMB
図16 EU-27:バター輸入量の推移
資料:ZMB

生乳価格も続落

 LTO(オランダ農業園芸組織連合会)によると、域内主要乳業17社の3月の平均生乳価格は、33.71ユーロ(3,674円)となり、前年比1.6%高であった。しかし、前月比3%安となり、引き続き下がった結果となった。

 各国の主要乳業メーカー別にみると、ダノン(フランス)は0.99ユーロ安(108円)の100キログラム当たり34.45ユーロ(3,755円)、ソディアール(フランス)は1.32ユーロ安(144円)の同32.81ユーロ(3,576円)、フリーズランドカンピナ(オランダ)は、1.5ユーロ安(164円)の同30.96ユーロ(3,375円)で、さらに4月に0.5ユーロ(55円)引き下げる予定、アルーア(デンマークとスウェーデンの合併)は0.38ユーロ安(41円)の同32.08ユーロ(3,497円)となっている。

 LTOはバターと同様に「生産増加が価格下落の要因であり、今後も生産量の増加が予測されることから価格は下がるであろう。」とコメントしている。

図17 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
 注:域内主要乳業17社の平均値

ポーランドが輸出補助金の再導入と介入価格引き上げを請求

 4月に開催された欧州委員会の農業・農村開発総局の農業議会において、ポーランドは現在の状況を改善するため、輸出補助金および介入価格引き上げを求めた。

 これに対し、チオロシュ農業・農村開発担当委員は、「現在の市場状況は危機とまでは言えない。輸出補助金再導入の要件を満たしていない」とのコメントを発表した。

 EUでは、2012年3月1日より開始された民間在庫補助(PSA)によるバターの在庫が、現在も積み上がってきている状態である。5月6日までの累積在庫量は、60,823トンとなっており、前年と比べておよそ1.8倍、2010年のおよそ2.2倍となっている。EUは、今後、生産のピークを迎えるため更なる状況の悪化が懸念される。

表4 2012年 バター民間在庫量
資料:EUCOLAIT

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